FAQFAQ
JUSEのサービスについてのFAQ
セミナー関連
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恐れ入りますがFAXでお申込ください。FAX用の申込書は下記リンク先のページからダウンロードできます。
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日科技連盟・本部(西新宿)、東高円寺ビル、大阪事務所(JRE堂島タワー)近辺でご利用いただけるホテルをご案内しております。
こちらをご参照ください
どうぞ平服でお越しください。
原則、修了証は発行いたしません。一部のセミナーのみ発行いたします。
年度ごとに「教育/セミナー総合ガイド」をご用意しております。
こちらのページからPDF版をダウンロードしていただけます。
講師派遣・出張研修
実施費用は、研修内容や選定した講師、参加者数によって金額が異なります。
ご相談いただければ、教育の仕様をもとにお見積りいたします。お気軽にご連絡ください。
実施費用は研修実施後に、請求書を発行いたします。
お支払いについては、指定の口座へ請求書発行日より2ヵ月以内(原則)のお振込みをお願いしております。なお、振込手数料はご請求先にてご負担いただきます。
請求書の宛先を指定したい場合や費用を複数の組織様で分担される場合など、詳細についてはご相談ください。
何名からでも可能です。
少人数の場合は、講師による指導が行き届くメリットはありますが、コストパフォーマンスは下がります。
日科技連の社内セミナーでは、グループ演習実施の関係上、20名~40名で開催する場合が多いです。また、講義型セミナーや講演会の場合は、100名以上で開催するなど、研修・講演内容によって最適な人数が異なります。
ご要望やご事情も考慮し、最適なご提案をいたします。
日科技連の経験豊富な営業担当がご説明し、ご要望などをヒアリングのうえ、お客様との充分なコミュニケーションを通して、最適な教育プログラムをご提案いたします。
お客様への最大限のサポート・フォローを行いますので、ご安心ください。
基本的には、講師のスケジュールが合えば実施可能です。
ただし、セミナーによっては、例えば、企業実践事例の場合は、著作権などの使用制限がありますので、許可が取れた場合のみ、定例セミナーと同様の内容が提供可能となります。
基本的には、講師のスケジュールが合えば可能です。
ただし、講師によっては所属先からの出講許可が必要な場合もあり、出講不可となった場合には別の講師をご提案させていただくこともございます。
可能です。
費用は、平日と同額です。
指定できます。
1日研修の場合、6~8時間、半日研修の場合3~4時間の場合が多いです。
*実施時間によって、見積り額が若干、異なることがあります。
ご要望に応じた最適なご提案をさせていただくため、開催希望時期の3ヵ月前までにはご相談いただければ幸いです。
ご相談を受け、ヒアリング・プログラム作成・講師のスケジュール調整・研修テキストや資材の準備にある程度お時間をいただきます。
なお、急遽開催を希望されるセミナーについても、ご相談いただければ可能なかぎり対応いたします。
ただ、講師によってはスケジュール確保に半年から1年を要すこともあり、またテキストなど必要な資材の準備期間によってはご要望に添いかねる場合もありますので、できるだけ早い段階でご相談いただくことをおすすめいたします。
お客様のご都合により、研修をキャンセルすることになった場合には、キャンセルの時期、実施内容(準備状況など)に基づき、次の通り、実施費用に応じてキャンセル費用を申し受けますので予めご了承ください。
- 開催日の20営業日前※注2~10営業日前のキャンセル ……実施費用の20%
- 開催日の9営業日前~4営業日前のキャンセル ……実施費用の50%
- 開催日の3営業日前以降のキャンセル ……実施費用の100%
なお、準備の都合上、開催日の20営業日以前のキャンセルであっても、すでに発生した経費については、実費相当を別途ご請求する場合があります。
インターネットを利用してWeb上で行うセミナーや講演会のことです。
可能です。お客様のご要望に沿って、従来の集合研修で実施していたグループディスカッションを含む研修や、講演会の開催が可能です。
ご自宅でも、会社でもインターネット環境が整っている場所からご参加いただけます。
オンラインセミナーは、集合研修に比べて、システム設定等の準備や開催中のシステムの操作・管理等の運営工数が増えますが、セミナー実施費用としては原則として集合研修とは大きく異なりません。なお、配信の際に当財団会場や機材・システムを使用される場合は別途会場・設備費を頂戴いたします。
[必要な機材]
カメラ、マイク、スピーカーを装備(外付けでも可)したパソコン(Windows10推奨)
[インターネット環境]
光回線を推奨
会社で導入されている配信システムがありましたら、そのシステムを使わせていただき開催することができますし、日科技連で導入しているシステムを使って開催することも可能です。
- コロナ禍の中、三密を避けられ、感染のリスクが軽減されます。
- 実際に会場に足を運ぶ必要がないので、交通費、宿泊費が削減できること、地域の制限がなく多くの人に参加いただくことが可能です。
たとえば、日科技連で導入している配信システム(Zoom)のブレイクアウトセッション機能を使用して、参加者がいくつかのグループに分かれてグループディスカッションを実施することが可能です。
受講生はずっとPCモニターを見続けることになり、集合研修より疲労が激しいことが考えられます。1時間に1回程度の休憩を挟むことで、目を休められるよう、そして気分転換できるよう配慮しています。
また、運営の工夫で講師と受講生間のコミュニケーションをよくし、受講生の状況を把握した上で、適切な指導をするようにしています
賛助会員
日科技連賛助会員は、法人でご入会いただきますので、法人の代表者様をご記入いただいております。ただし、手続き上難しい場合、不都合がある場合は、それに相当する方をご記入いただいても結構です。
社印の捺印をお願いします。
1つに絞るのは困難かと存じますが、事業所統計調査などで一般に取り扱われている分類に準じていずれかの番号をご記入ください。
同じ方をご登録ください。代表者様には機関誌やトップ向け事業のご案内、日科技連からの重要なお知らせ等を送付させていただきます。
御社の教育窓口となる方をご登録ください。機関誌のほかに、会員特典の各種事業案内の定期送付、新年度セミナー参加人数登録用紙(年間予約)の送付、E-mailによる「賛助会員通信」を配信いたします。
入会手続き以後、登録票の記載内容について確認事項があった場合は、事務担当の方へお問い合わせさせていただきます。また、新年度更新書類(請求書など)を送付させていただきます。機関誌も送付いたします。
同じ方でも結構です。
お手数ですが、社印をご捺印いただいた原本をご郵送ください。
どの時点でご入会いただいても年会費(5万円)の金額は変わりません。
恐れ入りますが、分割払いはお受けしておりません。
毎年3月初旬には、更新関係書類、請求書を事務担当者へ送付しております。
ご入会いただいた法人の社員様であれば、どなたでも会員料金でご参加いただけます。ただし、関連会社様等、法人名が違う場合は一般料金となります。
入会申込書を受領後、1週間以内には関係書類、請求書を事務担当者へ送付いたします。
まず、参加希望セミナーの申込手続きを行ってください。その際、備考欄に「賛助会員入会手続き中」とご記入ください。入会申込書を受領しましたら、会員料金を適用させていただきます。なお、入会申込書をご郵送いただく際、お急ぎの旨お書き添えいただければ幸いです。
賛助会員は、組織ごとにご入会をいただきますので、組織名の異なるグループ会社、子会社のセミナー参加費は一般料金となります。また、その他の賛助会員特典も対象外となります。
ライブ配信セミナー
ライブ配信セミナーは、ウェブ会議システム「Zoom」、または(株)ファシオが運営するプラットフォーム「Deliveru」を使用します。
以下のテストサイトで、映像・音声が再生されることをご確認ください。
Zoom
システム要件はこちら
Deliveru
https://deliveru.jp/pretest5/
ID・PW:livetest55
[参考]
-
複数名でセミナー動画を視聴すること
(動画をプロジェクター等に投影して複数名で視聴することも固くお断りいたします) - セミナーの動画・コンテンツの一部または全部を当財団に無断で転載することなどを禁止しております。
詳細は、「ライブ配信セミナー参加に関してのお願い」をご確認ください。
- 集合セミナーと同様にwebサイト(セミナー詳細ページ)から申込手続きを行ってください。
- 開催日の4営業日前までにお申し込みをお願いします。
- 日科技連から、開催の3~2週間前に、連絡担当者様宛てに開催ご通知、ご請求書などの書類を郵送します。
-
日科技連から、開催の7営業日前までに、参加者ご本人様宛に、ライブ配信視聴のためのURL、ID、PWを参加者ご本人様にメールで送付します。
また、調査票・セミナーアンケート(Excelファイル)を添付します。 - 日科技連から、開催の3営業日前までに、参加者ご本人様宛に、テキスト、講義補助資料、必要な書籍、演習資料等を郵送します。
参加者変更は、セミナー開催日の3営業日前まで対応可能です。
ただし、テキスト等の資料をすでに受領済みの場合は、変更後の参加者へお渡しください。日科技連からの再送は致しかねます。
セミナー開催日の3営業日以降の参加者変更は受け付けられませんので、あらかじめご了承ください。
キャンセル料は以下の通りとなります。
- セミナー開催日の 7 ~ 1 営業日前の 17:00 までのキャンセル - 参加費の 50%
-
セミナー開催日の 1 営業日前の 17:00 以降のキャンセル
または事前のご連絡がなかった場合 - 参加費の 100%
【振替後のキャンセル】
振替後、セミナー開講日の 7 営業日以降キャンセルする場合は、その時点の営業日前のキャンセル料をいただきます。また、セミナー開講日の 8 営業日以前にキャンセルする場合は、振替時点の営業日前のキャンセル料をいただきます。
恐れ入りますが、郵送しております「開催のご案内」に記載されている「お問い合わせ先」までご連絡ください。
原則、セミナー開始の30分前からライブ配信の視聴サイトへアクセス可能です。事前にアクセスし、開始までお待ちください。
郵送しております「開催ご通知」に記載されている「お問い合わせ先」までご連絡ください。
映像のダウンロードはできません。
ストリーミングによる再生にのみ対応しています。
また、動画キャプチャーソフトを利用して、ディスプレイ上に表示されている画像データをファイルとして保存すること等も固くお断りいたします。
原則、修了証は発行いたしません。
いったん、(退室)切断していただいても大丈夫です。
休憩が終了する前に、改めてログインし、受講の準備をお願いします。
受講当日、ネットワーク等、何らかのトラブルにより受講ができなかった場合は、期間限定の「見逃しアーカイブ」で受講していただきます。
次回以降のコースへの振替はできません。
なお、セミナーによっては、見逃しアーカイブが設定されていない場合がございます。見逃しアーカイブの有無は、各コースのセミナー詳細ページをご確認ください。見逃しアーカイブが設定されていないセミナーに限っては、次回以降のコースへの振替受講が可能です。
各サービス&ソリューションについてのFAQ
TQM・品質管理
TQMは経営管理手法の一種です。Total Quality Managementの頭文字を取ったもので、日本語では「総合的品質管理」と言われています(総合的品質マネジメント、総合的品質経営と言われることもあります)。
元々は戦後の復興期に、日本企業の製品品質を向上させるため、企業で行われる品質管理(QC)に対し、「論理的なものの見方・考え方」や「品質を優先する意識」「統計をベースにした各種の分析・管理手法」「問題解決などの方法論」、また、それらを活用・推進する「体制やしくみ・ノウハウ」などを取り入れ、そのレベルを向上させていった取り組みに端を発します。
やがて、それらの活動は「顧客に満足される品質の製品を作るためには、全社的な取り組みが必要である」という考え方から、企業全体に適用され、TQC(Total Quality Control)と呼ばれるようになっていきます。それまで品質管理に適用されてきた科学的な考え方、手法、方法論は、製造や品質管理以外の分野においても有効で普遍的なものが多かったため、さまざまな部門にその活動が伝播していきました。
現在では、その活動の広さから「管理」という限定的な表現から「マネジメント」という普遍的に使える表現に改められ、TQMとして紹介されています。
大きく言えば、企業の体質を改善できます。もう少し具体的に言えば、主にQ(Quality:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:納期)、S(Safety:安全)、M(Morale:モラル・士気)、E(Environmental:環境)などの分野に有効とされています。
ただし、あくまでTQMは経営をうまくおこなうための“道具”です。さまざまな分野に適用できる分、その活動には幅があります。特に導入期には、ともすれば近視眼的になって「TQM“を”やること」で精一杯になってしまいがちです。TQMを有効な活動にしていくには「TQM“で”何をやるのか」という事をしっかりと考えることが重要です。
TQMとは単一の手法のことを指すのではなく、さまざまな手法や方法論が集まって形作られています。しかし、単にさまざまな手法が集まっているのではなく、軸となる考え方や特徴があります。たとえば「科学的」「プロセス重視」「組織的」といった特徴であったり、「顧客志向」「人間性尊重」「利益創出」といった視点であったりします。そういった共通の軸で束ねられた手法や方法論を、目的や効果に応じて、特にはそれらを組み合わせたりしながら活用していくため、さまざまな効果を得ることができます。
TQMを広い意味で捉えれば、役に立つと言えます。具体的に言うなら、事業戦略立案や、商品企画、設計開発、コストダウン、営業活動などさまざまな分野で役に立つ手法や方法論が存在します。また、問題解決や課題達成は製造現場だけでなくいろいろな場面で役立つフレームワークですし、QC手法と呼ばれるものでも、QCに限らずに活用できる普遍的な手法がたくさんあります。特に、近年、ロジカルシンキングの類いがかなり世間に普及していますが、その内容を見るとQC手法と近い構造のものがたくさんあります。これは、QC手法で学んだものの見方・考え方が、他のフィールドでも活用できる証左と言えます。
日科技連では、“S7”と呼ばれる戦略立案の7つの手法をご紹介しています。具体的には、1. 環境分析、2. 製品分析、3. 市場分析、4. 製品・市場分析、5. プロダクト・ポートフォリオ分析、6. 戦略的要因分析、7. 資源配分分析、の7つ手法です。
基本的に、S7に限らず戦略立案では“フレームワーク”と呼ばれるやり方が主流となっています。これは、市場などをさまざまな視点から比較検討し、状況を把握することで戦略の検討につなげるものです。例えば、有名なところではSWOT分析という手法がありますが、このSWOT分析の4つの四角のように、ものごとに枠組みを設けて考える方法です。
S7においてもこのフレームワークを用いていますが、最大の特徴は、7つの手法を連鎖的につなげることで、状況の把握から具体的な業務への落とし込みまでをシームレスにつなげている点です。これにより「分析はできても具体的な戦略の案につながらない」などの問題を回避した“実務に役立てられる“手法となっています。
営業部門で品質管理と言われてもピンと来ないと思いますが、TQMで用いている思考法や手法は、営業活動にとても役に立つと思います。別に営業部門で品質管理そのものをやる訳ではありません。その手法や考え方から、営業の役に立つものを流用するのです。
ともすると、営業は経験や勘、感性の世界だと言われがちです。しかし、実際のところ、営業活動に科学的な視点・取り組みを入れているか否かで、業績に差が出てくるのも事実です。
例えば、営業戦略は思考フレームワークの最たるものです。また、営業マネジメントにおいて、方針管理のように重要指標を明示したうえでの計画的な進捗管理、困ったときのフォローの有無により、業績に差が出るとの調査結果も出ています。他にも、お客様の声(要望)の言語データ整理や、営業ストーリーの構築などの手法もあります。
TQMの主な効果は先に述べた通りです。それらが改善され、高いパフォーマンスを示すことで、不良が減ったり、生産性が上がったり、新しい製品を効率よく開発 できたり、といった成果につながり、結果的に収益は向上します。しかし、TQMを導入したからといって、即座に劇的な効果を示す訳ではありませんし、またTQM“だけ”やっていればよい、というわけでもありません。
まずTQMでは、しくみやシステムもさることながら、企業で働く人の育成をベースにしています。そのため、人材が育成され、システムが有効に機能し始めるまでは少し時間がかかります。しかし、逆に言えば、単一の手法や方法論のみを使うのではなく、人材の能力向上をベースにしていますので、変化があっても順次対応していけるようになっています。
また、企業活動はTQMのみで行われるものではありません。根本的な企業戦略や財務など、重要な指標・取り組みがあります。それらと並列してTQMを実践することで、戦略を支える活動や、財務改善のベースとなる取り組みを実現することは可能です。
ISOは「国際的に要求する規格に合致するマネジメントシステムを構築し、それを第三者認定機関に認証してもらう」認証制度です。言い換えれば、「しくみが出来ているかどうか」を「客観的に判断する」のがISOです。そのため、そのしくみ・システムをどう活用するかは企業次第となります。
対してTQMは、しくみと同時に、分析手法やマネジメント手法、方法論などを用意し、これらを活用して改善・向上していくことを推奨しています。これにより、品質や業務効率などを実践的に維持・改善・向上していくことができます。
ISOを企業活動のベースとなる「しくみづくり」と捉えるなら、TQMはそのしくみを有効に活用し、「成果につなげていくための取り組み」だと言えます。ISOを取得されたら、次にはTQMの導入を検討されることをお勧めいたします。
方針管理とは、全社の方針(目的・目標)を実現するための、業務管理の進め方・考え方です。方針管理では、ピラミッドのように上位の方針(目標)を分割して方策とともに下位に展開していきます。
しかし、単に目標を割り振るのではなく、同時に実行計画や管理項目(方策を実行するときの具体的な指標)、定期的な進捗確認やフォローなどを組み合わせることで、方針の展開に実効性・現実性を持たせています。方針は系統的に上下でつながっていますので、下位の目標が達成され、それらが積み上がると、必然的に上位の目標が実現していくことになります。
はじめて「方針管理」と聞くと方針を管理する手法のように思われるかもしれませんが、実際には「方針(を達成するための業務の)管理」と捉えると、分かりやすいかもしれません。
厳密には、目標管理はTQMの範疇では扱われないのですが、近い分野として捉えられることが多いものなので、併せて説明します。
目標管理とは、ピーター・ドラッカーが提唱したMBO(Management By Objectives)が元になっていると言われています。マネージャーとスタッフがいたとして、スタッフが自分で業務の目標をマネージャーに申請すると共に、それらの実行や進捗管理をスタッフが自ら行うやり方を言います。スタッフの自主性を重視することで、スキルや成果がより向上することを狙っています。
ただし、日本では「目標管理」というと企業なりのアレンジが大きく加えられていることも多く、一義的な定義は難しいようです。中にはノルマの割り付けを目標管理、と言ってしまっているケースもあるようです。
日常管理とは、日常的・定常的に行っている業務について、安定した操業をできるようにしたり、異常が出たときに対処したりすることで、設定された目標を達成するための活動です。
具体的に言えば、作業の内容を標準化して、きちんと同じ手順で仕事を進められるようにしたり、工程の中で異常が発生したときに、その原因を突き止め、対策を施し、元の安定した状態に戻したりします。
こちらも分かりやすく言い換えるなら「日常(行っている業務を安定して進めるための、作業方法や工程の維持・)管理(の取り組み)」と表現することができます。
どちらもPDCA(計画・実行・検討・処置)といった管理のサイクルをベースにしている部分では共通しており、ケースバイケースで厳密な区別が難しい場合もあります。しかし、基本的に、方針管理が経営計画や年度目標などから展開されてくる目標を対象にし、結果的により高い目標や新しい目標の達成といった性格を持ちがちなのに対し、日常管理は設定された目標に対し、それを実行できる体制をしっかり作り、守っていく性格を持ちます。
ただし、方針管理の一環で出てきた目標を達成するために、その内容を日常管理に落とし込んでいく場合などもあり、双方がうまく連携して動く事が求められます。
TQMと一言でいっても、いろいろやるべき事がありますので、まずは初歩の段階での話をします。
まず始めに、企業トップや部門の責任者の人たちの同意・納得や理解・支援を取り付けることです。TQMは一人でできるものではありません。さまざまな部門、さまざまな人が関わってきます。必然、組織として動かなくてはなりませんので、トップや責任者の協力なしにはうまくいきません。特にトップのリーダーシップは大きな意味を持ちます。
次に、推進体制を作ることです。まずは導入の先兵として、情報収集をしたり、準備をしたりする人が必要です。専任の部署が作れれば良いですが、まずは兼務であっても、どこかに担当を置く必要があります。そして情報収集などができたら、どのように推進していくかの青写真を描きます。それが計画の背骨になってきます。
今度は実際的な、現場への展開です。まずは組織としての意思表示、トップの導入宣言がいります。次に現場キーマンの協力取り付けです。いくら上が旗を振っていても、現場が付いてこないのでは意味がありません。このときに、実際の牽引力となるのが現場キーマンです。別にこれは現場の上司だけとは限りません。現場で中核的に働いているベテランなども含まれます。初めは抵抗にあうかもしれませんが、その辺りは泥臭く口説き落としていくと、しまいには意外と熱心な推進者になってくれたりします。
もし現場が業務以外の活動になれていないなら、身近で負荷が少なく、成果のでやすい取り組みから始め、まずは「活動すること」自体から慣れてもらう必要があります。例えば5S活動などは始めやすいテーマだと言えます。また、もしISO9001を取得しているなら、そこを起点に活動していくのも一つの手です。
活動することになれてきたら、現場の標準化の推進や、改善活動、小集団活動などを始めます。段階を追って、方針管理なども始め、少しずつ、活動をすることから、成果につなげていくことにシフトしていきます。掲示板などを活用し、活動の進捗や成果を目に見える形にしていくのも効果的です。
なお、小集団活動・QCサークル活動の進め方については、日本全国にQCサークルの支部・地区組織がありますので、そちらにアドバイスを求めるのも良いと思います。日科技連のウェブサイトにQCサークル本部・支部・地区のページがありますので、そちらを見ていただければ最寄りの支部・地区の連絡先が分かります。
◆QCサークル本部・支部・地区について◆
(https://qc-circle.jp/branch.html)
また、現場の“守る“活動が定着してきたら、今度は未然防止や設計開発の強化など、より多方面での展開が考えられます。
端的に言うなら、日常管理の体制を先にしっかりと作り込むべきです。方針管理を行おうにも、その根幹となる日常業務がぐらついていては、まともな活動はできません。まずは土台・基礎をしっかり固め、その上でより高い目標を狙っていくべきです。
新しい取り組みというものは、慣れて成果を出すまでには時間がかかります。特に導入初期にはなおさらです。初めから高い目標を示しすぎると、その達成手段としての問題解決や課題達成のスキルが足りずに、消化不良を起こしてしまうことがあります。そうなると、せっかく方針管理を導入しても、主たる対象となるマネージャー層に活動に対する抵抗感が発生してしまい、その後の推進に支障を来してしまう場合があります。かといってあまり低い目標ばかりを続けていても、今度は作業量に比して達成感に乏しくなってしまい、これはこれで支障を生じます。
特に導入初期には、対象となるマネージャー層について、方針管理そのものの理解度・習熟度の他に、具体的手段となる問題解決や課題達成の習熟度、マネージャーにかかる負荷と成果のバランスなどに注意して、段階的に進めていくことが求められてきます。
方針管理に限らない話ですが、物事は長く続けていると、だんだんとマンネリ化してきて手を抜くようになってきてしまいます。具体的には忙しさにかまけて形式的になってしまったり、進捗管理やフォローがおざなりになったりして、成果につながらないやり方になっているケースがあります。この場合、手を抜いているとは言え作業負荷はありますから、やっているのに成果が出ない、と見なされてしまいます。
マネージャーに対しては定期的に進め方をチェックして、マンネリ化の傾向が見られるようになったら外部研修に出すなどのリフレッシュ策を行う必要があります。
また、新任マネージャーへの教育も重要です。ともするとOJTのみで済ませてしまう場合がありますが、手の抜き方を覚えたベテランが指導に当たると、間違った進め方が伝承されてしまいます。この場合にも、社内全体で進め方の研修を行って「基本」を学んでもらったり、外部研修でしっかりと進め方を習得してもらったりする方が好ましいと言えます。
問題解決とは、すでに発生している問題(悪さ)について、その原因をつきとめ、解決策を出す取り組みです。対して課題達成は、課題(目標)について、それを達成するための方策、やり方を考え、成功するように計画的に進めていく取り組みです。
言い換えれば、問題解決は「病気を治療する」取り組み、課題達成は「身体を鍛える」取り組み、と言い換えられます。
問題解決では、何か悪さ(「頭が痛い」などの症状)があり、その原因(病気)をつきとめ、対策(治療や投薬)をします。しかし、課題達成=身体を鍛える場合、別に何か悪さ(症状)があるわけではありません。症状が無ければそもそも治療という話にもなりません。その代り、目標(たとえばマラソンの目標タイム)に向けて、どこをどう鍛えるのか練習メニューを考えて(方策を立てて)、計画的に実施する、という目標ベースの話になります。
再発防止とは、一度発生した問題に対し、同じことが起きないように対策を施すことを言います。対して未然防止とは、まだ起きていない問題を事前に想定し、予め対策を打っておくことです。
どちらも「防止」という観点では同じなのですが、実はそのアプローチは全く異なります。再発防止は「既に見えている問題」を起点にし、原因分析や問題解決を行い、その結果(対策)をきちんと標準化することがポイントになります。それに対して、未然防止は「まだ見えていない問題」について、「起こりうる可能性を、どれだけ想定できるか」という点がカギになります。
同じ「防止」といえど、再発防止と未然防止ではその性質やアプローチが全く異なっているのです。
先にも述べたとおり、未然防止は「起こりうる可能性を、どれだけ想定できるか」がカギになります。そう考えると「いかにして想定の幅を広げるか」の取り組み方を、どのように工夫するかがポイントになります。
ひとつは物事の見方・考え方に工夫をすることです。同じものごとでも、アタマを柔軟にし、見方を変えることによって違う面が見えてきたりします。それがヒントになります。
もうひとつは、トラブルの兆候となる情報を集める体制をつくることです。ちょっとしたヒヤリハットや失敗が、他の大きなトラブルを防ぐきっかけになることもあります。あまり失敗を責める姿勢ばかりが前に出ると、誰も失敗を報告しなくなってしまいます。
もうひとつ挙げると、失敗情報の記述の仕方や用語の使い方を揃えることです。せっかく情報を集めても、使いやすい状態になっていなければ「起こりうる可能性」を見つける手掛かりにはなりにくくなってしまいます。
このように「起こりうる可能性」につながる発見や情報を集めやすい状況をつくることが、未然防止を効果的に進める第一歩になります。
12月から1月くらいに、次年度に向けての準備を始める企業も多いと思います。そんな時に、よく聞くのが「方針管理で、何をどこまでやるべきか分からない」というものです。
これは自部門の役割やミッション、あるいは他部門との境界などがあいまいになっていることが原因になっていることが多いようです。
本来なら、企業はその部門ごとに役割、ミッションが決まっています。しかし、時間の経過と共に組織の変化・変更が積み重なり、いつの間にかそれらがあいまいになってしまっていることがあります。
たとえば、
- 役割を他部門と分割したときに、その棲み分けをはっきりさせていなかった
- 他部門と機能を整理・統合したが、その際に業務が抜け落ちてしまった
- 業務が人についていたため、異動後に分かる人がいなくなってしまった
- 兼務が増え、重点となる役割が不明瞭になってしまっている
- 関連部門との境界線があいまいで、お互いに相手がやっていると思っていた、あるいは重複していた
- 新規事業なので、そもそも業務に必要な機能がまだ確立していない
などのケースが考えられます。
要するに「増築・改築を繰り返すうちに、迷路のような建物になってしまった」とでも言える状況です。
これでは方針管理の準備をしようにも、迷ってしまうのは当然です。
こういった場合、リセットとまでは言いませんが、自部門が果たすべき使命(ミッション)、そのために必要な業務機能、人的資源、メンバーの技能などの要素を整理し直すことが役に立ちます。我が家のリフォームならぬ、業務のリフォームをするのです。
そうやって自部門のあるべき姿が明確になれば、方針管理で何をどこまでやるべきかも明確にしやすくなります。
また、整理をしていく過程で、業務機能の過不足や、他部門との重複/欠落などが明らかになるので、より効率よく業務を進められる体制を整えられます。
これは新しい方策を実行するマンパワーを捻出する、という意味でも有効です。
まず標準的な取り組み方と比較したい場合は、日科技連で「TQM活動・品質マネジメント活動 ステージアップガイド」というTQM導入・推進のガイドラインを公開しています。
自己診断形式で自社のレベル診断ができますので、一度試してみると、自社の強み・弱みなどが分かります。
他社と比べてどうか、を比較したいなら「企業の品質経営度調査」を利用するのも手です。数百社の企業に調査を実施し、TQMの要素評価を見ることができます。
問題解決・未然防止
この様な場合には、新QC七つ道具の一つである「親和図」が有効です。現在起きている問題が漠然としていてよくわからない場合に加えて、未知・未経験の分野、あるいは未来・将来の問題など、混沌からモヤモヤしてハッキリしない中から、事実あるいは予測・推定、発想、意見などを言語データでとらえ、それらの言語データを親和図によって統合し、問題の構造やあるべき姿を明らかにすることが可能です。[1]
参考文献
この様な場合には、新QC七つ道具の一つである「系統図法」が有効です。系統図法は、ある達成したい目的を果たす手段を複数考え、さらにその手段を目的ととらえなおして、その目的を達成するための手段を考えます。
しかし、その手段がまだ具体的に手の打てる内容でない場合には、さらにその手段を目的として、その目的を達成するための手段を考えます。
このように系統図法は、目的?手段の関係で、目的・目標を達成するための手段・方策を多段的に展開し具体的な手段・方策を追求する方法です。[1]
参考文献
この様な場合には、新QC七つ道具の一つである「マトリックス図法」が有効です。
マトリックス図法とは、何らかの問題に直面したときに、それに対して検討すべき事象を行の項目にとり、また別の検討が必要な事象を列の項目にとって、それらの要素と要素の交点で、互いの関連の有無や関連の度合いをとらえるものです。
そして、それらの中から、または、行と列の集計結果から、解決すべき問題点や方策を考えるための着想ポイントなど、問題解決の着眼点を得ていく方法です。[1]
参考文献
“連関図法”とは、「原因のからみ合う問題について、その因果関係を明らかにすることにより、適切な解決策を見出す方法」のことです。
連関図法は、問題とする事象(結果)に対して、原因が複雑にからみ合っている場合に、その因果関係や原因相互の関係を矢線によって論理的に関連づけ、図に表わすことによって、原因の探索や構造の明確化を可能にし、問題解決の糸口を見出す方法です。
解くべき問題はつかめたが、“原因がモヤモヤとしていていまひとつはっきりしない”、“解決へ導くための切り口が分からない”など、混沌とした状態を整理し、手を打つべき原因を摘出したり、ある目的を果たすための手段を展開したい場合に連関図は有効です。[1]
参考文献
“アロー・ダイヤグラム(arrow diagram、矢線図)”とは、「最適な日程計画をたて効率よく進捗を管理する方法」のことで、複雑な関係をもつ作業工程や工事計画、その他プロジェクトなどにおいて、各作業間の従属関係を矢線でネットワークに表現したもののことです。すなわち、作業(アクティビティという)を矢線(→)で示し、それらの従属関係を考えながら作業と作業を丸印(○→○、イベントという)で結んで、先行、継続、並行などの関係を示したものです。
アロー・ダイヤグラムには、次のような利点があります。
- 作業の相互関係が的確に把握できる。
- 作業全体の進行状況が管理できる。
- ネックとなる作業を事前に察知することができる。
- 計画内容を正確に示すことができ、管理の重点が明らかになる。
“親和図法(Affinity Diagram Method)”とは、「混沌としてはっきりしていない状態の中から収集した言語データを、相互の親和性によって統合し、解決すべき問題を明確にする方法」のことです。
現在起きている複雑な問題に加えて、未知、未経験の分野、あるいは未来・将来の問題など、混沌からモヤモヤしはっきりしない中から、事実あるいは予測、推定、発想、意見などを言語データでとらえ、それらの言語データを親和性によって統合し、問題の構造やあるべき姿を明らかにする方法です。親和図法は、アイデアを生む方法論として考案されたKJ法を期限としています。
親和図法は、次のような目的で使用されます。
- あるべき姿や実現したい姿を明らかにする。
- 実態を把握して問題点を明らかにする。
- 発想の着眼点を得る。
- 漠然とした事柄を明らかにする。[1]
参考文献
統計的品質管理
水準を等間隔にして実験をしなければならないという決まりはありません。しかし、水準を等間隔にしないと、下記の様なデメリットが出てきます。
-
効率が悪い
例えば、3水準の実験で第1水準と第2水準を殆ど等しい値にしてしまうと、実験の手間の割には、得られる情報が2水準の実験とほぼ同じという、非効率な結果になります。 -
計算が煩雑になる
多水準の因子で、直交多項式による分解を使って1次効果や2次効果を求めるとき、計算がとても煩雑になります。このとき使う係数は、等間隔の場合には、直交多項式の表に載っている値がそのまま使えますが、等間隔でない場合には、自分で計算して求めなければなりません。また、等間隔に比べて直交多項式の公式もずっと複雑になります。 -
判断ミスを犯しやすい
不等間隔であることを忘れて、等間隔の要因効果図を書いたり、等間隔の公式を使って解析したりしがちなものです。すると、本来は直線的な効果のみをもつ場合でも、見た目には2次効果が有意になりそうですし、実際に検定の結果も有意になったりします。
参考文献
実験計画法によって計画された実験によって得られたデータから,要因の主効果や交互作用,実験誤差を抽出し,それらを比較して,主効果と交互作用が本当に存在すると考えてよいかどうかを統計学に基づいて判定する方法が分散分析です.
そのために,実際は実験データから平方和,自由度,平均平方,分散比の順にそれらの数値を求め,分散比に対して統計学を適用して分析します.計算方法はそれほど難しくないのですが,手間がかかりますのでエクセルや統計解析ソフトウェア(StatWorksなど)を用いるのが実務では一般的です.
ここで問題なのが,テキストやソフトウェアによって平方和や平均平方などの呼び名が異なるということです.例えば,平方和ですが,エクセルの分析ツールでは“変動”,StatWorksでは“平方和”と呼んでいます.字面で覚えるのではなく,しっかりと意味を理解し,ヘルプ等から正しい判断ができるようになることが大切です.
分散分析は統計学に基づく実験データの解析法ですので,分散分析の結果,有益な情報が得られるかどうかは実験条件や実験の実施法にかかってきます.実験条件,実施上の注意点として,
- 交互作用があると予想される因子は個別に実験を行わない,
- 主効果や交互作用が有意になるかどうかは要因の水準数や水準の幅に依存する,
- 反復(因子の同一の水準組合せの実験を複数回行う)
- 無作為化(実験の順序はランダムに)
- 局所管理(実験環境が均一と考えられるブロックを導入すること)
などがあります.反復,無作為化,局所管理はFisherの3原則と呼ばれています.
分散分析・実験計画法のポイントはまだまだあります.ぜひセミナーなどを利用し,分散分析・実験計画法を皆様の実務に役立ててください.
(東京理科大学 安井 清一)
統計的に意味があるかどうかは、分散分析表において誤差分散と比較して判定しているため、「グラフなどにおいて固有技術的な観点から判断される要因効果の大きさ」と「分散分析表での検定結果」が異なる場合があり、注意が必要です。
分散分析表の誤差分散が小さい場合には、グラフなどで小さな差しか示していないのに有意になってしまいます。これは、固有技術的に小さな違いである と見えるのに、検定結果は有意となる場合です。一方、分散分析表の誤差分散が大きい場合には、固有技術的には効果がありそうでも有意とならない可能性があ ります。
前者については、固有技術的な判断を優先させるのが良いものの、後者の場合には判断が難しいです。誤差分散の大きさの妥当性を確認し、データ数や実験のやり方を再度慎重にする必要があります。
参考文献
タグチメソッドとは、田口玄一氏が開発した数々の方法論の総称で、品質工学と呼ぶこともあります。伝統的な実験計画法とは本質的に異なっています。
田口玄一氏は「技術者の最大欠陥は、何が起きるのかわからないと手を打てないことだ」という名言を残しています。
製品の多くは、試作品の試験結果をふまえて改良を加えるというサイクルで開発されています。しかし、製品が高度化・複雑化することに伴い、試験で見つかる品質問題が増加して、技術者がその解決に追われるという問題が見受けられる様になりました。
タグチメソッドでは、使用環境などの条件をわざと大きく変化させて、ばらつきを意図的に作り出し、そのとき発生するばらつきができるだけ小さくなるような因子の水準を決めます(この様なことからパラメータ設計と呼ばれることも多いです)。
これにより、どんな品質問題が発生するかがわからなくても品質を作り込むことが可能となります。すなわち、「何が起きるのかがわからなくとも、品質問題の未然防止がはかれる」ということです。開発の効率が向上する理由がここにあります。
参考文献
- 永田 靖:「入門実験計画法」,日科技連出版社,2000
- 立林 和夫 著:「タグチメソッド入門」,日本経済新聞出版社,2009
一般には、説明変数の数(この場合は原料特性のデータ数:5)がpのとき、
n≧p+20 と言われています。その理由は、回帰残差の自由度はn?p?1でありますが、この自由度として少なくとも20ぐらいほしいということです。
この基準(1)によると、pが小さいとき、nは20ぐらいでよいことになりますが、回帰分析に用いられる分散や相関係数はn=20ぐらいでは不安定です。それゆえ、
n≧30,50 という基準も併用すべきであります。
p が50以上もあるようなとき、このp個の変数を全部用いるのではなく、変数選択によって高々10個の説明変数を用いればよいと考えているときには、基準 (1)のpとしては10を用いればよいです。このとき、n≧30,p≧50となってn≦pとなっても、変数増減法(減増法はダメ)を採用する限り、不都合 は生じません。
参考文献
観察データや記録によるデータから、その因果関係を探索する分析手法として、グラフィカルモデリング(GM)があります。
要因から特性への因果関係を把握するためには実験(特に実験計画法)が王道です。しかし、実験が困難な場合、あるいは実験の前段階の検討を行いたい という理由から、調査データや工程で得られたデータなどの「観察データ」を用いて因果関係を検討したい場合もあると思います。そんなときがGMの出番です。
GMでは、得られたデータに基づいて、変数間の「条件付き独立性」の分析を行います。これは、ある2変数X,Yが、他の変数Zを一定とした場合に (そういう条件の下で)「独立である(=無相関)か・独立でない(=相関がある)か」を調べるということです。その結果は、条件付き独立でない(=他の変 数を一定としても相関がある)変数を線で結んだ「独立グラフ」としてグラフィカルに表します。間に線がある変数間には、直接的な(=他の変数によらない) 因果関係がある可能性があります。こうした知見は、次のステップとして、SEM(構造方程式モデリング、共分散構造分析)、パス解析、回帰分析などによる 定量的な因果モデルの構築、あるいは実験の計画に役立ちます。
(早稲田大学 人間科学学術院 人間科学部 准教授 小島 隆矢)
タグチメソッド(品質工学)の創始者である田口玄一博士によって考案された、パターン認識や予測のための手法に「MT(マハラノビス・タグチ)システム」があります。
MTシステムは、工程や製品がいつも通りの状態かどうかを強力に認識します。従来の手法の多くは、いつも通りでない状態(=異常)の種類や程度を見 分けることに多くの関心を注いできたのに対して、MTシステムでは「いつもの状態」だけに関心を向けることで様々な負担を低減し、認識精度を向上させるこ とに成功しました。
「いつもの状態」を、MTシステムでは単位空間と呼びます。「パターン認識は計測技術であり、そこには単位量がある」との考えからです。そして、検 査対象が単位空間からどの程度の距離にあるかを求めます。距離が近ければ「いつも通り」ですし、遠ければ「どこかがおかしい」ことになります。
現在、MTシステムの手法群は急速に発展し、MT法が発表された後、MTA法、TS法、T法が次々に提案されました。今後も、さらなる情報機器の発展に伴い、MTシステムが解決可能となる課題の範囲も広がっていくと思われます。
参考文献
この工程の場合、y1の値を大きくするためにx1、x2、x3の値も大きくしてしまうと、y2が55~60の範囲から外れる可能性があり、バランス を考えながら良い条件を探索する必要があります。この様に、複数の応答(実験結果を表す指標)を好ましいレベルにすることを多応答の最適化といいます。
多応答の最適化には2つのアプローチがあります。一つは、「望ましさ関数」によるものです。これは、複数の応答を総合的に評価する望ましさ関数を適 宜設定し、それを最適化する因子の水準を求めるものです。もう一つは、制約つき最適化です。これは応答について与えられた制約を満たす因子の領域を求め、 その中で価値基準(あるいは、応答)を最適化する水準を求めるもので、当高線を用いるのが特徴的です。
参考文献
「構造方程式モデリング」(「共分散構造分析」とも呼ばれます。以下,SEM)は、多変量解析手法の1つであり、観察データに基づいて変数間の因果関係を定量的に評価・解釈できることが特徴です。
SEMは、調査データの分析では既に広く活用されています。
これは、分析モデルに人の意識など直接観測できないものも「潜在変数」として取り込むことができ、更に、潜在変数間の因果関係も分析できるという点が大きいと思われます。
一方、工程データの分析では、SEMはまだ十分に活用されているとは言えません。
これは、工程データにおける潜在変数の有用性や、そもそも現象をモデル化することの必要性が必ずしも認識されていなかったという面があると考えられます。
しかし、工程の改善を更に進めるためには、変数間の因果関係をしっかりと把握することが必要であり、SEMはそのための有用な統計手法の1つである、との認識が製造業でも広まりつつあります。実際、製造業の大手企業では具体的にSEM活用の検討が進められています。
このように、様々な分野での活用が今後ますます進むであろうSEMですが、他の統計手法と同様に、活用するためには幾つかの知識が必要となります。
MTシステムの歴史をさかのぼると、1936年にP.C.マハラノビスがマハラノビスの距離(MD)を提案して以降、統計の分野で理論上の合理性が認められていました。しかし、その計算が手計算では困難であるため、変数が少ない場合の多変量管理図や判別関数の中で利用されるに留まっていました。
1980年代に入り、パーソナル・コンピュータの急激な進化と普及により、処理の高速化やメモリ容量の増加にともなって本格的な多変量問題への適用が可能となりました。
これにともないMTシステムの手法群は急速に発展し、MT法が発表された後、MTA法、TS法、T法が次々に提案されました。今後も、さらなる情報機器の発展に伴い、イプシロンロケットを始めとする、採用範囲も広がっていくと思われます。
製造現場が対象なら、現場をよく観察することが絶対条件です。品質管理の世界では三直三現といいますが、実験計画法を使う場合でもまさにこの通りで、
(1)製造の現場を (2)いろんな人が (3)ものの見方を変えて (4)じっくりと見る
ことがポイントです。デスクの前であれこれ悩むよりも、問題意識を研ぎ澄まして現場を観察し、現場に教えてもらって要因を洗い出すのが、実験を成功に導く秘訣の一つです。
しかし、様々な特性が種々の要因と複雑に絡み合って整理できない場合には、工程順特性要因図や要因系統図を用いるのが有効です。
参考文献
新製品開発段階で発生する品質問題のほとんどは、正常に機能したりしなかったりの「ばらつき問題」です。普通の条件なら正常に機能するものが、環境条件や使用条件が変化すると、品質問題が発生するというものです。なぜなら、ほとんどのメーカーでは、普通の条件でも規格を満たさなかったり、あるいは品質問題を発生したりするものは、新製品開発の段階には移せず、研究段階にとどめるからです。
ところが技術者の多くは、品質問題がばらつき問題であることを認識していません。あたかもその製品が全品、いつでもその品質問題を発生するかのように考えて対策を打とうとするのです。ところが、ばらつき問題の対策と、全品がいつでも問題を発生するときの対策では、考え方も対策の内容も変わるのです。
タグチメソッドでは、製品性能を乱すものを「ノイズ」と呼び、三種類に分類しています。
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外乱…
お客の製品使用条件のばらつき、使用している間におきる環境条件の変化を外乱と呼んでいます。製品を使用する場所、周囲の温度、連続して使用する時間などがこれに相当します。工場内での製造設備でいえば、工場内部の環境条件、加工対策とする材料の種類の違いなどがこれに相当します。 -
内乱…
使用している間の製品内部の状態変化を内乱と呼んでいます。使用部材の劣化や摩耗、汚れなどがこれに相当します。 -
製造ばらつき…
製造のばらつきや使用部材のばらつきをいいます。お客の手に製品が渡る前からこのノイズがあります。
ノイズの多くはメーカー側で対策をとることができません。3.の製造ばらつきだけはメーカー側の品質管理で対策が打てますが、1.や2.のようにお客のところで発生するノイズに対しては、そうしたノイズがなくなるようにメーカー側では対策を打てないのです。これらについては、そうしたノイズを許容できるように製品の設計を変えるしかないのです。
参考文献
保証すべき項目の欠落やエラーが製造ラインで発生しても、それが捕まらずにそのまま顧客の所まで流出してしまった事例などなど・・・。もっと確実な品質保証、工程での保証度向上を図りたい。しかし、忙しい日常では新たな手法を取り入れたくはない。そんな品質担当者の声が多く聞かれます。製造領域での不具合要因を分析すると、開発から製造へ重要なポイントが伝わっていない。製造工程で確実な品質の歯止めがされてない。などが挙げられ、更には、個々の管理項目に「抜けや曖昧さ」があることも分かりました。そこで、機能展開からQC工程表までの各作業ステップで、「インプット~プロセッサー~アウトプット」を明確にし、これを基にして、それぞれの管理手法のつながりを明確にします。そして保証項目の設定理由・抜け落ちの防止、曖昧さの排除を行い、確実な品質保証を目指そうとするものです。
ノイズに対する対策は、経験的にも理論的にも次の3つの方法しかないと言われています。
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ノイズの発見と除去…
これは製品性能を乱すノイズの変化をなくす方法で、古くから品質管理の中心的方法として使用されてきました。しかし、生産工程などの条件変動や材料ばらつきに対してはこの方法を取れますが、ノイズが製品の使用条件や環境の変動である場合には利用できません。また、ノイズの変動を抑制するうえで、何らかのコストアップが生じます。 -
出力の補正…
出力の変動やばらつきをフィードバックで補正する方法です。場合によっては、ノイズの変化を計測して出力調整します(フィードフォワード)。第2次大戦後の電子機器の発達により、現在では様々な製品でこの方法が採用されています。非常に有効な工学的方法ですが、フィードバック装置自体にコストがかかるとともに、フィードバック装置自体の故障も発生します。また、フィードバックをかける前のシステムの安定性がある程度なければ、フィードバックをかけることにより、かえって不安定になる場合もあります。 -
ノイズの影響の減衰…
タグチメソッドの中心的手法であるパラメータ設計は、この3.の方法を行うための手法です。しかし、技術者の多くはこんな方法があることを知らないと言われています。パラメータ設計はこれから設計値を決めるために行うので、現行条件が存在せず、設計変更に伴うコストアップが発生しないという特徴があります。
タグチメソッドは3.の方法を中心手法としていますが、1.の方法や2.の方法を排除しているわけでありません。3つの方法の「使う順序が重要」で、1.や2.の方法をとる前に、3.の方法をとるべきだと主張しています。
参考文献
多くの特性(変数)を少数の特性(総合特性値。主成分と呼ばれます)にまとめるための手法として、主成分分析(principal component analysis)があります。質問にある様に、多数の変数を同時に管理するのが困難である場合や、変数間の構造を見たい場合などに有効な手法です。
主成分の値(主成分スコアと呼ばれます)を座標とすることによって、多次元空間内のデータを低次元の空間に、情報をあまり損なうことなく表示できます。また、主成分ともとの変量の相関(因子負荷量と呼ばれます)をプロットすることによって、変量間の構造が把握できます。
この意味で、主成分分析は代表的なデータ縮約の手法ということができます。
参考文献
データをいくつかのグループに分けることを群分け(subgrouping)といい、各グループのことを群(subgroup)といいます。また、一つの群の中のデータ数を群の大きさ(size of subgroup)といい、群の大きさをいくつにするかは、管理図を作成するにあたって重要な問題です。次の点を検討のうえ、を決める必要があります。
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群内がなるべく均一になるように、技術的に群の大きさを決める。
たとえば、2系統から来た製品ロットから毎時間サンプルを3個ずつ計6個とっているようなときには、とせずにに群分けするのがよい。 -
の分布がなるべく正規分布に近づくようにを選ぶ。
管理された工程からサンプリングされたデータであれば、の分布がゆがんでいても、の分布はが3以上であれば正規分布に近似できます。 -
の効率からあまり大きいは用いられない。
標準偏差の代わりに範囲を用いるのは、通常が6以下、多くとも10以下とされています。 -
検出力からいうと、の大きい方がよい。
工程に変化があったときに、「変わった」と正しく判断する確率、つまり検出力はが大きいほどよくなります。 -
計算に便利ながよい。
なるべく計算しやすい群の大きさとしては、が適当です。 -
サンプリングや測定の費用は、が小さい方がよい。
なるべく同じ状態で測定したいとか、サンプリングや測定の費用を考えると、は小さい方がよいです。
以上の事項を総合すると、の大きさは一般に2?6が用いられ、最も適当な大きさはと考えられます。
参考文献
新型のエアコンは、リモコン設定すれば、人を自動サーチして風を向けることも避けることも可能になっています。判断機能の自動化は、“適切であれば”、便利な機能で、今後のものづくりには不可欠な技術で、マハラノビス・タグチ(MT)システムが得意とするところです。
近年、MTシステムを活用する企業が増えています。特に、製品検査や設備・工程監視など、製造工程でも自動化が難しかった課題に適用されています。MTシステムにはいくつかの手法がありますが、以下に主要な手法の特徴と適用事例をご紹介します。
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MT法
結果が均質な集団(単位空間と呼びます)を1つのパターンとして認識し、単位空間のパターンからの差をものさし(マハラノビス距離)で計測する方法です。異常の程度に応じてマハラノビスの距離が大きくなれば、ものさしが役立つことになります。 適用事例:各種製品の検査、設備の監視、疾病治療効果の予測、文字・画像認識 など -
T法(1)=両側T法
結果が平均的な状態を単位空間として、対象の出力値(多変量解析における目的変数)を正負の符号付で推定する方法です。重回帰分析と異なり、サンプル数が項目数より少なくても計算が可能です。
適用事例:歩留予測、材料配合比率による強度推定、経済予測、不動産価格の予測 など -
T法(3)=RT法
文字認識のように単位空間の数が多数(1個以上)あるときに、分類に適用できます。変数が相当多くても、ただ2個の変数に情報圧縮してパターン認識を行うので、少ない容量で、かつ短時間に、パターン認識を効率的に行える利点があります。
適用事例:各種製品の検査、文字・画像認識 など
MTシステムは、Microsoft Excelでも基本的な計算が可能ですので、試してみられてはいかがでしょうか。
実験計画法では、原因系の因子を変化させて実験を行い、その実験結果(特性値の変化)が、誤差を超えた違いかどうかを検定することによって、因子の効果を判断します。
因子がAとB2つある場合を考えます。実験計画法では、因子AとBならびにA×Bの組合せによる(交互作用)効果と誤差の効果を分離できる様にデータを採取します。これに対して、調査データ等の観察によって得られたデータの場合、あらかじめ実験を計画してデータを採取したわけではないため、因子A×Bの交互作用効果と誤差の効果とが入り混じって(交絡して)分離できないケースが考えられます。この様なケースでは、GM(グラフィカルモデリング)が有効です。
GMでは、様々な因子間(変数間)の関係をグラフによりモデル化します。そこから得られる知見は、次のステップとして、SEM(構造方程式モデリング、共分散構造分析)、パス解析、回帰分析などによる定量的な因果モデルの構築、あるいは実験の計画に役立ちます。すなわち、実験計画法の前段階に用いるのがより相応しいと言うことができます。
重回帰分析において、説明変数間の相関が極端に高いことを多重共線性といいます。多重共線性が起きている場合には、以下の様な問題が生じます。
- 技術的にみて解釈が困難な結果(正負の符号が逆、絶対値が常識を越えて大きい等)が生じる。
- 観測値のわずかな変化(一部の観測値の除去、一部の説明変数の追加)によって、回帰係数の推定値が大きく変化する。
多重共線性を解決する方法としては、以下の様なものがあります。
1)説明変数の一部を除去する。
2)説明変数の要約(相関の強い2変数の平均をとる)を行う。
3)変数の本質的要因を探り、これを説明変数とする
4)似ている説明変数をまとめて多重共線性を避けるようにする。
上記3)4)の解決法を実行するには、「構造方程式モデリング」(「共分散構造分析」とも呼ばれます。以下、SEM)が有効です。SEMは、多変量解析手法の1つであり、3)でいうところの本質的要因を「潜在変数」として取り込むことができ、かつ「パス図」と呼ばれる図によって変数間の因果関係をしっかりと把握することが可能となります。
商品企画
たしかに「お客様から情報を集める」という意味では同じかもしれませんが、これらはそのアプローチ方法や得られる効果が違います。
インタビュー調査とは、お客様個人やあるいは少人数のグループに対して、たとえばある商品の日常的な使用方法や、意見・要望などを対面形式で聞いていく物です。インタビュアーが直接質問をしますので、知りたいことに対してより具体的な話が聞くことができますし、特にグループでのインタビューの場などでは、あえて多少の脱線を許すことで思ってもみなかった意見が集められることもあります。しかし、その特性上、一度に多数の意見を集めることができないという点や、インタビュアーに質問の仕方や回答の引き出し方、答えやすい雰囲気作りなどのファシリテーション技能が必要となるなど、制約条件も存在します。
対してアンケート調査とは、特定の質問項目や選択肢を書いたアンケート用紙(近年ではウェブベースのアンケート方法もあります)を事前に用意して、多数の人に回答してもらい、その結果を集計することでお客様の意見を集めるやり方です。こちらはインタビュー調査に比べて多数の人の意見を聞くことができるというメリットがありますが、逆に事前に設定した質問項目についてしか聞くことができず、また意見の深掘りができない、というデメリットも存在します。また、アンケート調査票の作成の仕方が意外と難しい、という課題もあります。一見、アンケート調査票としてきちんと出来ているように思えても、ちょっとした設問の表現方法や選択肢の設定の仕方によって、知らぬ間に回答者の意識を誘導してしまって結果に偏りが出たり、誤解を与えて有効なデータが集められなかったり、というケースも存在します。
いずれにせよ、インタビュー調査とアンケート調査、ともに長所と短所、向き不向きがあります。例えばインタビュー調査で傾向を深掘りして、アンケート調査でその調査結果を広く検証するなど、集めたい情報の内容によってうまく使い分けたり、あるいは双方を組み合わせたりして活用していくことが求められます。
たしかに顧客の声は重要なファクターです。そのため、顧客の声を「神の声」のごとく扱ってしまう場合がありますが、顧客の声はあくまで「人の声」であることを注意しておく必要があります。
まず意識しておくべき事は、顧客は商品企画をしようとして声を発しているのではなく「聞かれた事に対して意見を述べているにすぎない」ということです。商品への意見を求められたとき、一般の回答者(消費者)は、自分がその商品に対して持っているイメージや先入観の延長線上でものごとを考え、回答します。例えば、携帯電話について聞かれれば「もっと軽い方が良い」とか「カラーバリエーションがほしい」などの回答は得られますが、そこから一気にスマートフォンの企画につながるような、画期的な意見はそうそう簡単に出てくるものではない、ということです。
もちろん、既存製品の強化のための調査ならそれで十分だと思いますが、もし今までにない画期的な新製品の「タネ」を探すために調査をしているなら、それでは不十分かと思います。
もし、そういった画期的な新製品の企画を考えているなら、一つは質問の仕方を変えて商品の使用シーンについて深掘りをしたり、顧客の行動観察をしたり、といったことを通して顧客の声の後ろにある「なにか」を探り当てること、もう一つはやはり、あくまで「企画者」が企画の“オーナー”になって、上記のような背景情報を基に発想の転換をはかることが求められるのではないかと思います。
顧客の声の元になる「母集団」はどうなっているでしょうか? お得意様の顧客層ということで、そういった人たちばかりから意見を集めると、必然、集まってくる答えも「かたより」を持つ物になってしまいます。
たとえば平日昼間、専業主婦層を対象に洗剤のインタビューを実施したとします。当然、既存のメインユーザーの意見は集まるでしょうが、その場では、昼間に働いている兼業主婦の意見は入ってきません。夜中に洗濯するからこうしてほしい、とか、休日にまとめて洗うのにこうなっていると便利、といった意見は集まらない訳です。
企画のねらいとして、既存の顧客層への商品強化を考えているならそれでも良いと思います。しかし、もし既存の延長線上の企画ではなく、例えば新規市場をねらった新商品企画など、なんらかの「広がり」を考えているのなら、調査をする対象をもう一度見直してみる必要があります。既存の層「だけ」にしか意見を聞いていないなら、既存顧客「以外」の、「まだお客様ではない、しかしこれからお客様になりそうな層」にも関心をはらうことで、新しいニーズ、新しい使用シーンが見つかるかもしれません。
発想法は有効なツールですが、あくまでそのアイデアを生成しているのは人間の頭、思考です。言い換えれば、たしかに発想法はその思考を拡張しますが、同時にどうしてもその発想者の思考の傾向・好みに左右されてしまう=発想の方向性が出てしまうのも事実です。
もし発想の幅を広げたいなら、その自分の持つ傾向を意識してあえて変えてみるのも一つの手です。たとえば、アイデアの質の善し悪しは別にしてとにかく発想を書き出してみて、その上で「他のメンバーの出した」「最悪な」発想に乗っかってみる。あるいは、あえて「自分の好みではない」方向で発想してみる。あるいは「もし自分が○○だったら」という仮定をして発想してみる。この「○○」は何でもかまいません。社内の別の人でもいいですし、好きな映画俳優でも、あるいはシチュエーション・役割(もし自分が某国のスパイだったら)でもかまいません。そのときには、子供の「ごっこ遊び」のごとく、できるだけその役になりきるとより良いでしょう。そのまま使えるかどうかは別ですが、いつもとは違った視点での発想ができるのではないでしょうか。
また、発想法以前に、企画対象についてそれぞれが持っている「先入観」が発想の幅を狭めてしまっている場合もあります。この場合は、まずはその先入観を捨ててアプローチする必要があります。
このように、発想法だけに頼るのではなく、その発想法の使い方に一つスパイスを加えることで、少なからず発想がリフレッシュされると思います。
「発想すること」を「鉄砲を撃つこと」に例えます。既存の考え方では真正面にしか撃てなかったものを、発想法を使うことで、左右に角度を広げて撃てるようになります。しかし、あくまで鉄砲を撃つ角度を「左右に広げる」だけであり、なかなか射手の「立つ位置」までは変わらないものです。この「立つ位置」こそが、人の「先入観」です。先入観を捨てる=撃つ位置まで変えてしまうことで、弾の飛び方の可能性は無限の広がりを見せます。
ではその先入観の正体とは何なのかというと、それはものの「定義」だと言えます。そしてその「定義」は無意識的な「言葉」の集合によって形作られています。もし、先入観にとらわれずに発想したいと考えるなら、その発想の対象となるものの定義を意識してみると良いかと思います。
これはあくまで一つの方法ですが、上記の考え方で行くなら、例えば自分が思う『アイスクリーム』を定義づける言葉の集まり?乳製品で、甘くて、冷たくて、カップやコーンに入っていて、柔らかくて、暑いときに食べたくなる、コンビニで買える、100円くらいの、食べ物?を書き出し、定義が成り立つ最低限の言葉にふるい落としてみたり、あるいはあえて定義を壊してみたりすることで、今までは考えつかなかった視点で見られるようになるかと思います。
一つは、それぞれの製品のスペックなどを一覧表にして比べる方法があります。パソコンなどのカタログの後ろの方を見ると、掲載製品のスペック一覧が載っていますが、あのようなイメージです。どのような項目が勝っていて、どのような項目が劣っているのか一つずつ比較することができます。ただ、この方法だと項目や製品が多いと比較しにくい点があります。
もう一つの方法は、製品のマップを作成してみることです(「ポジショニング分析」という方法です)。まず、四角を描いて、その縦軸・横軸に、重要と思われる指標を付けます。仮にパソコンの商品企画をしているとして、縦軸に「画面の大きさ」、横軸に「可搬性」を置いたとします。その縦横の交点に、製品をポイントしていきます。デスクトップパソコンのように画面が大きいけど持ち運べないようなものは左上に集まるでしょうし、逆にモバイルノートは右下に集まってくるでしょう。その中で、どの部分にどのような製品があるのか、自社の得意分野、他社の得意分野は何か、手薄な部分や未開拓の部分はないか、などを見ていきます。この方法だと、製品スペックなど全てを比較することはできませんが、重要な項目の位置関係について、視覚的に把握することができます。
なお、例では「画面の大きさ=大小」で軸を取りましたが、他にも「機能重視←→デザイン重視」など、対比される項目を軸の両極に取るやり方もあります。
ただし、いずれにおいても、製品をポイントする際に、自分たち企画者の認識と、実際に商品を買う人の認識にずれがでないように注意する必要があります。自分たちにとっては高機能な製品であっても、買う人にその高機能さが認識されていなかったり、あるいは特に必要な機能だと思われていなかったりすると、分析結果と現実の間に差が出てしまい、正しく商品企画に反映することができなくなってしまいます。
商品企画を進めていく上で、軸となるアイデアは決まっているものの、具体的な仕様をどのようにして決めていくべきか迷ってしまう、ということはあると思います。言い換えると、商品のさまざまな機能(属性)とその選択肢(水準)の値や、それらの組み合わせをどうするか、という課題です。
そのような時には、商品候補の具体的な組み合わせのサンプルをお客様に提示し、意見を集めてみるのが有効な決め手となります。しかし、実際には、多数の機能の有無や性能の高低、色やサイズの違い、価格設定の高低などの複数の要素の組み合わせになりますから、その組み合わせ候補は膨大な数になってしまいます。たとえばパソコンの商品企画をしていたと仮定すると、決めるべき仕様として、ハードディスクの容量(2種類)、付属ソフトの有無(2種類)、液晶画面の大きさ(3種類)、大きさ(2種類)、重さ(3種類)、3つの付加機能の有無(3×2)、色の候補(5種類)、価格設定(2種類)があるとすると、2×2×3×2×3×6×5×2=4320通りの組み合わせが出来てしまいます。それら全てのサンプルを用意することも、またそれら全てをお客様に比較検討してもらうことも現実的ではありません。
こういった問題を解決するのが統計的な手法です。統計とは、膨大なデータを交通整理し、その中から有効な情報を引き出すための方法です。たとえばコンジョイント分析という手法を使うと、上記のように膨大な総組み合わせ数になってしまう場合でも、その中のいくつかの組み合わせを抜き出してお客様に比較検討してもらい、その結果を解析することで、どのような組み合わせ方が最適なのか結論を導き出すことが可能となります。
商品企画したときのコンセプトやねらいの設定と、実際のものづくり――設計開発や製造の技術的な側面の整合をどう取っていくか、という話かと思います。もちろん、商品企画の段階で決まった内容でも、実際には技術的に実現が難しいというケースもあるかと思いますが、技術的には可能なはずなのに、どこかで何かがかみ合っていなくて製品に反映されていない、というケースもあるかと思います。もちろん、商品企画と設計開発の部隊の間でコミュニケーションを取っていくことも重要ですが、ただ話し合いをすればどうにかなる問題でもありません。そのすれちがいの原因は、それぞれの「言葉」にあります。
商品企画は商品企画の言葉で、技術は技術の言葉で考え、仕事をしています。具体的には、商品企画では「お客様のこういったニーズを」という事を話し、技術は「こういった機能や機構、特性値で」という事を話します。そのお客様のニーズを、どういった機能で実現するのか、といった点が対応づけされていないのです。これではうまくかみ合う訳がありません。商品企画と技術、それぞれの言葉を「翻訳」し、橋渡ししてやる必要があります。
主に品質保証の分野で用いられる手法に「品質機能展開(QFD)」という物があります。これは、お客様のニーズなどの抽象的な項目を、機能や特性値、仕様などの具体的・技術的な項目と対比させ、置き換えていくことのできる手法です。
商品企画と設計開発、それぞれの立場や仕事を尊重することはもちろんですが、その中でこういった手法を活用することにより、お互いに共通の言葉、共通の認識を形成し、仕事をやりやすくしていくことができると思います。
使い方によってはとても効果的です。ビッグデータとは、文字通り、膨大な種類と量のデータの集まりのことを指します。たとえば購入者の年齢や性別と言った属性情報から、購入した商品、地域や時間など、いろいろな情報が含まれます。それら多彩な“軸”どうしを掛け合わせて解析することで、今まで気づかなかったような傾向、要素同士の相関関係などを知ったり、より精細な予測を立てたりすることができます。
マーケティングの世界で有名な話に「ビールとおむつ」の話があります。あるスーパーマーケットでの売り上げデータを解析していたところ、ビールとおむつという、一見まったく関係のなさそうな商品どうしの売り上げに相関がみられる、という結果が出ました。これはいったいどういうことか、と調査をしたところ、子育て世代の若い人が買い物に来た時に、自分のビールと幼い子供のおむつを同時に購入していた、ということでした。そのスーパーマーケットでは、ビール売り場とおむつ売り場を隣接させたところ、売り上げが向上したそうです。
しかし、ビッグデータがあれば、誰もが簡単にヒットを出せるのか、というとそうではありません。それが冒頭で「使い方によっては」と言った理由です。ビッグデータといえども万能の魔法の杖ではありません。欠点や制約条件もありますし、また使い方を間違えれば、当然間違った結果が出てきます。ビッグデータを使いこなすには、データを正しく扱い、適切な解析ができる能力が必要になります。
たしかに近年、「ビッグデータ」が注目されています。いまや、経済雑誌の特 集など、そのキーワードを目にしない日はないくらいです。しかし、新時代の救世主みたいに言われているビッグデータですが、実は万能ではありません。いくつか注意すべき点があります。
一つ目は、データはあくまで行動の結果を示しているだけであり、その後ろにある思考・意図は示してくれないことです。これはデータの大小にかかわらず共通です。仮にA製品とB製品の売り上げに相関がみられたとしても、そこに有用な「何か」があるかどうかは、コンピュータは判断してはくれません。最終的には、そこは人が判断しなくてはならないのです。しかも、データが大きすぎると、無関係な解析結果がたくさん出てきてしまい、逆に惑わされる結果にもなりかねません。
二つ目は、データ量が多すぎて手におえない場合があることです。もちろん、どんなデータも適正に処理すれば有効活用できます。しかし、その処理に必要なデータサイエンティストと呼ばれる人たちが絶対的に不足しているのが現状です。そのため、データを集めたはいいけども、どう扱ったらよいのか分からなくて放置されている、等と言うケースも散見されます。
三つ目は、データを集めるのもタダではない、ということです。ビッグデータと言われるほどの情報を集めるには、それなりのインフラやしかけが必要です。あるいはデータを購入する必要があります。解析システムを導入している大企業や、情報処理の専門家がいるような企業ならともかく、何も知らない企業が取りあえず試しに活用してみる、という訳には行かなさそうです。
さらにダメ押しでもう一つ。自分たちが解析しているビッグデータは、同じようなデータを競合他社でも解析している可能性がある、ということです。いかに大量のデータを持っていたとしても、通り一遍の解析をして結果を出しただけでは、結局のところ競合も同じような結果を得て、同じような打ち手を出してくる可能性があります。確かに、データ解析的には正解です。しかし、それではビジネス的には不正解なのです。そこで差をつけるには、解析のアプローチの工夫、解析者の手腕が必要になります。
ビッグデータは確かに革新的なものです。しかし同時に、その使い方を注意する必要があるもの事実なのです。
ビッグデータが使えなくても、ヒットする商品は作れます。ビッグデータが使え ない事を嘆くより、手に入るデータを有効活用していかに有用な情報を引き出すか、 を考えた方が建設的です。
確かに、ビッグデータはうまく扱うことができれば、新しいビジネスにつながる情報や、今まで気づかなかった斬新な顧客サービスを提供するきっかけをつかむことができます。しかし、だからと言ってビッグデータがなければ話にならない、という訳ではありません。
「パンがないならケーキを食べればいいじゃない」とは有名な言ですが、この場合はそれが当てはまります。「ビッグなデータがないなら、手に入るスモールなデータをどのようにして最大限活用するか」を考えるべきです。
少なくとも、統計学の世界には、限られた量のデータからでも、全体を推測したり、有用な情報を引き出したりする手法がそろっています。逆に、本来はそちらの方が得意分野なのです。そういった手法を用いて、顧客に訴えかける商品を作ることは十分に可能だと思われます。
逆に、無理してビッグデータを使って、大きすぎるデータ、無関係な解析結果に惑わされるくらいなら、初めから仮説を絞り込んで小さなデータを活用した方が、よほど成果につながる仕事ができるはずです。
QFD(品質機能展開)
世の中で新製品と呼ばれているものの多くが、既存製品の改良である。現状、品質展開を適用したケースの多くは、既存製品の改良についてであり、品質表を作成することが目的ではなく、作成した品質表を活用して、既存改良型の新製品を短期間に開発することが品質展開の目的である。
新規開発型の商品の場合、現状ではどのように顧客から要求を収集すべきかという方法が明確ではない。むしろ既存商品に対する要求を細分化し、再統合する過程で新しい発想が生まれる可能性があり、既存の知識を活用することによる新製品開発を考えている。[1]
ユーザの生の要求から、表面に現われていない裏にある真の要求を引き出すことが目的である。ユーザの生の要求表現は、クレーム情報のようにネガティブ的表現が多いため、ネガティブ的表現をポジティブな表現にする必要があり、また、一つのデータから複数の要求を引き出し、情報量を拡大するという目的もある。この原始情報から要求品質に変換するステップは、品質展開における最大のポイントであり、品質展開の成否のカギを握っているポイントである。顧客の要求が仕様書などにより、特性値が要求されている場合も、何故要求されるスペックが必要であるかを吟味し、真の要求品質を見出す必要がある。そして、真の要求品質を満足させるために、特性値はどのような値でなくてはならないのかを考え、設計品質を設定する必要がある。[1]
日々の業務の中で、仕事を与えた側と受けた側の意思疎通の難しさを経験された方は、多数おられることと思います。それは、「同じものを見ているから」「同じ情報に触れているから」「同じことばを使っているから」といって、同じ認識とは限らないからです。
多くの情報は“翻訳”して理解する“場”を経ないと、「共通認識」となりません。 共通認識に達するためには、情報を共有したうえで対話の“場” をつくり、そこで、適切なことばを使って相互の認識の差異を無くし、目的を達成するための検討プロセスそのものを共有することが重要なのです。
この、適切なことばを使った目的達成プロセスを実践するのに有効なツールが“業務機能を展開する”という考え方、アプローチです。「業務目標の展開」、「その達成に必要な業務機能の展開」を行い、業務全体を俯瞰したうえで、どの業務が目標達成のために重要かについて、関係者間でしっかりと共有してベクトルを合わせて活動することが重要です。
日々の業務の中で、仕事を与えた側と受けた側の意思疎通の難しさを経験された方は、多数おられることと思います。それは、「同じものを見ているから」「同じ情報に触れているから」「同じことばを使っているから」といって、同じ認識とは限らないからです。
多くの情報は“翻訳”して理解する“場”を経ないと、「共通認識」となりません。 共通認識に達するためには、情報を共有したうえで対話の“場” をつくり、そこで、適切なことばを使って相互の認識の差異を無くし、目的を達成するための検討プロセスそのものを共有することが重要なのです。
この、適切なことばを使った目的達成プロセスを実践するのに有効なツールが“業務機能を展開する”という考え方、アプローチです。「業務目標の展開」、「その達成に必要な業務機能の展開」を行い、業務全体を俯瞰したうえで、どの業務が目標達成のために重要かについて、関係者間でしっかりと共有してベクトルを合わせて活動することが重要です。
QFDは、「品質展開」と「業務機能展開」の総称です。「品質展開」は顧客の要求する商品の品質を明らかにして生産・サービス提供面の留意点などを明確にします。また、「業務機能展開」は企画・設計・購買・生産・サービスなどの各業務機能別に品質を確保する「仕組み」を明確にします。
この「業務機能展開」を活用することで業務を可視化することができます。
業務機能の展開は、「品質を形成する職能ないし業務を目的・手段の系列で、ステップ別に細部に展開していくこと」と定義されています。
品質を形成する職能とは、企画・設計・購買・生産・サービスなどの各業務機能(職能)のことです。これらの職能ごとにその業務の目的・手段を系列化して、ステップ別に細部に展開して具体化していくことで、品質を確保する「業務機能の仕組み」と業務実施の手順を明確にして可視化(記述)してゆきます。
業務機能の展開は、次のように進めます。
1)業務機能は名詞(対象)と動詞(作用)を用いて表現する
2)業務機能の細部への展開は対象を展開した後、作用を展開する
3)顧客満足(CS)を向上するために重要な業務機能を明確にする
4)重要な業務機能については作業マニュアル(作業手順書)を作成する
5)顧客期待の業務レベルを確保するための注意点・ポイントを明確にする
6)作業マニュアルは単位作業業務のレベルで作成する
QFDの、品質マネジメントシステムへの活用については、『Q9025マネジメントシステムのパフォーマンス改善ー品質機能展開の指針』にまとめられています。
SI(官能評価)
この様な問題は,官能評価でいうところの「分析形評価」「嗜好形評価」の違いがあいまいになっているところから生じているケースが多いようです。
「分析形評価」=分析能力のある専門家が製品を評価基準に従って評価する。
- 繰り返して評価を行っても同じ結果が得られる。/li>
- 評価基準に対する嗜好性によるブレが極めて少ない。
- 集団としても同じ結果を返してくれる。
「嗜好形評価」=分析能力と知識を持たない評価者が,ある基準で製品を評価する。
- 繰り返して評価を行った場合、都度結果が違う可能性がある。
- 評価基準に対する嗜好性によるブレがある。
- 集団としての結果は、評価結果の多数決で決まる。
つまり、上記のようなケースは、能力のある評価者を対象とした「分析形評価」を、分析能力と知識を持たない評価者に対して行った可能性があります。「社内での評価結果と市場調査の結果が一致しない」ような場合にも同様のことが考えられます。
官能評価とマーケティングの違いは、この評価者の能力想定にあります。官能評価なら、まず評価者の能力をチェックのうえ分析的評価を設計します。[1][2]
参考文献
この評価結果は解析してもあてになりません。データを取る方法に問題があります。
その問題とは、
- 「現行品である」「改良品である」という情報がバイアスになり、評価に影響を与えてしまうこと(とくに社内では自社品を知っていることが多いため可能性があること)。
- 評価の際に先と後のサンプルが固定されているので、順序効果が評価に影響を与えてしまうこと。
なのです。
対策は、
- 評価者が十分訓練されたパネルであれば、それぞれのサンプルに3桁の乱数からなる数字をラベルしてブラインドで評価し、先と後の評価順序が半々になるようにパネルを割り付け、2品それぞれを多段階尺度や線尺度で絶対評価し、得られた結果を通常の分散分析で解析します。
- 絶対評価ができるほどの能力がない評価者の場合は一対比較が有効です。上記と同じように、ブラインドで評価順序を先と後の評価順序を半々にした上で、後に評価したものを中央の0点とし、先に評価したものに点数を多段階(0±3点等)でつけます。統計解析には一対比較用の分散分析が用意されていますので、それを用います。
官能評価に際しては、目的、評価者の能力、評価者の人数、サンプルの差の性質、サンプルの差の大きさなどに応じて適切な方法を選ぶ必要があります。とくに、目的と評価者の能力を十分考慮して実施しましょう。
評価者が品位差を識別できる能力を持ち、訓練されたパネルであることを前提条件として、3種類の方法のメリットとデメリットを見てみましょう。
識別のための2点試験法:評価対象が1対なので疲労が少なく、2品の差を精度よく見極めることができます。
しかし、事前にどんな属性に違いがあるのか、あるいは、その属性の強弱がどうなっているのか、が判明していない場合には、評価者の能力が必要になり、統計的に有意差を見つけるのが困難になります。また、サンプル提示順の効果を打ち消すために、評価順を考慮した一定回数以上の繰り返しも必要になります。(あるいは、一定以上の評価者数が必要になります)
1対2点試験法 :評価対象の数が増えるため、識別のための2点試験法よりは疲労を伴いますが、感じられる違いの有無について、評価者の能力についてはそれほど必要とせず、統計的有意差を見つけることができます。
しかし”有意差あり”を示すためには2点試験法と同様に多くの評価の繰り返し数(あるいは、評価者数)が必要になります。
識別のための3点試験法:感じられる違いの有無について1対2点試験法よりも少ない評価の繰り返し数(評価者数)で”有意差あり”を示すことができます。
しかし、実験時の評価対象が3つに増えるため、上記の2方法より疲労が大きくなりがちです。さらに、香りなどのように前のサンプルの影響が残ってしまう評価では注意が必要で、3点の組み合わせ提示順も考慮する必要が出てきます。
これらの識別試験を実施する際は、同時にフリーコメントで「どんな差があったか?」を聞くことで判断材料を増やすことができます。
官能評価に際しては、目的、評価者の能力、評価者の人数、サンプルの差の性質、サンプルの差の大きさなどに応じて適切な方法を選んで実施しましょう。
サンプル間変動の問題ですが,一般的な「実験」では考えられないほど変動するのが実情です。官能評価では,この変動を管理することを考えて,「実験目的で分ける」という対応策をとることが多いようです。
- 開発段階か最終製品段階か。開発段階(見込みのありそうなサンプルを残す)ならば,中庸なサンプルを選ぶ。
- 外観検査の場合等は限度見本を設定して「評価の範囲」を見せる。
- 最終製品段階では,(合否の)限度見本や標準見本を事前に評価して,見本に対しての評価実験とする。
つまり,「何が標準か」ということを事前に検討したうえで実験を構成するということです。条件統制もこの範囲で行うということになります。