DRレビューア育成のすすめ<2021年07月02日>
DRレビューア育成のすすめ
~レビューアのマインドセットを変えて
設計エンジニアの育成と設計品質の向上に貢献しよう~
設計品質を維持向上するためには、品質や信頼性を作り込む固有の技術が必要です。それをしっかり全うすることが大事です。それに加えて顕在化した品質問題の本質的な原因を特定し、技術的な再発防止策を策定し同じ失敗をしないようにする再発防止が必要です。再発防止策を標準化し、次の製品の設計に反映することにより設計品質は継続的に向上します。しかしそれだけでは十分ではありません。なぜならば製品の競争力や価格競争力を向上するために標準とは異なる新たな設計をするからです。そのときに設計変更に起因する新たな品質不具合を造りこむリスクがあります。設計変更による問題を未然に防ぐ未然防止が必要であり、その方法がデザインレビューです。
開発期間と工数が限られる中、効率よく不具合の発生を未然に防止するために日産自動車が開発したデザインレビューの手法が 「Quick DR」です。Quick DRの最大の特徴は、設計の変更点/変化点に着目して短時間で効率的に問題を発見し、解決することです。圧倒的に量が多い比較的小さな設計変更には「Quick DR」を適用し、新しい設計に対し従来から実施してきた「Full Process DR」と使い分けるまたは組み合わせてデザインレビューを実施しています。「Quick DR」の導入により負荷を増やすことなく、デザインレビューを適用すべき項目の網羅性を高め、大きな効果を上げています。
デザインレビューのツールとプロセスに加えて重要な要素がレビューアです。新設計に潜む品質問題を発見し、未然に防止するためにエキスパートの技術力、経験、洞察力を活用することが有効です。しかし設計エンジニアは、デザインレビューが未然防止に有効と認識していても、万全なレビューの準備に時間を費やしたあげく、レビューアに多くの指摘を受け、たくさんの宿題をもらうことからデザインレビューには参加したくないと考えているかもしれません。その結果デザインレビューを通すことが目的となり、問題を発見し解決する技術論議が十分の行われずにデザインレビューが形骸化することが懸念されます。
デザインレビューを有効に機能させるには、レビューポイントを設計エンジニアとレビューアで共有し、設計エンジニア自身が問題点と解決策に気付いて進めていくことが重要です。レビューアの役割は一方的に問題点を指摘して宿題を出すことではありません。レビューアの役割は、設計エンジニアが考えることをサポートし、設計エンジニアを育成し、モチベーションを高めつつ正しい設計対応に導き、製品の品質向上に貢献することです。これを実現するにはレビューアのマインドセットを変えることとコミュニケーション能力を高めることが必要です。
レビューアに必要な能力は、技術力に加え、デザインレビューのツールとプロセスを正確に理解しレビューにつなげること、設計エンジニアをサポートするマインドセットとそのためのコーチングスキルと定義し、レビューアの育成プログラムを開発しました。日産自動車および関連会社で2008年から実施し、その後未然防止手法と共に日本科学技術連盟にて、「設計・開発における未然防止手法デザインレビュー レビューア育成セミナー」として開催しています。
本セミナーでは、レビューアに必要なスキルを習得していただくことを目的に以下の内容を実施します。
・レビューアに必要なデザインレビューのツールとプロセスの習得
・問題の発見と解決の繋げるレビューのポイントの習得
・コミュニケーション能力を高めるコーチングスキルの演習
・レビューアの心得十か条とべからず集の紹介
・レビューアに必要なスキルの関するグループディスカッション
デザインレビューを有効に機能させるためのレビュー育成に本セミナーのご活用をおすすめ致します。
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大島 恵 (おおしま めぐむ)
元 日産自動車㈱
日科技連Quick DRコンソーシアム 代表
1976年日産自動車入社。主に強度信頼性設計、実験、振動騒音開発に従事。
その後、車両システム実験部部長、シャシー実験部長、シャシー設計部部長、車両要素設計部長、車両品質推進部部長、品質エキスパートリーダーを歴任。
その後、ボッシュ シニア・ジェネラル・マネージャー、日産自動車 技術顧問を経て現職。