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商品化プロセスにおける『悪魔のサイクル』<2021年01月14日>

■ 技術情報を、抜け漏れなく効果的に活用する

開発設計プロセスにおいては、FMEAやDRBFM、品質工学等の様々の手法が活用されていますが、手法ごとに活用するための情報を整理する必要があり、効率の悪さが見受けられます。
また、対象システムの技術情報の整理にQFD(二元表)を用いる場合、担当者が自らの知見をもとに課題の抽出を行うため、抜けや漏れの可能性があったり、時間がかかったりしています。
これらの課題に対し、私は、「技術情報を、抜け漏れなく効果的に活用する」ための手法であるQFD-Advanced(QFDの進化型)を提案し、特にセミナー内でFMEA /FTAでの活用方法を学んでいただきます。



■ 商品化プロセスにおける「悪魔のサイクル」

 QFDのような手法を活用する動機にはさまざまなものがあります。
その動機の説明の例としてよく知られているのが、いわゆる「悪魔のサイクル」です。商品化プロセスにおける代表的な悪魔のサイクルを図1に示します。

         【図1 悪魔のサイクル】

 サイクルのスタートとして、図1の中央上部の、ある製品で市場クレームが多発している状態を考えるとします。当然ながら、その対策には人手が取られます。その結果として、開発や設計のリソースが不足し、開発や設計の質が低くなります。開発や設計の質が低下すると、試作した製品の信頼性が低下し、信頼性試験をすればNGの結果が頻発します。それに対して、再度開発や設計で対応するのですが、リソース不足で十分な対応ができないことが多いという状況になります。また、芳しくない試験結果のままで量産に向かうと、工程品質が不安定になります。そして、その結果として、市場クレームがさらに増加するということに繋がります。

 このような悪魔のサイクルが起こり始めると、つまり、どこかのプロセスで上記のような問題が生じ始めると、そのサイクルはどんどん太くなります。その結果、市場対策費の増大や新製品の販売不振などが起こり、利益を圧迫することになります。また、開発者、技術者も、このサイクルに対応することに追われ、本来の開発設計業務ができないという状況になります。


■ 「悪魔のサイクル」に対応するには
 
 メーカーでの製品開発や製品生産に用いる技術には、いわゆる「固有技術」以外にもう1つの種類があります。「固有技術」を生かして適切に活用するための技術です。具体的には、品質工学、FMEA、TRIZ、FTA、DRBFMなどがよく知られています。QFDも、そうした技術の1つです。それらは、対象である固有技術の種類に関係なく用いる技術であるという意味で「汎用技術」と呼ばれています。

 図1で示した悪魔のサイクルに対応するには、このサイクルのどこかのプロセス、あるいは複数のプロセスにおいて、確実な対策を行い、サイクルを細くする、あるいは断ち切ることが必要です。そのために、汎用技術であるさまざまな手法群が活用されます。悪魔のサイクルの各プロセスに対応させて、活用する手法の種類と考え方を図2に示します。


         【図2 悪魔のサイクルと活用手法の関係】

 例えば、工程品質が不安定で市場クレーム多発につながるということに対しては、市場問題発生の未然防止手法である「FMEA」や「DRBFM」を用います。発生した市場問題に早急に対応するには、問題の原因を確実に、早急に究明することが必要であり、FTAがそのための手法になります。

 悪魔のサイクルを分断するには、図2で示すように、各種の手法群(汎用技術)を適切に活用すればよいのですが、なかなか難しいのが実際のところです。その理由としては、手法群を活用する前提となる情報に課題のあることが多いと考えます。情報の不足や情報の整理が不十分ということです。

このような課題に取り組み、「
技術情報を、抜け漏れなく効果的に活用する」方法をご紹介しているセミナーが、「技術の使える化」セミナー ーFMEA/FTAに蓄積された技術情報を効果的に活用するーです。

 本セミナーで紹介する「QFD-Advanced(進化型QFD)」の考え方を用いることで、図2の中の各手法にかかわる情報を整理することができます。また、QFD-Advancedによって、単に情報を整理するだけでなく、その情報から、手法に合った、つまり、目的に合った情報を適切に抽出することができるようになります。その結果として、それらの手法を適切に活用できるようになり、悪魔のサイクルを分断できるということです。
 
 これまでのQFDによる情報の整理は“見える化”に相当します。それだけでは、図2で示す各手法群を適切に活用することができません。しかしながら、QFD-Advancedを活用することで、整理された情報から目的に合った情報を適切に抽出でき、各手法を活用できるようになります。QFD-Advancedを活用することで、技術情報の“見える化”から“使える化”が実現できるということです。


 本セミナーでは、QFD-Advanced(進化型QFD)による情報の整理方法と使い方(FMEA、FTA)について、内容の説明と事例を用いた演習を行います。セミナーを通して、QFD-Advancedに対する理解を深めてもらえると思います。

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Profile

岡 建樹 氏

1976年、現コニカミノルタ(株)(旧ミノルタ)に入社
電子写真要素技術の開発、複写機やレーザービームプリンタ、プロダクションプリンタなどの製品開発に従事。2009年より情報機器開発部門でQFDやQE等の手法を統合した開発プロセス工学(コニカミノルタの造語)の活用推進も兼務
2011年よりコニカミノルタ(株)技術顧問
2016年より(株)ISIDエンジニアリング技術顧問

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