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未然防止とは―vol.1ー<2021年07月09日>


 未然防止という言葉は、品質の世界でも普通に聞かれるようになりました。

 しかし、その定義はまちまちです。ある人は品質のマネジメントをしっかりやることだったり、他の問題にも適用できる再発防止を考えることだったり、定義する人によって異なるようです。

 当然、皆さんは昔から、お客様のところで品質問題が起きないように、お客様に製品が渡る前に、いろいろなことをやってきました。設計段階で試験をしたり、ゲートごとにレビューを行ったり、工場で検査を行なったり、それらは皆、未然に品質問題を防止するために行なってきたことです。それらは品質問題の未然防止ではなかったのでしょうか。それと、最近、よく聞く、未然防止とはどこが違うのでしょうか。何か問題が起きると未然防止ができていなかったとか、これからは未然防止に力を入れますとかいう人がいますが、その未然防止は何を指しているのでしょうか。2002年に「トヨタ式未然防止手法GD」という本を書いたときは、当然それを意識して書いたはずなのですが、十分に従来の品質を確保する手法とどこが違うのかを説明し切らなかったと思い、今の混乱の責任を感じている次第です。

 その違いは、従来私たちが行なってきた品質の確保は仕事を管理することによって、つまり正しい仕事を定義し、それを正しく行うことによって確保する手法だったのです。それに対して、私たちが定義した未然防止は、製品をもっと良くする(隠れている問題を発見し製品に価値を付加する)ために人の発見力(創造力)を使うのが未然防止だということだったのです。

 一個の透明なカップをイメージしてください。半分ぐらいまで青い液体が入っていて、その上には黄色い液体が入っていて、いっぱいに満たされている状態をイメージしてください。それらは、混ざり合わずに存在しています。

 このカップ一杯(青い部分と黄色い部分を合わせたもの)は、皆さんが作っている製品に対するお客様の期待だとします。そのうち、下の青い部分が皆さんに与えられた目標です。それは客先から与えられたり、公の機関から与えられたり、上司や自分たちで決めたり、その背景はいろいろありますが、多くは明確な数値等で与えられた目標です。この目標を確実に達成した製品を客先やお客様に提供するために、正しい仕事を正しく行うシステムを作ってきたのです。それが従来の品質に対する取り組みです。そして、黄色い部分がお客様の期待と与えられた目標のギャップの部分です。つまり、私たちが与えられた目標を満たした製品を作ってお客様に提供しても、そこにはお客様の期待を満足していない部分があるということです。これが私の考える品質の基本的考えです。

 要するに、正しい仕事を正しく行う管理システムだけでは達成できないお客様の期待があるということなのです。そこは、目標の形や、こうやるべきだと明確に与えられているわけではないので、そのギャップを埋めるには何かに気づかなければなりません。つまり、そこ隠れている潜在問題を発見しなければならないのです。それが、従来の品質達成方法とは違う新しい品質の領域「未然防止」の定義なのです。気づきから始まるという意味で、創造的未然防止と呼ぶこともあります。

 カップのモデルで示したように青い部分(従来の品質管理)と黄色い部分(未然防止)の合計で、お客様の期待を満たしていくのですから、決して、従来の品質管理を否定しているわけではないのです。従来の品質マネジメントはしっかりやった上で、想像力を生かした未然防止が必要だということなのです。

 日科技連主催のセミナー「発見力」ではカップの黄色い部分に隠れている潜在問題を発見する方法について、解説します。

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Profile

吉村 達彦(よしむら たつひこ)

1968年 トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)入社
1988年 工学博士(東北大学)
強度実験課長・シャシー技術部長・信頼性強度機能主査等を歴任
2000年 九州大学 大学院工学研究院機械科学部門固体力学講座教授
2003年 General Motors Executive Director Reliability & Durability Strategy
2007年 ジーディーキューブコンサルティング代表

【受賞】
•自動車技術会論文賞
•機械学会技術貢献賞
•日経品質管理文献賞

【著書】
『トヨタ式未然防止手法GD3』(2002)日科技連出版
『想定外を想定する未然防止手法GD3』(2011) 日科技連出版
『想定外と言わない組織を作るAPATマネジメント』(2012) 日科技連出版
『発見力』(2016) 日科技連出版

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