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信頼性試験-イノベーションを引き起こす新製品を上市する為の信頼性検証技術-<2021年05月11日>
■価値の基盤としての「信頼性」
IoT,自動運転,インダストリー4.0等,世の中の価値が大きく変革していく中でも,企業が社会に提供する価値に品質・信頼性が必須であることは間違いありません.但しそれらの価値に必要な品質・信頼性は従来のそれとは大きく変遷していると考えております.例えば防犯カメラの信頼性を考えてみましょう.従来の記録式でスタンドアロン式の防犯カメラであれば,設置場所の環境・要求機能・品質・使用条件等により,必要に応じて電子機器開発メーカーは,製品の仕様・構成・品質・信頼性等をセグメント分けしていくつかのモデルをラインアップしてきました.
しかし,現在スマホのカメラやビデオの機能・性能を考えれば自明なように,格段に小さい容積で且つ低コストのカメラで撮影された画質で,一般顧客様に充分満足していただけているだけでなく,QRコードやOCR等画像から情報を引き出すことも容易です.そうなると防犯カメラは特殊なものではなく,顧客や販売業者が自由にシステムを構築・設置・運用し,静止画及び動画より情報を抽出・解析して利用しております.更にそれらの情報はインターネット経由で,世界中に発信されております.この様な状況では電子機器開発メーカーは,顧客の判断した(冷凍庫内や水中等特殊環境は除く)使用・環境条件等で,すべて稼働することが顧客の要求であると考えられます.勿論企業にとってそのために際限なくコストをかけて高信頼性を追求することは,顧客も求めておらず,いかに効率的にコストミニマムで創り込むが競合力の源泉であり,企業間の知恵と技術の勝負と言えます.
■信頼性試験技術とは,その位置付けは?
信頼性試験技術とは,あくまで信頼性試験を実施するための具体的方法と,結果を考察する技術であると思っている方はいらっしゃいませんか?現在では多くのデバイス・材料の基本的な信頼性試験条件やその結果データは各企業・団体のホームページ,文献等で公開されており,機器・モジュール開発者が一般的なアプリケーションに応用する際に,新たに部品・材料に対して信頼性試験が必要であると判断するケースは多くないかもしれません.しかし信頼性試験を行う必要性が低いと判断できる為には,信頼性試験技術及び事例を習得していることが必須であります.つまり禅問答のようですが“信頼性試験をやらなくて良いと判断するためには信頼性試験技術の習得が必須になる”ことになります.
それでは,信頼性試験技術と信頼性検証技術は、如何なる関係であるかを示した事例を紹介いたします.時期は今から20年ほど昔になります.今では大変残念ながら鬼籍に入られましたが,当時長年に亘り信頼性工学を牽引されていらっしゃった塩見弘先生が,とある信頼性の委員会の席で,信頼性評価全体を“VVT”と称しました.当時の参加メンバーがキョトンとするなか,「VVTとはValidation-Verification-Testingの事で,本当に必要な活動は信頼性Validationであり,その一部は仕様に反映されて信頼性Verificationされ,またその一部が実際に信頼性Testingされる構造であり,その関係がVVTである.」と発言されました.後日それを聞かれた同じく長年信頼性を牽引されていらっしゃった下平勝幸先生をはじめベテラン先生方の多くは大いに賛同しておりました.
因みにこれは当時そのミーティングに末席に参加していた筆者の記憶によるものであります.つまり我々が習得し,実際に新製品に適用しなければならないのは“信頼性Validation技術”であり,その実施過程で信頼性試験の必要性並びに有効性を充分理解している必要があると理解しております.因みにValidationとは品質マネジメントシステム(QMS)の基本用語で,日本語では“妥当性の検討”と翻訳され,広く認識されております.
では,イノベーションを起こすために新しい価値を創造する為には如何でしょう?果たして信頼性試験は不要なのでしょうか?新技術・新材料・新規構造デバイス等を創り出すときには品質・信頼性採用する際には“信頼性Validation”が絶対に必要であり,更に多くの場合には信頼性試験を実施します.特にその独自に創り上げた加速寿命試験技術は,競合企業に対して大いなる競争力を発揮いたします.また加速寿命試験技術の創出は,信頼性工学の全てを駆使して創り上げる新しい技術でありますので,是非皆さん,信頼性試験技術を習得いたしましょう.
■「信頼性技法実践講座:信頼性試験」セミナーの構成
本セミナーのコンテンツは,“信頼性試験技術を中心とした信頼性検証技術”を受講者にしっかりイメージングしていただけるため,以下の項目を理解いただける事を考えて構成いたしました.
- 信頼性工学の基礎的考え方,用語
信頼性の基本と,関連する品質や安全性との関係をふくめ,解説いたします. - 関連技術としてのデータ解析技術や物理解析技術
- 信頼性試験技術と共に,信頼性検証技術を構成する両技術のポイントを解説いた
- します.
- 環境試験・設備技術
信頼性試験を実現する為の技術の理解を通じて,試験の実現可能性や実行上の - 注意について解説いたします.
- 半導体デバイス(集積回路,パワーデバイス),高分子材料の信頼性事例
半導体デバイスや高分子材料の代表的故障メカニズムと信頼性試験の根拠に - ついて解説します.
本セミナーを受講時,皆さんの会社の信頼性技術の実情を思い浮かべると,きっと具体的課題が見つかるはずです.是非イノベーションを起こせる組織に生まれ変わらせましょう.
門田 靖(かどた やすし)
1981年 東京都立大学理学部物理学科卒業
同年株式会社リコーに入社
本社QA部門 信頼性技術部署に配属
以来デバイス・材料等ミクロ領域の故障メカニズム解析を中心に主に研究開発部門,電子デバイス部門,電子写真研究部門と関り,数々の信頼性技術業務に従事.
2014年に研究開発部門に異動し,先端デバイスの研究開発に従事
現在,日本信頼性学会会長,電子情報通信学会員,電気学会員,1989年以来,一財)日本科学技術連盟において各種信頼性講座の講師及び運営委員,運営小委員長.信頼性・保全性シンポジウム運営副委員長.
一財)ビジネス機械・情報システム産業協会においてASEAN基準認証タスクフォース委員長,地独)東京都立産業技術センターにおいて信頼性安全研究会副会長 博士(工学)
〈お問い合わせ先〉一般財団法人 日本科学技術連盟 品質経営研修センター 研修運営グループ
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南1-2-1 / TEL:03-5378-1213
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