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47.文系学生のための統計学の教育方法<2023年01月19日>
神戸学院大学 経営学部 教授
今野 勤(64BC・O修了)
今野 勤(64BC・O修了)
私は、第64回ベーシックコースを大阪で、勉強させていただきました。かれこれ30年近く、統計学の実践、教育に携わってきたことになります。その間、実務者としてまたコンサルタントとして、企業の方々と様々な問題を、解決してきたことは良い経験になっております。
2008年から本格的に大学教員となり、当初は基礎統計学を教えておりました。しかし、経営学部の学生は文系ですので、そもそも数学が苦手な学生が多いのです。彼らの特徴は、①数式アレルギーがあること ②専門用語の定義は、ほとんど理解できない ③製造現場は全く分からない ことにあります。したがって、企業やベーシックコースのような教え方は全く通用せず、学生のおしゃ
べりが始まるか、寝てしまいます。したがって教員の方がカルチャーショックを覚えます。しかし、学生はお客様ですので何とかしなければなりません。そこで講義の時間を50%に減らし、残りの50%を演習で、手を動かせることにしました。先輩教員からのアドバイスもあり、基礎統計学ではパソコンを使わずに、電卓で例題の計算をさせました。本来ならば、手計算がもっとも基礎を覚えるのですが、カリキュラムの進行が遅くなるので、この辺が妥協点です。
この基礎統計を3年間教え、次に応用統計学を教えることになりました。ここでは、パソコンを使い、多変量解析、実験計画法を教えることにしました。学生は上記の①~③は変わりませんので、教育方法には工夫が必要です。統計ソフトの活用も考えましたが、これですとデータを入力して、結果を読むだけになってします。
そこで、EXCELの機能を最大限活用することにしました。EXCELで作った例題を、EXCELの関数、分析ツール、ピボット・テーブルを活用して答えを求めるようにしました。多変量解析は回帰分析が主体になるので、関数と分析ツールでかなりの部分が活用できました。困ったのは実験計画法でした。特に多元配置分散分析、2~3水準の直交実験では、関数で例題を解いていく方法もあるのですが、これですと大半が関数の説明に時間がとられます。さらに出来上がったシートを使うと試験問題が、コピペでできてしまうという問題がありました。
そこで、ピボット・テーブルを活用した解析方法を手順化しました。これですと例題ごとに毎回手順を追うことになるので、必然的に学生たちも解析手順を覚える手助けにもなりました。
これで1年目は何とか乗り切ったのですが、なんとなく学生の反応が良くありません。よく考えてみると、多変量解析の例題は社会統計のデータを扱うことが多いので、学生も現場を理解できます。実験計画法は、開発、製造のデータを扱うことが多いので上記の③が引っかかってしまいました。そこで2年目から例題を、マーケティングの分野の“店舗実験による売上の向上”に作り替え
ることにしました。これはかなりうまくいきました。マーケティングの勉強になることで学生の反応も、極めてよくなりました。
たぶん、生涯で一番、勉強した時代でしょう。(まあ、正直、学生時代に勉強しない学生に対する統計学の教育方法も様々だと思います。読者の皆様にとって、私の経験が統計学の教育の一助になれば幸いです。
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