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BC-News(BC講師からのメッセージ)
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30.「私の品質管理事始め」<2016年09月29日>

明治大学 名誉教授 大滝 厚 (32BC・T修了)  
 
 
私は第32回BC(東京クラス、1968年)を修了した。ただ、大学時代の卒業研究テーマは、繊維の加工条件と物性の関係を、直交配列表を適用して研究したことや大学4年前期には、「品質管理」の講義を履修していて、その頃から品質管理に興味があった。当時使用したテキストは、「初等品質管理テキスト」(日科技連出版社)で統計的方法には大変魅力を感じた。爾来、2011年3月に大学を退職するまで50年近く品質管理を中心にして応用データ解析と深く関わってきた。 
 
卒業後、私は繊維製品を製造していた会社に就職し、品質管理課に配属され、最初の業務は苦情処理の仕事に携わった。技術系で採用されたにもかかわらず、お客様から寄せられた苦情や顧客カードに記述してある内容と共に送り返されてきた製品を丹念に観察してその原因らしきものを特定してお客様に回答を書くことであった。 
 
そんな中で、製品強度が低下しているという苦情が急増した。その原因を究明するために、製造現場へ入り込んで原因探しに奔走したが、なかなか原因らしきものは見つからず、ただ日を徒労するばかりでいた。しばらくしてから、機械ごとに層別してみると、特定の場所に置かれている機械に問題があることに気付いた。当初は、その機械の性能に問題があると思って調査したが何ら問題がなく、むしろ周囲の環境を観察すると、古い工場のため、壁面に隙間ができて外気が侵入して、塵や埃が入り込んで砥の粉のような働きをして部品が摩耗し、製品を傷つける事が判明した。このとき三現主義の重要性について身を持って体験した。  
 
このような経験に加えて、次第に技術的な業務が加わり、入社3年目に入って新製品開発に携わった。それは、私が担当する以前に先輩・同僚たちが苦労していたものだった。しかし、卒業研究を参考にした一つのアイデアで解決可能と思ったが、それまでの製法上からは無謀なやり方であり、現場の責任者からは試作を認めないと釘を刺された。これを打開するために、三交代制の真夜中に現場で試作を試みた。 
 
その結果、ある条件を満たすと問題が解決するとの感触がつかめ、試作品を持って上司と現場責任者を説得し、担当役員の了承も得て開発を進め、当時のヒット商品となった。この経験から技術的なトレードオフ問題を原理・原則をぎりぎり守りながらどのように解決をするか(現代流に言えばTRIZ)と技術者にとってコミュニケーション力がいかに重要かを学んだ。  
 
それからしばらく経って、品質管理の研究をしたい思いが募り、大学院進学を決意した。ブランクがあって心配の種であったが、何とかクリアして入学が許された。入学後、研究テーマを模索するかたわら、指導教授のご紹介で日科技連主催の品質管理セミナー・ベーシックコースを書記として受講した。これが日科技連との縁である。  
 
コース終了後は、講師補佐として統計的方法部会、サンプリング部会などへ出席して錚々たる先生方から統計的方法と実施法の指導法についてご指導を受けた。さらに、実験計画法、信頼性工学、IE、ORなど多くのセミナーを幅広く、また厳しいご指導のなかで受講させて頂いた。日科技連のご厚意には心より感謝している。 

 
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