28.「品質管理~雑感~」<2016年09月29日>
新日本無線株式会社 CSR管理部 吉富 公彦 (99BC・T修了)
●BCとの関わり
私は、2001年の上期にBCを受講しました。99BCです。検定・推定などの統計的手法は、会社に入って一度は勉強したことになっていますが、その時は全く訳が分からず、BCで初めて統計を勉強したといってもいいでしょう。 会社に戻れば、社内講師になることが決まっていたため、自分なりに勉強したつもりですが、難易度が高く、ついていくのがやっとでした。
BCを修了するとき、班別研究会の主任講師で、私の担当講師でもあった上武大学(当時)の押村征二郎先生のお口添えがあり、ST作成委員の末席に加えて頂きました。それから、宿題作成委員、東京コースの幹事、班別研究会講師等のお役目も徐々に頂き、講義も少し担当させて頂くまでになってきています。
●日々復習
いろいろなお役目を頂いていることを書くと、本コラムをご覧になっているBC修了者の方は、そんなに簡単にお役目を頂けるの?とか、ある程度の実力があったのではと思われる方もいるかもしれません。私は、大学では統計や品質管理とは全く無縁でしたし、出来も悪かったので、地力があるとはいえません。
むしろ、地力がなかったからだと思っていますが、分からないことは、講義期間中に講師の方々によく質問しました。講師側の一員になっても、BC講師の諸先輩方に教えて頂きながら、勉強してきたように思います。そして、最近思うのは、日々復習の大切さです。
BCを修了された皆さんは、BCで学ばれた事をうまく活用されておられますか?活用する以前に、学ばれた事を忘れてしまっている方が、結構おられるのではないでしょうか。それも已むなしかと思います。講師をやっていても、結構忘れてきてしまうのです。講師をやっているのに、それはだめでしょうと叱られそうですが・・・。
忘れ防止に役立っているのがBCでのいろいろなお役目です。ST作成、宿題作成、講義。うろ覚えなところなどを調べて、「あ~、そうだった。」と、覚えなおす事はしょっちゅうです。また、調べることによって、「へぇ、こういうことだったのか。」と気付き、理解が深まる事もよくあります。理解が深まれば応用力もついてきます。
日々の業務では、教科書通りにいかないことも多々あるわけですが、理解が深まるにつれ、対応力はアップしてきます。
皆さんも、業務で活用できるなら、どんどん活用して脳へ刺激を与えて下さい。業務で使う機会がな
いとお嘆きの方は、QC検定問題を入手して、解かれてみてはいかがでしょう。結構、刺激されますよ。
●現場を知ることの大切さ
品質管理では、現場にて現物を観て、現実を正しく把握することを指して、三現主義と言っています。この事は、問題解決に当たるうえでは、非常に重要ですが、結果として軽んじられることが多くなってきているように思います。不良率の推移などは、たいがい管理されており、悪化すればすぐに原因探索が始まるでしょう。例えば、ある製品の不良の直接の原因が、使用する材料の表面酸化の悪化だとします。通常よりも、酸化の度合いが大きくなって、表面の光沢が落ちているとします。はっきり不具合だと判断される表面酸化ならともかく、微妙な見た目の違いなどは、現場で見比べなければ分かりません。更に、表面酸化の違いが、現場の作業方法の違いによって生じるならば、現場での作業者の動き方を見ないことには、真の原因に気付くことは永久にできません。こうやって文章に書くと、誰もが、「それは当たり前でしょう。」と言えるのですが、時間や手間を惜しんで結論を急ごうとすると、当事者であっても管理・監督者であっても、現場に行くのを敬遠するようです。
●人財育成
正しくは、人材育成です。広辞苑によれば、人材とは"才知ある人物"または"役に立つ人物"となっているのですが、近年の人材の意味するところは、人という、会社を運営するための"材料"になってしまったように感じています。そこで、敢えて、"人財"という造語を使いました。
最近、企業の競争力の低下を感じてきています。特にものづくりに関しては、海外に負けてもおかしくないと思っています。評論家の中には、日本はまだまだやれると、楽観論を話される方もおられます。が、果たして悠長に構えていられるのでしょうか。
日本企業がものづくりにおいて、海外に対して優位性をもつのは技術力でしょう。"技術立国日本"と自画自賛した時代もあります。ところで、その優位性を持つべき"技術"は誰が生み出すのでしょうか。それは、"ひと"です。では、その"ひと"は、どうやって生まれてくるのでしょう。某企業のように、資金力が続けば、必要な時に、必要な人数の技術者を雇ってくればよいでしょう。
しかし、日本企業の多くは、そういった形態をとらず、社員として働いている技術者の方に期待を寄せています。では、技術者の方は、いつ技術を身に着けるのでしょうか。ご本人の努力によるところも必要なのですが、技術を補完する品質管理のスキルなどは、個人頼みというわけにはなかなかいかないでしょう。最低限と思われる教育は、やはり企業主体で行わないと底上げができないでしょう。
ところが、近年の経済の低迷で、多くの企業は教育費を抑えています。教育費を抑えれば、"人財育成"には時間がかかる。"人財"が育ってこなければ、技術力は強くなってこない。技術力が強くなってこなければ、競争力は乏しい。競争力が乏しければ、利益も乏しい。利益が乏しければ、教育にお金は回せない。教育費を抑制すれば、"人財育成"には時間がかかる。 ・・・と、負のスパイラルとなってしまい、企業競争力の立て直しなど、求めようがありません。巷で話されているように、『景気が戻ってくれば・・・』という神頼みになってしまいます。
"人財育成"は、投資であるといわれています。単なる買い物とは違うので、投資したけど意味がなかったということもあり得ます。ですが、優れた"人財"が育ち、凄い技術を生み出し、投資以上の成果を生み出すこともあるわけです。投資以上の成果を生み出せるかどうかは、育成される人の頑張りもありますが、それを取り巻く人達にかかっているのではないでしょうか。取り巻く人達とは、上司や先輩、教育部門担当の方や経営層の方々です。
取り巻く人達が一体となって、"人財育成"を行うことにより、期待される"人財"が育つでしょう。そして企業競争力の復活に繋がるのだと思います。企業競争力のみならず、品質管理力も"人財育成"が鍵ではないでしょうか。その、"人財育成"活動の一つとして、BCが活用されれば、幸いです。