Mail News Archives
 検索
   
BC-News(BC講師からのメッセージ)
BC

26.「品質管理教育を再認識しよう」<2016年09月29日>

早稲田大学創造理工学部教授 棟近 雅彦 (60BC・T修了) 
 
 
 近年は,デミング賞の審査やTQM診断で,インドの企業に行くことが多くなりました.インドでは,TQMがブームになっています.それほどハイテクな製品を扱っているわけではありませんが,品質向上への意欲は非常に強いものがあり,中には日本の企業よりはレベルが高いと思える場合もあります.  
これまでの品質レベルが高くなかったことが大きな要因ではありますが,TQMで組織的改善に取り組めば,どんどん効果が出てきますので,おもしろくてしょうがない,といったところがあるのでしょう. 
 
 インドで使われる管理技術,手法は,日本でTQMに取り組んだ会社であれば当たり前のものばかりですが,彼らはどん欲に勉強します.QCストーリーなどの問題解決技術やQC七つ道具,実験計画法,多変量解析法などの統計手法を一生懸命学びます.  
 
 こういった手法は,日本では「今さら習っても」という風潮があるような気がしてなりません.確かに1990年頃までに,日本の企業はこれらに関して一通り学び,目新しさはなくなっています.しかし,これらの手法を使って解決すべき問題が減ったわけではありません.また,人はどんどん入れ替わっています.にもかかわらず,品質管理教育にかける時間は,日本の企業はどんどん減ってきていると思います.  
 
 スイスの著名なビジネススクールIMDで講義をしておられる一橋大の一條先生が,最近はIMDでは品質の話題が出ない,と話しておられました.その理由は,不要になったからではなく,当たり前のものとなっているので,品質の講座は取り立てて開講されることはないそうです.当たり前のものとして,しっかりした品質管理が行われているのであればいいのですが,果たしてそうでしょうか.繰返し教育を積み重ねていかなければ,当たり前のものでも自然におろそかになっていくものです.  
 
 BCを修了することは,大学の講義でいえば,半期8科目分を学んだことに相当します.8科目というとたいしたことはないと思われるかもしれませんが,大学で私が講義している品質管理は1科目だけです.品質管理だけで8科目というのは,相当な分量と考えていいでしょう.つまり,BCの卒業生は品質管理のプロといえるのです.プロであれば,自身で品質管理を実践することも大切ですが,社内全体の品質管理教育がいかにあるべきかにも目を向け,組織の品質管理のレベルを上げることにも責任があると思います. 
 
 TQMに一つの強みは,全員参加でした.専門家だけで活動するよりも,全員が品質の重要性を認識し,全員が改善を実践すれば,その効果は絶大です.全員参加の風土を醸成するには,品質管理教育が肝になります.私は,BC卒業生の方には,品質管理のプロとして,品質管理教育のリーダーと
しての役割を果たしていただくことを期待しています.  

 
戻る
関連記事
 
〈お問い合わせ先〉一般財団法人 日本科学技術連盟 品質経営研修センター 研修運営グループ
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南1-2-1 / TEL:03-5378-1213
Copyright © 2021 Union of Japanese Scientists and Engineers. All rights Reserved.