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第14回 知識構造化シンポジウム

『多様な業務への活用に役立つ知識の再利用性を考える』

 

SSM (Stress-Strength Model)について詳しく知りたい方は、以下のWebサイトをご参照ください。

▶ (株)構造化知識研究所

1. はじめに

第14回知識構造化シンポジウムが、2022年9月16日(金)に日本科学技術連盟・東高円寺ビルにてライブ配信で開催された。今年のシンポジウムでは、設計・計画における予測と知識再利用に関する基調講演があり、引き続き、設計から製造・サービスまでの一気通貫したトラブル知識活用の取り組み、動画マニュアルを活用した作業標準化による安全性・生産性向上の取り組みに関する事例講演があった。また最後に総合討論がなされた。

 
注)
SSM(Stress Strength Model)とは、トラブルに関する経験やノウハウを活用しトラブル未然防止ができるように、知識を構造的に整理・表現する手法である。
 

2. プログラム

時間 内容/講演者(敬称略)
13:30~13:40 オリエンテーション
13:40~14:15 基調講演:『予測の科学』
       飯塚 悦功(東京大学名誉教授)
14:15~14:50 事例講演1:『多様なワークを扱う梱包・包装機におけるSSMによる一気通貫した知識活用と社員育成』
        北村 尚之 (株式会社京都製作所 技術・生産本部 開発部 課長)
        有門 一雄 (株式会社京都製作所 顧問)
14:50~15:05 休憩
15:05~15:40 事例講演2:『動画マニュアルを活用した製造現場の作業標準化による生産性・安全性向上の
実践』
        犬塚 俊之 (東京海上ディーアール株式会社 経営企画部 主席研究員)
15:40~16:10 特別解説:『SSM導入・定着の進め方と導入各社で広がる様々な取組み』
       長谷川 充 ((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)
16:10~16:50 総合討論:全講演者
       コーディネータ:田村 泰彦( (株)構造化知識研究所 代表取締役)
16:50~17:00 まとめ

 

3. 講演要旨

〔基調講演〕 「予測の科学」

飯塚 悦功氏(東京大学名誉教授)

本講演では設計・計画において品質を確保するための予測の必要性やその具体的な方法について紹介された。また予測を科学として捉え、予測の体系的な方法を確立することの大切さについて具体的な説明がなされた。

デザインレビュー(DR)の効果的な実施のためには、レビュー観点が重要である。膨大なチェックリストでは効果的な運用は難しいため、気づきを与える要点をまとめた効果的な観点リストが紹介された。FMEAは設計において不可欠な考え方であり、この考え方によって設計の妥当性が向上する。設計は逆問題解析であり、要求から手段を指定したときに、その手段が意図しない特定・属性を与えてしまうので、それに基づく望ましくない状態・現象を予測することが重要であり、FMEAはこの役割を担っている。

またPDCAサイクルについて詳細な解説があった。PlanにはP1(目的、目標、ねらいの明確化)、P2(目的達成のための手段・方法の決定)があり、それぞれ具体的に考慮すべき内容が存在する。またPlan(計画)において予測は重要な要素である。具体的には上述の逆問題解析の考え方に基づき、目的達成のために何をすべきかを考えるバックキャスティングと、計画した手段を採用すると何がおきるかを考えるフォアキャスティングの両方の予測がある。

ひとはなぜ予測できるのか?DR、FMEA、PDCAなどにおいて予測を再現性のある方法で行うことができれば、設計・計画の質を高めることができる。予測を適切に行うためには、予測する内容に関する因果関係を理解すること、またそのために知識の再利用が必要であり、一般化・抽象化されている知識を予測する対象に具体化することが必要である。この思考を体系的に実施することが予測にとって重要であり、これがまさに科学と言えるものである。

予測を適切に行うためには業務マネジメントの定義と実施も欠かせない。業務マネジメントの原理として、①業務ステップの明確な定義 ②質の高い効率的な業務実施 ③失敗の早期発見 ④失敗に対する迅速・適切な処置 があり、それぞれ詳細に実施すべき事項がある。これらを標準化や知識基盤の活用を通じて適切に行う必要がある。品質マネジメントの考え方には良質な思考が組み込まれているため、これを理解し実行すれば、自然と予測の能力を高めることができる。

予測のためには知識が必要であり、その知識には文法構造がある。知識をその構造で整理し再利用可能なものにすることによってフォアキャスティング、バックキャスティングの能力を格段に向上させることができる。予測を科学するために、構造化知識工学の発展が必要である。

 

〔事例講演1〕 「多様なワークを扱う梱包・包装機におけるSSMによる一気通貫した知識活用と社員育成」

北村 尚之氏((株)京都製作所 技術・生産本部 開発部 課長)
有門 一雄氏((株)京都製作所 顧問)

同社は、一次包装済み食品・洗剤・化粧品・医薬品・電子部品などの顧客製品を包装・梱包する機械を主に受注生産している。本講演では、設計部門を対象にした設計品質向上・技術者教育の活動に加え、FA事業において最も顧客の生産活動に直結する製造・サービス・営業部門を対象にした「トラブル診断支援システム」の活動など、設計から製造・サービスまでの一気通貫した知識活用の取り組みについて紹介された。

同社では、顧客の新商品に対する包装・梱包機の受注が多く、仕様があまり明確でない中、短期間で設計・製造する生産体制が求められるため、いかに新規図面を減らして流用設計するか、流用図面とワーク(顧客の製品)の組合せによる問題点をいかに設計時に予測できるか、発生したトラブルをまとめたトラブル対応報告書で得られた教訓をいかに正しくフィードバックして再発防止するかといった課題があり、SSMを導入し、取り組みを進めてきた。

トラブル対応報告書は、SSMの構造による整理方法を踏まえた形式でトラブルのメカニズムを記述している。トラブル対応報告書の作成には、論理的に考える技術者の育成や会社の重要な資産を共有する目的がある。技術部門の方針に基づき、報告書作成に対する工数を付与し、また新規発行した報告書を技術者が確実に閲覧する仕組みをつくるなどして、活動を強化、継続している。またトラブル対応報告書から作成したSSM知識は、ワークおよび機種・ユニットを選択して検索、抽出できるようにし、設計検討時の気付きと予防処置を支援している。更に、設計者が抽出したSSM知識はDR議事録に自動出力できるようにし、SSM知識をDRで活用しやすくしている。このDR実施効果は予算順守率(どれだけ受注時の予算を守れたかの指標)で評価し、2018年度ではSSM導入前より顕著な改善が確認できた。その実績から、技術部方針として全案件DRを実施するという2019年度以降の取り組みに繋がった。

また、これまで技術部門中心に構築してきたSSM知識データベースを、営業・サービス部門が市場トラブル発生時や客先訪問時に役立てることができる「トラブル診断支援システム」の構築を進めてきた。具体的にはスマートフォン上で、該当するワークや機種・ユニットを選択し、それに対して調べたいトラブルを選択して可能性のある要因、現地対処方法、詳細情報を閲覧する仕組みを実現している。本講演では実際にスマートフォンを操作し、トラブル診断支援システムや関連動画などが実演された。

今後は、構築した運用フローを継続して論理思考ができる設計者を育てていく。また、トラブル診断支援システムの推進を継続し、SSMの仕組みを各部門で幅広く活用できるように会社全体でSSMの取り組みを発展させていく。

 

〔事例講演2〕 「動画マニュアルを活用した製造現場の作業標準化による生産性・安全性向上の実践」

犬塚 俊之氏(東京海上ディーアール(株) 経営企画部 主席研究員)

 

同社は、事故・災害のリスクマネジメントを主たる業務とし、多数の企業向けに安全・防災面のアドバイスを提供し、企業のリスクマネジメントの質の向上を支援している。同社では、昨今の製造現場の人手不足により課題となっている「膨大な知識・ノウハウの伝承」を解決するために、「動画マニュアル配信システム」を活用したソリューションを提供している。本講演では、その取り組みについて顧客の課題例・実践例を交えて紹介された。

同社では、誰もが安全かつ効率的に働ける職場をつくり、製造業の安定成長に貢献するために「安全」、「生産性」、「標準化」の3つの観点を中心に支援している。昨今の製造現場では、過去にはなかった災害の発生、段取り替えなどの付随作業に取られる時間が長いこと、特定の人にしか出来ない作業があることなどの「安全」「生産性」「属人化」に関する課題が顕在化している。これらの課題に対して、動画作業マニュアルを活用したソリューションを提供し、安全・生産性の向上、属人化の解消を支援している。本講演で動画マニュアルを使用した作業マニュアルの作成、現場作業改善支援や作業教育などが紹介された。動画マニュアルを用いた、データ収集、作業手順検討、改善実行、マニュアル反映、作業実践というサイクルを通じて、改善・標準化の定着や作業者の作業理解度向上につなげることができる。

製造現場では、付随作業において多くの災害が発生している。災害を防ぐためには、想定する災害・危険源をもとに対策(リスク低減措置)を検討し、マニュアルなどに反映する必要がある。この検討を行う際、参考となる災害事例を効率的に収集する必要があり、テキストベースの災害事例集から、原因・対象・結果を抽出するアルゴリズムを検討した。

インプットデータとして、厚生労働省の労働災害データベースを採用し、自然言語処理アルゴリズムの構築には、深層学習アプローチとルールベースアプローチの他、知識構造化アプローチを取り入れたモデルの検討を進めた。知識構造化アプローチでは、知識構造化と自然言語処理の両輪で情報の解析を行い、情報内容の再利用性を評価することができる。知識構造化アプローチの活用によって、着目する作業に対して役立つ情報を優先的に活用できること、危険源の気づきに有効活用できることが紹介された。

今後は、このソリューションが「製造現場の情報プラットフォーム」としての役割を果たすべく、更に活動を発展させていく。
 

〔特別解説〕 「SSM導入・定着の進め方と導入各社で広がる様々な取組み」

長谷川 充氏((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)

 

SSMは、電機・電子部品、自動車・輸送用機器、精密機器、産業機械・プラント設備、住宅設備、素材などの様々な業種で拡大している。技術分野では機構・電気のほか、ソフトウエア、生産技術、メンテナンスなど幅広い領域で取り組みが進められている。
 
SSM活動の導入・定着のポイントとして、適切なチームの人選を行うこと、最初は業務部署や技術分野をある程度絞り、具体的な再発防止・未然防止の課題に対してトライアルを行うこと、トライアル結果が課題解決に繋がっているかを評価し、適宜改善すること、知識の価値を高め、業務で活用しやすい環境を整えること、継続的な知識運用を行うために、組織全体が連携した取り組みとすることなどが挙げられる。
 
SSM導入各社は、業務ニーズに応じて知識を活用するために様々な工夫を施している。設計アイテムの変更点に対するリスク検討に限らず、環境条件や使用条件、ユーザの使い方などの変化点から影響を受けるアイテムと不具合を気づかせる仕組み、発生した不具合事象と設計アイテムの組み合わせで不具合発生メカニズムを抽出する仕組み、過去FMEA資産を知識ベースとして他の不具合知識ベースとともに再利用する仕組みなどが挙げられる。また、知識を活用したトラブルシューティング支援、不具合情報・知識を円滑に整理・蓄積する仕組み、原因分析ツリー図による知識作成支援、社内外の数万件以上の大量データから業務に役立つ知識を効率的に取得する仕組みなど、SSMはトラブル初期対応から原因分析、知識の整理、未然防止・再発防止まで一連の活動において役立てることができる。
 
今後SSM導入を検討される方々には、紹介された内容をぜひご活用頂きたい。

 

4. 総合討論

 

(株)構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏がコーディネータとなり、講演者とシンポジウム参加者との間で総合討論が行われた。様々な部門での知識共有方法、既存情報の再利用性の可能性と限界、リスクアセスメントの考え方、技術者の頭の中の知識の引き出し方など、多様なテーマで終了時間まで盛んな議論が行われた。

    

 

 

5. おわりに

今回のシンポジウムはライブ配信のみの開催であったが、ライブ配信の参加者から非常に多くの質問がチャットで寄せられ、SSM活動への関心の高さが伺えた。

今回の講演では、知識を再利用する基本的な活動として、予測、診断、標準化を取り上げ、再利用性の高い知識のあり方や特徴、活用方法など様々なテーマが紹介された。未然防止、再発防止活動で苦労されている方々や、SSMの導入、今後の発展を検討している方々にとって、本シンポジウムはとても参考になったであろう。

(文責:小林 計太)

 

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