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BC-News(BC講師からのメッセージ)
BC

92.BCはあくまでも「ベーシック」。いわゆる「お品書き/メニュー」。<2023年09月07日>

松田技術士事務所/日科技連 嘱託
松田啓寿(64BC・T修了)
 
この原稿執筆時(7月)に運用されているのは143BCである。
松田が修了(多分)したのは64BC・Tであり、40年前になる。あらためて時間の経過を感じる。
学生時代は狩野紀昭先生(電気通信大学)の研究室に在籍していた。1学年1人~多くても5~6人。毎週金曜日のゼミは10数名で深夜までかけて、M1が仕切っておられた記憶がある。泊まり込みも普通。のちに理科大工学部狩野研究室のゼミに参加することになったが、こちらは学部ゼミで20数名かもっと。院ゼミでも10名近く(高橋武則先生の研究室と相互乗り入れという事情もあったが)で、規模の差を目の当たりにした。
縁がありダイワ精工(現:グローブライド)TQC推進室に就職(就社ではなかった)。当時ダイワ精工ではTQC導入・展開時期だったが、TQC指導講師陣がスゴかった。石川馨先生・池澤辰夫先生・狩野紀昭先生・鐵健司先生(50音順)…他著名な先生方がメンバーで、しかも当時のダイワ精工経営トップは杉本辰夫氏。いずれもデミング賞本賞受賞者である。(その後森秀太郎氏)。
 
組織内における品質管理のなれそめはTQCだったが、その後BCでの班別講師は1980年代後半から。講義講師は2000年代に入ってから。初めての講義からすでに20年が経つが、何度担当しても満足のいく講義の実現には、至らない。受講者アンケート集計結果をみる際は毎回緊張感がある。まずはクリティカルな言語情報から。次に統計量、最後にポジティブな言語情報。この順でないと、次への意欲が折れてしまうので。ネガとポジ両方をうけとめて、次につなぐ(PDCA)のが、実態である。ときどき忘れたころに、講師内のコンペ(年間キャンペーン)で表彰されることがあり、もうちょっと継続して工夫してみようかという動機づけになっている。
ちなみに、狩野研究室入室直前には、希望する研究室の指導教官の講義「実験計画法第2」で惨憺たる成績だった松田が、後年大学やBC・社内セミナーで応用統計や実験計画法の講義を担当するという事実がある。継続は力なり。
 
班別研究会も40年近くなり、年間4名前後の受講者(担当班全体では20数名程度)に対応してきたので、掛け算すれば相応になる。各社のエンジニア・開発者の力量には毎回驚かされ、刺激をいただいている。2019年までは面前で意見交換するのが基本スタイル(そのあとの食事も含め)だったが、今般Zoom班別になり、状況が一変した。
印象的な現象のひとつは、育児と業務を同時達成中の技術者・開発者が、ご家族の協力のもとでBC受講・班別にも相当適度ポジティブ。しかもそのテーマ・データ分析がよく練られていて、成果を期待できるレベルに近づいている。偶然にもこのケースに、連続して2例遭遇しているが、これはすでに「偶然」ではない、と判断する(帰無仮説を棄却する)のが自然である。(有意水準にもよるが)
40年近くの班別講師経験のなかで過去に一切なく、最近1年以内に観察された事実である。パンデミックが残したものは、ネガだけでもなかった。か。
 
BC演習には相応にコミットしてきた自負がある。
同じ問題・データセット・ほぼ同じデータ処理パッケージ、であるにもかかわらず、これほどまで多様なアウトプットが生まれ、提出されてくる。インプットが同じならアウトプットも同じ(似てくる)とは、まったくもって考えられない。セミナーをとおして得る受講者のみなさんの力量には、無限の可能性を感じている。受講者のみなさんはBC対応よりも遥かに重要な業務・テーマを抱えていることは、当然・自然であり、自分の時間を削って対応されている(であろう)様子を想像すると、頭が下がる思いである。
松田は日科技連事業であるセミナーでの講義だけでなく、大学での教員経験も延べ(トータル)で25年に達したが、講義講師は質問があるとその質問者に応じた説明に集中する傾向がある(多分)。したがって演習(あるいは社内のセッション)をより有効にするためには、質問を準備する・質問を重ねるという「外段取り」がおすすめである。
なお、宿題には仕組み上やむを得ず、S・A・B…という評価をつけることになっている。統計はとっていないが、Sの多い受講者は、STの成績もいいという感触が、ある。どの程度の時間を配分できるかに依存しているかもしれない。ちなみに、142BCではついに、ST×5回で500点という驚愕の成績が観察された。班別研究会松田班で直接かかわる関係だったことも、さらにビックリ。点数には「満点」がある(途切れた特性)のでスコアは500点という「打ち切りデータ」だが、想像するにSTを設計する側講師をはるかにこえる力量をお持ちなのかもしれない。講師がSTを解いても、5回全部満点はムリ。BCに派遣される技術者・開発者の力量には舌を巻く次第である。
 
「統計的方法百問百答」(日科技連出版)という文献がある。学生のころには内容の1/10も理解できなかった。あれから幾年月経過して、ようやく当該文献の奥深さを理解できるようなったと感じている。「管理図法」(QCリサーチグループ編)も同様。いずれもすでに本屋では入手できないが、アマゾンのマーケットプレイスでは、ときおり出品されたり消えたり(売れてしまったり)。BC受講者・修了者の組織であれば、ライブラリのどこかに保存されているかもしれない。もちろん、国会図書館の蔵書検索では現在もヒットする。これらの歴史的文献から学ぶという選択肢もある。歴史的文献ではあるが、内容はいささかも陳腐化していない。現在にも通じる情報が満載である。〇〇は歴史に学ぶ。参考まで。
DXやビッグデータ、機械学習・強化学習・生成系AIなどのツールは、業務上積極的に利活用しているが、内挿なのか外挿なのか、観察なのか実験的介入なのか、状況に応じた適用が期待される。
 
BCは現在「品質管理検定1級対応」を標榜している。BCのコンテンツは資格試験であるQC検定1級を超えていると、個人的には感じる。
さて、BC講師や修了者のうち、1級合格者がどの程度なのか、寡聞にして存じ上げないが、一つの節目としてトライする価値はあると思う。QC検定を目指す皆さんにおすすめしたいのは「早い時期の挑戦」である。QC検定全体としては受験者数が増加傾向で、こうなると関係者の熱意は加速している。どのようなことがおきるかは、読者の想像に委ねたい。
これらの状況はあるが、資格取得で個々人の力量の一端を顕在化することは、現代人の普通の行動ともいわれる。松田は品質管理検定運用開始後すみやかに受験し、一度1級合格証を手にしたら、もう一度受験しようとは思わない。資格は一度取得するとこれの更新に配分する資源確保は、難しい。
個人で挑戦する「資格」とは別次元ではあるが、ここ数年デミング賞に再挑戦を意思決定されている(された)組織が、ある。成功例もあれば途上の組織もある。過去のデミング賞受賞に満足することなく、現在の組織環境に応じて自社のTQMをアップデートするという経営者の意図・組織的な意思決定には、敬意を表したい。
 
さて、タイトルの「BCはベーシック」は、これまでの経験から。
テキスト(現時点では26冊か)を初月に受け取る際には、かなりのインパクトがあるが、これらはすべて「お品書き・メニュー」であり、これらを皆さんの頭脳の引き出しに揃えて、その先どの部分を深堀されるか。仕様も図面も変わる。開発のスピードアップに対する期待とニーズはますます増大する。BC修了者・受講者のみなさんの、さらなる研さんに期待したい。

 
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