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ソフトウェア品質管理研究会
特別講義 2019年度
特別講義レポート: 2019年 2018年 2017年 過去のテーマ: 一覧
 
例会
回数
例会開催日 活動内容
 2019年
1 5月10日(金)

特別講義

テーマ システム×デザイン思考とアーキテクチャ思考による新価値創造
講演者 白坂 成功 氏
(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
2 6月14日(金)

特別講義

テーマ グラフィックレコーディングを使ったコミュニケーション
講演者 本園 大介 氏
(NTTテレコン株式会社)
3 7月11日(木)~12日(金) 合宿
4 9月12日(木)~13日(金) ソフトウェア品質シンポジウム2019 本会議 (会場:東洋大学(東京・文京区))(予定)
5 10月11日(金)

特別講義

テーマ プロジェクトリーダーのためのプロジェクト健全化技法
講演者 石谷 靖 氏
(株式会社三菱総合研究所 デジタルイノベーション事業本部 主席研究員)
6 11月15日(金)

特別講義

テーマ IoT時代のリスク評価・リスクコミュニケーション
講演者 佐々木 良一 氏
(東京電機大学 総合研究所 特命教授/本研究会 演習コースⅢ アドバイザー)
7 12月13日(金)

特別講義

テーマ プロセス改善とソフトウェア品質
講演者 山田 淳 氏
(株式会社東芝/本研究会 研究コース1 主査)
 2020年
8 1月10日(金)

特別講義

テーマ ソフトウェア疲労をアーキテクチャ設計で
講演者 山田 大介 氏
(ビースラッシュ株式会社 代表取締役)
9 2月21日(金) 分科会成果発表会
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第1回特別講義 レポート
日時 2019年5月10日(金) 15:15 ~ 17:15
会場 (一財)日本科学技術連盟・東高円寺ビル 地下1階講堂
テーマ システム×デザイン思考とアーキテクチャ思考による新価値創造
講師名・所属 白坂 成功 氏(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授)
司会 岩井 慎一 氏(株式会社デンソー)
アジェンダ
  1. はじめに
  2. 慶應義塾大学大学院SDMの紹介
  3. 慶應SDMが考えるイノベーティブ思考
  4. システム思考とは
  5. デザイン思考とは
  6. プラットフォームの創出
  7. まとめ
アブストラクト

昨今、AI/IoTなどの新技術を活用して新価値を創造することが強く求められていますが、実際に新価値創造を実現するのは容易ではありません。
本講義では、“イノベーティブさ”を意識しながらシステムをデザインするための方法論である“システム×デザイン思考”を解説するとともに、新価値創造のアプローチを紹介します。

講義の要約

講師紹介

白坂 成功 氏
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 修士課程修了。
その後、三菱電機株式会社にて宇宙開発に従事。技術試験衛星VII型(ETS-VII)、宇宙ステーション補給機(HTV)等の開発に参加。特にHTVの開発では初期設計から初号機ミッション完了まで携わる。途中1年8ヶ月間、欧州の人工衛星開発メーカに駐在し、欧州宇宙機関(ESA)向けの開発に参加。「こうのとり」(HTV: H-II TransferVehicle)開発では多くの賞を受賞。現在、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授。


1.はじめに
  • 「Moonwalking Bearに気づかない」、「放射線技師の83%がゴリラを見逃した」などの例は、「白いシャツ」「がん細胞」のキーワードでバイアスをかけてしまい、人は無意識に情報を選択している。
  • 特定の集団は特定のバイアスにかかっていることが多い(専門家バイアス)。
  • 今の価値から新しい価値を見出す、つまり今までの価値から多様性を生かしながら積極的にバイアスがかかって見えないことを見に行くことでイノベーティブを見出していく。
  • バイアスがかかっている中で生活している日常から、必要な時にバイアス外の考えができるようにすることを目指す。
2.慶應義塾大学大学院SDMの紹介
  • SDM:System Design and Management
  • 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科は、専門に特化するのではなく、マルチディシプリンを束ねるインターディシプリナリーな育成を行う大学院。
  • 大学院2年生 8割、1年生 7割が社会人で占めマネジメントが多く、文系よりの構成となっている。ベースはシステムエンジニアリングとし、ひとつひとつの専門性を追求するのではなく束ねることにより新価値を見出す。コンポネントな知とアーキテクチャルな知をもつ「ナブラ型人材」を目指す。
3.慶應SDMが考えるイノベーティブ思考
  • イノベーティブな思考は、システム思考をベースにしながらデザイン思考により創造的に思考することで生み出される。「システム×デザイン思考」。
  • 専門家バイアスがかかると観点が広がらない。一方、非専門家の場合は重要でないコメントも多いがバイアス外の観点、意見が出やすい。
    多様性の活かし方、集合知の出し方・原理を理解してイノベーションの価値を狙うことが大切である。
4.システム思考とは
  • システム思考には、広義の「システム思考」と狭義の「システム思考」があり、本講義ではシステムエンジニアリングの一部である広義の「システム思考」のことをいう。
  • システム思考とは、目的指向もって体系的に全体をとらえる(全体俯瞰)ことである。
    また一人で全体をとらえることは難しく、多様な人々の考えを統合してシステムアプローチの実践ができる。
  • 多様な人々が集まると気になることや観点が人によってことなり、議論の発散、ねじれが生じる。
    これを回避するために、①同時に複数のことを言わない、②伝えたいことを端的に伝える、③言葉だけでディスカスしないことが大切である。
    ①同時に複数のことを言わない…視点・観点を決め、議論のポイントを絞ることが重要。
    ②伝えたいことを端的に伝える…ポイントを抽出することで焦点が絞られ考えざるを得なくなる。
    ③言葉だけでディスカスしない…日本語は具体的な表現をするには不得意であり、構造化と可視化されたものに対して議論することで具体的な議論がしやすくなる。
  • 机を囲んで対面で議論するよりホワイトボード等を使うことで人間同士の対立構造が軽減でき、同じ側にたった議論がしやすくなる。
  • 単に人を集めるのではなく、思考の発散と収束を“適切なタイミング”で適切に組み合わせ、思考の流れをデザインすることでイノベーティブな思考ができる。
  • また多視点の議論、ブレストの過程であがった意見は、思考のトレーサビリティを活用することでSpiral Upができる。
5.デザイン思考とは
  • デザイン思考はもともとスタンフォード大学の学生たちに足りない所を追加するためのアプローチ。
  • アメリカ合衆国カリフォルニアのデザインコンサルタント会社のIDEOでは、デザイン思考はマインドセットであると言われている。
  • デザイン思考は①共感、②問題定義、③創造、④プロトタイプ、⑤テストの5つのModeで構成されている。
  • Stepとして順番にやるのではなく、Modeとして“適切なタイミング”で実施することが大切。

①共感

  • N社が大学に冷凍食品おけるインサイトを依頼した結果、「冷凍食品はめんどくさい」。
    1週間、N社冷凍食品生活を実施した結果、点線から開封する、電子レンジの設定が毎食になるとめんどくさいとの意見の他、高齢者もマニュアルの字が小さく読まずに失敗をすることで冷凍食品を食べなくなっていたことが分かった。つまり、消費者である人間中心の考えから外れていたことが分かった。
  • 単に共感するだけでなく、“これまでとは異なる”問題を定義する必要がある。

②問題定義(リフレーム)

  • 誰もが考えている課題にそのまま向かっても解決できない。→リフレーミング。
  • リフレーミングとは、「普通じゃないけど面白い、しかも重要」という問題に捉えなおす、魅力的で実行する価値がある領域を見つけ出すなど、問いかけや観点を変えることで解決策が変わってくる。

    例1. ホーブディング(自転車用のヘルメット)
    通常の問題:どのようにしたら人々は自転車にのるときにヘルメットをかぶってくれるか。
    リフレーム:髪の毛がぐちゃぐちゃにならないでヘルメットがかぶれるか、必要な時だけヘルメットがかぶれるか。

    例2. 地球で最も深いゴミ箱
     通常の問題:どのようにしたら公園のごみをきれいにできるか。
     リフレーム:どのようにしたら人々は喜んでごみをゴミ箱にいれてくれるか。

  • 慶應SDMでは、1.今あるものから考えてみる、2.当たり前を疑ってみる、3.問題の完全な解決を目指さない、4.上位の目的で考えてみる、5.分析的アプローチで考えてみる、の5つのアプローチをしている。

③創造

  • 単にブレストしてもなかなか発散できない場合は、違和感をブレストすることで違和感の特徴量を利用してアイデアを創出(強制連想法)することで枠外の発想を生み出すことができる。
  • 人間は生まれながらにしてクリエイティブであるが、否定や批判されることでクリエイティブさが少なくなっている。
  • 仕事でも、落とし所を見つけることでイノベーションできなくなっている。→ 大丈夫、できるという信念を持たせることが大切である(クリエイティブマインドセット)。

④プロトタイプ、⑤テスト

  • プロトタイプでは分からないからやってみることが大事。
    知らないこと、知らない領域に挑戦するためにまずはやってみること、そしてやってみて分かったことを見つけることがプロトタイプの役目で、トライ&エラーの繰り返しである。
  • ピポットではアイデアは創出できない。インサイト(面白さ、新しさ)を実現するアイデアは多様であり本来のピポットである。つまりインサイト中心のプローチ。
  • インサイトとは今まで誰も知らなかった「洞察」「気づき」
  • インサイト中心の進め方:分たちが知らないことを知るために、作りながら手を動かしながら考える。
  • インサイトの例:見守りロボットをわざと段差にひっかけることで、ひっかかったロボットを老人が助けることで見守り機能を実現する。
  • インサイトはどこを確認、確度をあげたいかを意識しないと意味がない。
  • 二階建て経営において、既存事業では計画通り進めることがKPIであり、新規事業ではトライ&エラー施行の数がKPI、どちらのKPIかを業務ごとに考えてマネジメント実施するが、知っているつもりで分かっていないことが最も面倒となる。


  • プロセスフレームワークを試行錯誤で調査していき、システム思考が抜けないようにすることが大事であり、5つのモード、アビリティ、マインドセットの組み合わせが大切である。
  • イノベーティブ思考能力には、考えつける、見つける、説明できる 要素が必要であり、“見つけること”と“説明すること”は訓練できる。
  • イノベーティブさを説明できることで、既存のアイデアの横展開をすることができる。
  • 既存のいい事例はそのアイデアのポイント(良さの理由)を抽出した上で持っておくと横展開ができる。
6.プラットフォームの創出
  • 必要とされる力は、そもそも何を作るのか(What to meke)を考えるだけでなく、どう作るのか(How to make)も考えられる力が要求される。
  • システムと外界との関係性、システムを構成する要素とその構成要素間の関係性をアーキテクチャと定義する。
    さらに、時間要素(過去、現在、未来)の関係性も見なくてはならない。
  • エンジニアリングの方法であるサイエンスは数式で構成されるため、インプットが同じだとアウトプットも同じになる。またアーキテクティングの方法であるArtは人への依存度が大きく結果が安定しないため、ルールや手順を決めるより人材育成が重要である。 参考著書:The Art of Systems Architecting
  • 多様な考え方を統合する。
  • 多様な業をつなげる人たちとディスカスする場合は、「構造化」と「可視化」つまりアーキテクチャが必要で多様な意見を得ることができる。
  • ものごとの何をどう変えるかはもともと何がどうなっていたかを知る必要があり、アーキテクチャは多様な“業”をつなげるSociety5.0の土台となる思考法となる。
  • プラットフォームを創出するには、デザイン思考的なアプローチだけではうまくいかない場合が多く、業を超えた繋がりを作ることで価値を提供することができる。
  • 業と業をつなげるという意味で「System of System」として扱われる。
  • 業は今まで縦割りで扱われており、横串がされてなかった。これまでの業とは違う切り方を示す=業の再定義が必要であり、プラットフォームの検討に活用できる。
    例えば、災害プラットフォームでは、避難者の見積りや電力状況の復旧予測、緊急車両の手配などの判断に活用できる。
7.まとめ
  • デザイン思考は4つのマインドセットを持つために体系化されたもので、ベースの違いを加味したアプローチが必要。
  • 日本では「多様性が機能する仕組み」、「システム的なアプローチの追加」することで、より「新価値創造」をガイドする方がよい。実際には、What to make / How to make を行き来して考える。
  • プラットフォームの創出では人間中心的なデザイン思考以外にアーキテクチャ思考が必要。
質疑応答
  • アジャイルとデザイン思考は同じように感じます。違いはありますか?
    ⇒アジャイルとデザイン思考は似ていて共通項はあるが、全く同じ思考ではない。

  • 品質とデザイン思考はリンクしますか?
    ⇒デザイン思考はユーザーにとって本当に価値があるかの観点が中心で、品質は全体的な観点でシステム思考が入ってくるため、直接的には関わってきません。
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