講義1:経営におけるTQMの役割とその活用
中條 武志 氏(中央大学 理工学部 経営システム工学科 教授)
経営環境が大きく変わる中、持続的な成功のためには、組織として変化に迅速に対応できる能力を強化する必要があります。TQM(総合的品質管理)は、顧客・社会のニーズを満たす製品・サービスの提供を目的に、プロセスの管理・改善を、全部門・全階層の参加を得て行うことで、経営環境に適した効果的・効率的な組織運営を実現する方法です。
本講義では、TQMの原則や中核となる活動について体系的に紹介し、経営にどう活用するのがよいのかについて考えます。
企業講演1:東レにおける品質経営の取組み
出口 雄吉 氏(東レ株式会社 代表取締役副社長)
私たち東レグループの使命は、世界が直面する「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる様々な難題に対し、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことにあります。
先端素材メーカーとしてこの使命を果たしていくためには、川下のお客様との信頼関係をベースとした協創(お客様との協働による社会的課題解決のためのトータルソリューション=顧客価値を含む社会的価値の創出)が重要だと考えて実践しています。
このような取り組みの事例とともに、その背景にある経営理念や企業文化について紹介します。
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企業講演2:企業価値向上活動~品質経営とトップの役割~
坂根 正弘 氏(株式会社小松製作所 顧問)
1950年代にコマツは本社を東京に移転、太平洋側の港の近くに工場を建設し、輸出を拡大。その後、円高で国内のモノづくりに自信を失うと、一気に海外生産を加速。まさに日本の縮図でした。21世紀に入り、私は会社の構造改革の第一歩として、モノづくりコストを工場の変動コストに絞って国際比較をし、日本の競争力が十分にあることを認識。その後、社内に説明し国内回帰に舵を切りました。一連の構造改革でV字回復が実現する中、本社機能の一部を石川に移すことで、年間7億円規模の経済効果が地域にもたらされました。2012年、私は自民党の第一回日本経済再生本部の会合では、デフレ脱却と、地方を元気にすることの重要性を強く訴えました。現在は地方創生、国家戦略特区など、政府の仕事を通してこの国の課題に挑戦しています。
企業講演3:「イコールパートナーと評価される開発提案型企業への成長」
をめざしたTQMの推進
小田井 博茂 氏(株式会社オティックス 代表取締役会長)
当社はローラアーム、ラッシュアジャスタをはじめとするエンジン機能部品を主要製品とした自動車部品メーカーです。「イコールパートナーと評価される開発提案型企業への成長」を目標に、2014年TQM強化宣言を発出し、行動指針「OTICS Way」と経営ビジョン「VISION120」を経営の基本としたTQM活動を推進してきました。「100年に一度の大変革期」と言われる自動車産業界において、従来の延長線上では衰退の危機感を感じ、持続的な成長を続けるために取り組んだ、TQMの強化およびデミング賞受賞に向けた、しくみの強化・改善活動について紹介いたします。
講義2:企業における品質経営の進め方
狩野 紀昭 氏(東京理科大学名誉教授)
TQMは、全社的努力を必要とする経営戦略の実現に役立つユニークな管理手法であり、顧客指向のISOに対して、顧客指向とともに利益確保をめざしていることを具体的にご説明します。
競合優位としての品質を、顧客の基本要求への適合・顧客満足・顧客歓喜に区分し、今日の経営における位置づけを明らかにし、TQMの仕組み・具体的な手順など、経営に役立つTQM推進の実際について、各社の事例を踏まえてお話しします。
*所属・役職は2019年5月現在のものです。