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SQC(統計とビッグデータ)
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実験回数を大幅に減らしても確かな知見を得られるツール?<2018年08月03日>

 「技術力で差をつけるための実験計画法実践セミナーエントリーコース」では、二元配置実験を学んだ。二元配置実験は、2つの因子に対して全ての水準組合せで実験を行うため、得られる情報は多い。しかし、技術力で差をつけるためには、応答に対する効果が未知である多数の要因を因子として実験に取り上げ、効果を確認する必要がある。その上で効果の大きい因子の最適な水準を追求することになる。
 今、知見が得られていないA、B、C、D、Fの5因子を取り上げ、応答が目標を達成する条件(最適条件)を探索するための実験を計画するとする。最適条件を見つけるための実験であるので、因子の効果があるかないかを調べる実験ではない。2水準の実験ではなく3水準の多元配置(5元配置)実験の計画を考える。質的因子だけでなく量的因子が取り上げられていた場合でも、3水準であるので、回帰式(エクセルのLINEST関数を用いて)を求めることにより、取り上げていない水準値(水準値と水準値の間の値)でも最適条件を見つけることができる。
 なお、この多元配置実験で得られる知見は、主効果だけでなくすべての2因子交互作用(A×B、A×Cなど)の効果を把握することができる。また交互作用は、2因子交互作用だけでなく、すべての3因子交互作用(A×B×C、A×B×Dなど)やすべての4因子交互作用(A×B×C×Dなど)の効果も求めることができる。一般的に行われる分散分析では、主効果と2因子交互作用だけを求めており、3因子交互作用と4因子交互作用は誤差の変動に含まれている。別の言い方をすれば、交互作用は2因子交互作用の効果は把握すべきであるが、3因子以上の交互作用の効果は把握する必要がないとも言える。3因子以上の交互作用の技術的考察を試みても、解釈がつかないというのが現実である。効果を把握したい要因(主効果と2因子交互作用)の自由度を合計すると50であり、実験回数は3=243回で総自由度は242であるので(表1参照)、多くの方は実験回数が多すぎると感じ、実験回数を少なくしたいと考えるのではないでしょうか。また、実験回数243回は、コンピュータを用いた簡単なシミュレーション実験は可能であるが、テストピースを作成する実験や実機で行う実験は、一般的には現実的ではない。トライしたとしても、ヒューマンエラーが起こってしまい、実験データの信頼性を欠く場合が多い。
 では、必要な要因の効果(主効果と2因子交互作用)を把握でき、応答が目標を達成する条件(最適条件)を求めるためには、どのような実験を行えばよいのでしょうか。
 筆者は、実験を2段階で実施することをお奨めする。最初の実験では、効果の大きい主効果と2因子交互作用を把握することを目的に、多元配置実験ではなく、多元配置実験の条件からあるルールに基づいて抽出した条件のみで実験を行う一部実施計画による実験を行う。2番目の実験では、応答が目標を達成する条件(最適条件)を求めることを目的に、最初の実験で効果が大きいことがわかった因子のみで、3水準以上の設定で要因実験(2元は実験など)や一部実施計画の実験を行う。
 最初の実験を詳しく説明する。主効果と2因子交互作用の効果の大きさを把握するための実験であるので、水準数を2水準にする。多元配置実験では、2水準で繰り返しをしなくても実験回数は2=32回となる。また、3因子および4因子交互作用の効果の把握は不要のため、一部実施計画であるL16直交表を用いた実験を行うと、実験回数16回で5因子の主効果と全ての2因子交互作用の効果の大きさを把握することができる。L16直交表による実験は、データが名前通り直交しているため、他の因子の影響を受けずに、要因効果を把握できるという優れた実験の計画である(応答と要因の因果関係を把握するためには、直交実験が望ましい)。このタイプの実験は、日本において1940年頃から活用されており、1960年代には一般の技術者が自身で実験を計画できるようにするために、実験計画のテンプレートやグラフ(線と点からなる図)も作成されている。先人が残してくれた財産を有効活用すると、非常に効率的に知りたい技術情報を得ることができる。
 最初の実験の結果、主効果A,B,Cと2因子交互作用A×B,A×Cの効果が大きいことが解ったとする。今度は3元配置実験で3水運を設定した実験を行うと27回の実験回数となる。量的因子に対しては、回帰式を求める解析を行い、応答が目標を達成する条件(最適条件)を求めるとよい。また、最初の実験で取り上げ忘れた要因があった場合でも、L27直交表を用いた実験を用いると、同じ実験回数27回で必要な情報を獲得することができる。
 このように2段階で実験を実施した場合、合計の実験回数は43回となり、5因子3水準の多元配置実験の243回の実験回数に比べ、大幅に実験回数の低減を図ったことになる。技術力で差をつけるためには、スピードが重要であり、実験回数を削減することはスピードアップに大きく貢献できる(ただし、直交を崩す実験計画で実験回数を削減することはお奨めしない)。また、新しい技術にチャレンジしている場合、実験を重ねるうちに効果を把握した要因が新たに見つかることも少なくない。このような場合でも、直交表を用いた実験は、少ない実験回数で確実に要因効果を把握することができる。
 一般的に、技術力で差をつけるための実験は、効果をデータで確認できていない多くの要因の中から、効果の大きい要因を抽出するスクリーニング実験を行って、効果の大きい要因を見出す。次のステップとして、見出された効果の大きい要因だけを取り上げて実験を行い、最適条件を見つける。この2ステップで実験を行っていく。2回の実験を行うので、効率的に思えないかもしれないが、実はスクリーニング実験とその後に、最適条件決定のための実験を行った方が効率的である。QC的ものの見方・考え方に、「重点思考」の考え方がある。2ステップで実験を行うのは、急がば回れかもしれないが、「重点思考」の考え方に沿っており、先人が教えてくれた知恵ではと思う。
 「技術力で差をつけるための実験計画法実践セミナースタンダードコース」では、エントリーコースでは解説しなかった(できなかった)、多因子を取り上げる効率的な実験の方法を解説すると共に、実験の場の考え方も解説する。更に、欠測値の問題や計測ができなくて官能で評価する場合(◎,○,△,×で評価場合)の解析方法も解析する。また、総仕上げとしてグループで模擬実験を計画する演習を行い、職場に戻ってから直ぐに実験計画の実践ができるようにカリキュラムを編成している。第一線の技術者に、是非とも実験計画法を習得し技術力で差をつけて、日本の品質優位を更に高めていただきたい内容となっている。運営委員と事務局がこだわり(因子を量的因子と質的因子で考える)と自信をもって提供している内容である。
 なお、この先には、「技術力で差をつけるための実験計画法実践セミナーエキスパートコース」もあり、ビッグデータ時代のデータサイエンスに対応できる知識の習得も提供している。実験計画法を極めたいという方には、通過点としてこのコースの受講は必須である。
運営委員の一人として、このコースの設定に込めた思いを書かせていただきました。一人でも多くの方が、スタンダードコースを受講し、実験計画法を実践して、技術力で差をつけることができる知見を獲得していただきたいと思っております。
 筆者も、スタンダードコースの講師を担当させていただく予定です。技術力で差をつけたいと考えている方と、お会いできることを楽しみにしています。
 

  
日科技連 SQC実践研究会 久保田 享
 
 

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Profile

     久保田  享   氏
    (くぼた すすむ)
1963年 生まれ
1987年 東京理科大学理学部
    第1部応用数学科卒業
同 年 株式会社豊田自動織機製作所
  (現 株式会社豊田自動織機)
   入社、現在に至る

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