第5期レポート

成果発表会

2014年11月25日 100名近くの参加者にご来場いただきました!
「ソフトウェア品質保証部長の会」第5期からのメッセージ
~現役、品質保証部長による1年間の活動成果を発信します!~

1. 開催の趣旨

近年、ソフトウェア品質保証部門の担う役割はますます多様化し、品質保証部門長の持つ悩みも大きく、そして複雑になってきました。
そこでSQiPではこの現状を鑑み、ソフトウェア品質保証部門の長による「品質保証部長の会」を結成し、製品分野や組織の形態、人数規模など様々に異なる現場から、悩みや課題を持ち寄って議論を行っています。
2009年11月に結成した本会も今年で5年目を迎え、活動内容もより深化したものになってまいりました。
本発表会は、ここでの活動成果を、内輪だけで共有するのではなく、ソフトウェア業界全体の品質向上を目指し、外部に向けて発信する場として毎年開催しているものです。
今年は、2014年11月25日に開催し、雨天にもかかわらず、100名近くの参加者に会場である日科技連・東高円寺ビルへお越しいただきました。
多くの方にご来場いただいた会場のようす

2. はじめに

ソフトウェア品質保証部長の会企画委員の大島 啓二さんの開催の挨拶のもと、成果発表会が始まりました。

開催の挨拶

「ソフトウェア品質保証部長の会」は、業種も規模も異なる会社の品質保証について責任を担っている部門長が、ソフトウェア品質保証の課題を語り合う場です。
今年度は、「アジャイル」、「超上流」、「品質保証の肝」、「人材育成」、「経営視点」など、今まさに、日本のソフトウェアが直面している喫緊かつ本質的なものをテーマとして取り上げました。
会社の中での品質保証の部門長は、幹部の期待も大きく、開発設計部隊に甘い顔を見せるわけにもいかず、事故が起きれば矢面に立たざるを得ません。扱いやすい部下ばかりでもない、…と、日々心がやすまる暇もありません。
そういう難しい立場だからこそ、「ソフトウェアの品質保証」という一点で同じ課題を持つ人たちが一堂に会して悩みを語り合い、解決策を模索する意味は大きいものです。
本発表会は、この一年の活動を締めくくるものであり、すべての発表に貴重なノウハウがちりばめられています。ご聴講いただく皆さんには、しっかり受け止めていただければと思います。
ソフトウェア品質保証部長の会企画委員の大島さん
引き続き、部長の会の企画委員長である日立ソリューションズの孫福 和彦さんより次のとおり第5期活動の紹介がありました。
5年目となる今期は、企画委員会を強化、新テーマを決定し、9月に開催されたSQiPシンポジウムでは「人材育成」をテーマとしたSIGを開いたことが、大きな特徴です。
部長の会の紹介をする孫福さん
第1期からの部長の会活動推移

プログラム・発表資料ダウンロード

時間 内容
13:00~13:10
(10分)

開催の挨拶

大島 啓二 氏(元 日立製作所)
13:10~13:20
(10分)

活動の紹介

孫福 和彦 氏(日立ソリューションズ)
13:20~14:20
(60分)

「iコンピテンシ・ディクショナリを使った品質の人材育成とプロセス改善」

奥村 有紀子 氏(情報処理推進機構)
14:20~14:30
(10分)
休憩
14:30~15:00
(30分)

成果発表1 グループ5

「流行りのアジャイル、品質保証部門は何するの?」

水谷 誠 氏(アルファテック・ソリューションズ)
15:00~15:30
(30分)

成果発表2 グループ3

「「超上流からの品質保証」PartII」

内海 俊行 氏(東芝ソリューション)
15:30~15:40
(10分)
休憩
15:40~16:10
(30分)

成果発表3 グループ2

「『ソフトウェア品質保証の肝』PartIII(完結編)」

池上 直之 氏(AJS)
16:10~16:40
(30分)

成果発表4 グループ4

「ソフトウェア品質の向上に寄与する「効果的な人材育成」を考える」

廣石 高 氏(三菱電機)
16:40~17:10
(30分)

成果発表5 グループ1

「経営視点からの品質向上を考える〜会社発展に寄与する真の品質向上活動とは??〜」

衣川 潔 氏(日立ソリューションズ)
17:10~17:20
(10分)

終了の挨拶

永田 哲 氏(元 キヤノン)

3. 基調講演

基調講演は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の奥村 有紀子さんに「iコンピテンシ・ディクショナリを使った品質の人材育成とプロセス改善」をテーマにお話しいただきました。
ご講演いただいた奥村さん

ご講演の概要

スキル標準は多くの企業で認知されている一方で、これを目指すべき標準と思い込んでしまい、自社の経営戦略やビジネスモデルを考慮せずに、「スキル標準」にIT人材育成の目的を合わせてしまう(そのまま導入する)企業が多くあります。その結果、経営目標と人材像やレベルが一致せず、結果的に人材育成にうまく活用できずに中断してしまったり、意味を見いだせないまま惰性で続けてしまったりしてしまいます。
そうした「結果を出せない」から脱却するため、より分かりやすく、簡単にまとめられるようにしたスキル標準が、「iコンピテンシ・ディクショナリ」です。「iコンピテンシ・ディクショナリ」とは、IPAで生み出された、各組織が人材育成について検討、見直しをする際に、自組織の戦略に合わせて自由に抽出して使えるよう、各スキル標準が持つコンテンツを、
  • タスクディクショナリ

    「“仕事”を定義」求められる機能や役割を「課される“仕事”として定義したもの。
  • スキルディクショナリ

    「“仕事”遂行のための素養」タスク(課される“仕事”)を支える能力(スキルや知識)を整理したもの。
の2つのディクショナリとして標準化、一元化したものです。
タスク評価の診断基準は5段階のランクに分け、何を行ったことがあるのかを見える化することで、レベル判定結果表を作成した際に、どの業務を抽出し、経験させるべきかを判断します。それに対し、スキルは「タスク遂行のための素養」であり、「ソフトウェア品質知識体系ガイド(SQuBOK® Guide)」などを使用してカテゴリを分類し、熟達度をランク付けします。「i コンピテンシ ディクショナリ」を使い、業務を見える化することは、メンバの育成のための材料ができるということで、プロセスを改善できます。そして、業務(タスク)を精査することで、本当に必要な業務がわかり、改善が必要な業務が見え、目的達成へ効率化が図れます。自身の仕事の内容と状況が見えれば、メンバ自身の成長や動機づけのトリガーとなり、結果として企業の成長に繋がっていくことになります。
聴講者アンケートでも好評であり、多くのコメントをいただきました。

【アンケート結果より】

  • 会社で実施している、スキル評価に適用できると思った。また、タスクとスキルのマトリックスを職場に展開できると思う。
  • 体系的にまとめられているので、業務委託など小さなところから取り入れてみるのも良いと感じました。

4. 成果発表

そして、ついにメインの成果発表です。全5グループが発表いたしました。
それでは、各グループ発表を紹介いたします。

発表1

「流行りのアジャイル、品質保証部門は何するの?」

発表者:水谷 誠さん(アルファテック・ソリューションズ)
“アジャイル”と呼ばれる開発方法が、欧米では主流となっている中、国内でもWeb系アプリではすでに多くの事例があり、最近では企業向けシステム開発にも適用されるようになってきています。早くお客様に提供して、フィードバックを得るという、“顧客満足度向上”ができそうな本プロセスに、品質保証部門としても取り組みたい考え、どのようなアプローチをしていけばいいのか、また、従来開発となにが違うのかといった点に着目し、事例、提案を収集しながら、問題点や今後の展開について話し合われたことをご発表いただきました。
アジャイルを適用するためには、アジャイルプロセスそのもの、アジャイルプラクティスで有効なメトリクスの理解に加え、ファシリテーションスキルやユーザ要求を踏まえたシステムテストの実施などが必要であることをご説明いただきました。
発表者の水谷さん

発表2

「「超上流からの品質保証」PartII」

発表者:内海 俊行さん(東芝ソリューション)
各社の品質保証部門の具体的活動事例を紹介に加え、「現在の品質保証活動は本当に顧客が求めることなのだろうか?」に着目し、顧客満足のために品質保証部門が実施すべきことを、各知識体系や企業が発注側として求める情報を収集して分類されました。これをもとに、今後の品質保証活動をより役立つものにするよう、グループで議論された内容を紹介していただきました。
そして最後は、昨年同様、「超上流からの品質保証活動 提言」とし、以下の提言を挙げられました。
  • 超上流プロセスでの成果物(提案書、方式設計書、原価見積り、条件書など)と責任者を定義し、見積り/受注審査で検討結果を確認
  • 部門長経験者などシニアをレビュー者に活用
  • 成功・失敗経験を次のPJに活かすための仕組みづくり(PDCAサイクルを回す)
  • プロジェクトの成否は超上流プロセスに依存する割合が高い、決めたプロセスを省略してはならない
  • お客様(経営幹部、業務部門、IT部門)を含めた体制・役割を確認
  • お客様の積極的な参画が期待できない場合の、リスク対策を確認
発表者の内海さん

発表3

「『ソフトウェア品質保証の肝』PartIII(完結編)」

発表者:池上 直之さん(AJS)
“品質保証プロセス/仕組みはわかっているが、現場でうまく運用できない”などの悩み、それを解決するためのノウハウを、“肝”として整理されています。
「ソフトウェア品質保証の肝」は、「ソフトウェア品質知識体系ガイド(SQuBOKR Guide)」によって整理されており、今回の発表では、それぞれの肝に番号を振り、それらに関する五七五を読んで、「品質カルタ」として紹介されていました。
ここで、いくつか「品質カルタ」のご紹介をさせていただきます。
  • ありえない 上から目線の アドバイス
  • 無視するな 予兆を示す 異常値に
  • メトリクス 何のためかと 問うてみる
発表資料 のPDFには、全85の肝と完全版の「品質カルタ」が掲載されておりますので、ぜひご覧ください。
発表者の池上さん

発表4

「ソフトウェア品質の向上に寄与する「効果的な人材育成」を考える」

発表者:廣石 高さん(三菱電機)
ソフトウェアの品質は、人のスキルに依存するところが大きいにもかかわらず、昨今の課題として、人材育成の重要性が増している傾向にあります。その理由としては、プロジェクトの大規模化、技術の高度化が進み、人材に要求されるスキルが年々拡大・高度化してしまい、現実とのギャップが生じ、プロジェクトの失敗リスクが高くなっているからであると考えられます。
今回の発表では、今年9月に開催されたSQiPシンポジウムのSIG「人材育成」において外部からの参加者との議論を通じて得た人材育成のポイントや施策の案を参考にし、議論してきた内容をまとめられていました。
いくつかの人材育成ポイントを挙げられ、施策検討として「権限と責任の委譲」「ジョブローテーション」「人材の見極め:階層別の施策」「『育てる人』の配置」の4つを提案されました。
発表後、何人もの方から質問があり、どの企業も抱えている課題なのだと、改めて痛感いたしました。
発表者の廣石さん

発表5

「経営視点からの品質向上を考える‐会社発展に寄与する真の品質向上活動とは??‐」

発表者:衣川 潔さん(日立ソリューションズ)
品質のあるべき姿とは、“品質活動⇒顧客満足⇒価値⇒対価(利益)⇒利益の再投資⇒継続的価値提供”の流れがスムーズに行われることです。しかし、現実は経営者(「顧客満足」、「売上・利益」)と現場責任者(利益追従)の間で重視するものが異なってしまっており、あるべき姿をなかなか築けません。
今回の発表では、「コスト低減」「売上向上」の2つの観点で利益を捉え、品証部門の活動との関係を整理し、「こんなことをすれば持続的にお客様への価値提供にもっと貢献できる」について討論されてきたことを、「組織を幸せし、お客様も幸せになる品質活動」を目指すにはどうすれば良いかという視点で、まとめられていました。
発表いただいた対策(方法)を、以下に紹介いたします。
  • 品証部門は、現場の苦しさを理解して、現場を助けるための行動をしましょう。
  • 品質を高めて、お客様からの信用/信頼を築き、永久に続くように風土改善をしていきましょう。
    ⇒このようなことで、利益や売上に貢献し、利益の再投資で品質がより向上していきます。
  • 時代が変わっても、高品質なモノ・コト・サービスを続けて提供するために、自分達の活動を見直しましょう。
発表者の衣川さん

おわりに

最後に、部長の会の企画委員である永田 哲さんからご挨拶をいただき、第5期の成果発表会は盛会のうちに終了いたしました。
挨拶は、「皆さんが組織の競争力向上にもっと貢献するには」、「QAが開発力向上に直接的に寄与する」、「新人を鍛えて自分も鍛えよう」などを中心に、お話しいただきました。
ソフトウェア品質保証部長の会企画委員の永田さん

閉会の挨拶

品質は、それを作り込むエンジニアのスキルとモチベーションに大きく依存し、質の良い人たち(プロ)が質の良いリソース(環境、時間、ツール)を与えられた時に、質の良い製品、サービスが作られ、そこには達成感も生まれます。
これを実現するためには、マネージャ/プロセスQAが、現場のエンジニアの健康状態、開発環境の質をチェックし、改善するための行動をとることが必要になります。エンジニアを大切にする文化、風土を作ることが開発/QAマネージメントの役目であり、これを怠っていては競争に勝つことはできません。
また、品質を作るためには質の良い人たち(プロ)が必要になり、質の良い人たち(プロ)になってもらうには、新人を鍛えること(人材育成)も重要となります。新人を指導する際には、従来の関数型言語にとらわれず、話題の関数型言語で頭を柔らかくすることで、自分自身も学ぶことができ、より成長することが期待できます。
新人教育を人事に任せるのではなく、現場の人間(QAマネージャなど)も一翼を担うことで、現場をより理解し、活性化することができ、品質もより良いものへと進化していきます。 部長の会は、引き続き第6期がスタートいたしました。
ご興味がありましたら、お気軽にSQiP担当までお問合せください。