BC
63.BCに鍛えられ、育てられ、助けられて35年<2023年02月04日>
元(株)ジーシー
加藤技術士事務所加藤行勝(60BC・T修了)
加藤技術士事務所加藤行勝(60BC・T修了)
日科技連のBC事務局から執筆依頼があり、過去の執筆者一覧を見たとき、皆さん著名な方ばかりでとてもその任にあらずと思い初めは断ったが、現在も班別指導と演習(宿題)問題作成委員をさせてもらっている者として、いろいろな業種・業界の方に書いていただき情報発信していきたいという事務局の思いと、私のような者に依頼するその勇気とに少しでも応えなければいけないと思い直して執筆を引き受けた次第である。
1.品質管理・ SQC との出会い
歯科材料メーカーであった而至歯科工業(株)(現(株)ジーシー)に私が入社したのは1973年で、8年後の1981年10月に60BCを受講した。大学で応用化学を学び、品質管理・ SQCとは無縁であった。歯科材料という小さな業界であるが、創業社長の時代から品質管理に熱心な会社で、第2代社長がTQC 導入を宣言し、その頃から毎年BCを受講するようになっていた。歯科材料製造から歯科機械製造を含めた医療機器メーカーへの発展過程のなかで TQC 導入の役割は大きかったと思う。
2代目社長のリーダーシップのもと、TQCを導入し、継続してTQM(GQM)をグローバルに展開したことが、3代目社長時代にデミング賞、日本品質管理賞、中尾社長(現会長)のデミング賞本賞受賞につながったと思われる。
本格的なSQCの勉強はBC受講からであったが、その2年ぐらい前に研究担当役員の依頼で歯科大学の理工学教室のN教授(金属学が専門)に来社していただき、分散分析の勉強会に参加したことがSQCとの出会いであった。本格的な統計ソフトがなかった時代であり、その当時としては高価なHP社製の関数電卓(赤外線)にプログラムを入力して統計量を計算していたことが、その当時5問あったBC宿題問題を短時間で終了することに寄与した。
2.BCに鍛えられ、育てられ、助けられて
BC修了1年後に品質保証部に異動し、2年後に TQC を指導された先生とのご縁で班別研究会講師
のお誘いを受けた。成績も芳しくなかったので本当に不安であったが、新米講師を育成するしくみができていて、そのおかげで続けることができたと思っている。それは BC News Vol.4 (光藤義郎著に記載されている若手班別研究会講師の育成を目的とした YRG(Young ResearchGroup) の一貫であったと思われるが、数名の新米講師が担当した班別テーマの指導内容を発表し、指導方法や今後の進め方等について教えていただ くというものであった。講義でもおなじみで後年デミング賞本賞を受賞された立教大学の小林龍一先生ほか、ベテラン講師にご指導いただき本当に助かった。
YRGでは、データが取られた背景があやふな状態で SQC を使うことを中心に説明したところ、 SQCを使うことを目的にしてはいけない、SQCも重要であるが、問題はどこにあるのか、問題の本質を探ることが先決である、QC的なものの考え方に基づき、問題解決能力向上を身につけてもらうことが重要であるである、と言われたことを覚えている。
当時は東京で年44回のBCがあった時代で、若手講師育成が課題あったのかもしれませんが、今から考えると本当に恵まれた環境を提供していただいたものだと思う。
ほどなく、宿題問題作成委員にも加えていただくようになった。その当時の宿題問題検討会は合宿形式で行い、検討中は厳しいが終了後はざっくばらんにお話するという暖かい温もりのようなものがあり、今もその伝統は変わっていない。著名な先生でも厳しいながら非常に優しい方が多く、これも品質管理の伝統なのだろうか。作成した問題は何度も修正をしながらやっと完成することの連続であ った。宿題問題作成と金曜日に行われる演習討論会を通じて SQCの考え方の多様性(テキストにはない知識など多くのこと)を学び、育てられたと思っている。
BC修了後、品質保証部とTQM 推進本部(2 年)に約30 年在籍した。BCで鍛えられ、育てられたおかげで、クレーム対応の改善活動へのSQC の活用、品質保証の仕組み作り、ISO 9001、13485 認証取得、生産現場の改善活動だけでなく、営業部門の改善活動の仕組み作り、海外工場への展開を実施する上でBCで学んだ知識にずいぶんと助けられた。
3.TQMの奥深さ
退職後、知り合いの関係から、これまで全く縁のなかった経済学、財務・会計、経営戦略論、組織論、マーケティング、人的資源管理を勉強する機会があり、それらを理解する上でTQM の考え方と同じではないか、役に立つ、と感じることが多い。これはTQM の奥深さ・幅の広さなのであろうか。
また、ネットワークを組み、Facebook で情報をやりとりして非常に助かっている。SNSが急速に進展する中、班別研究会での異業種交流に活用できないものだろうか。
現在、日本技術士会の理科好きの子供たちを増やす活動の一環として、小学校の理科教育支援を少し手伝っている。教師は5 年前後で異動し、PTA 対応の雑務が増加しているため、理科教室、理科準備室は管理されている状態でなく、理科教室、理科準備室を工場の現場と考えると、ここでも見える化、標準化、PDCA 等のTQM の考え方を活用できた。
以上、昔話中心になってしまい、いろいろな業種・業界に対して情報発信したいという事務局からの要求に対応できる内容になっていないこと、BC に育てられ、助けられた割には BC に対するお返しが少ない点をお詫びして結びとしたい。
〈お問い合わせ先〉一般財団法人 日本科学技術連盟 品質経営研修センター 研修運営グループ
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