セミナー情報・事業詳細

大会・フォーラム/シンポジウム

第11回知識構造化シンポジウム レポート
  • 開催レポート

多様化するSSM実践 未然防止知識の進化を探る

 

SSM (Stress-Strength Model)について詳しく知りたい方は、以下のWebサイトをご参照ください。

▶ (株)構造化知識研究所

1. はじめに

第11回知識構造化シンポジウムが、2019年9月6日(金)に東京証券会館(東京・日本橋)にて開催された。SSMに関心をもつ幅広い業種から約180名の参加者が集まり、大盛況であった。
今年のシンポジウムは、設計業務だけでなく、試験・評価、製造など様々な業務においてSSM知識を活用し、品質向上やノウハウ伝承に役立てているSSM実践各社の工夫やその取組みについて講演や議論がなされた。

 

注)
SSM(Stress Strength Model)とは、トラブルに関する経験やノウハウを活用しトラブル未然防止ができるように、知識を構造的に整理・表現する手法である。
時間 内容/講演者(敬称略)
13:30~13:40 オリエンテーション
13:40~15:40 事例講演1:「空調機の設計および試験部門におけるSSMを活用した不具合未然防止と業務効率化」
江口 剛(三菱重工サーマルシステムズ(株) 空調機技術部 技術管理課 主席チーム統括)
服部 貴之(三菱重工サーマルシステムズ(株) 商品企画Gr 主席技師)

事例講演2:「ワークに優しい包装機技術のSSMによる伝承と社員育成」
有門 一雄((株)京都製作所 技術開発本部 課長)

事例講演3:「SSMによる知識データベースを活用した音振動の原因調査・未然防止の取り組み」
水野 浩樹(日本精工(株)ステアリング&アクチュエータ技術センター
      ステアリングR&Dセンター音振動技術室 室長)
中島 泰裕(日本精工(株)ステアリング&アクチュエータ技術センター
      ステアリングR&Dセンター音振動技術室 副主務)
15:40~16:10 特別解説
「SSM導入・定着の進め方と知識マネジメントの最新動向
長谷川 充 ((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)
16:10~16:50 総合討論
 全講演者
 コーディネータ: 田村 泰彦 ((株)構造化知識研究所 代表取締役)
16:50~17:00 まとめ

 

3. 講演要旨

〔事例講演1〕空調機の設計および試験部門におけるSSMを活用した不具合未然防止と業務効率化

江口 剛(三菱重工サーマルシステムズ(株) 空調機技術部 技術管理課 主席チーム統括)
服部 貴之(三菱重工サーマルシステムズ(株) 商品企画Gr 主席技師)

 

同社は、冷熱製品、カーエアコンおよびその関連製品の設計・製造を行っている。本講演では、空調機の試験部門におけるSSM知識を用いた試験条件検討の効率化の取り組みと、SSM知識を設計部門とも共有し、不具合未然防止活動に繋げている取り組みについて紹介された。

同社では、設計や試験検討時に過去不具合情報を検索し、検索結果をFMEAや品質チェックシートなどに反映して品質チェックを行う仕組みがあるが、検索性や登録内容の整理が不十分などの問題で、情報を十分に活用が出来ていないという問題があった。そのため、登録情報を見直し、再利用性を高めた良質な知見に置き換えて、設計部門や試験部門において、それぞれの業務で品質チェックを効率的に行う事ができるように、SSMの導入を決定した。

導入当初は、機種横断的な判断を行いやすい技術管理や試験の部門のメンバーが中心となり、過去不具合情報に含まれる教訓をSSM知識に置き換えた。SSM知識を作成する際には、不具合メカニズムに関連する試験キーワードの紐付けも合わせて実施した。また、不具合情報以外に、開発試験時の報告書や、設計アイテムごとに試験スペック情報なども知識登録して、一元的に情報を集約した。これらにより、設計変更するアイテムで実施が必要な試験項目の効率的な抽出と、それぞれの試験に関する試験スペックや、当該試験に関する過去の不具合情報を一覧できるようになり、試験条件を効率よく検討できるようになった。さらに、ある機能品の試験スペックそのものを見直したい場合は、従来の試験スペック、他の機能品の試験スペック、当該試験における過去の不具合情報を一覧できるようにして、効率よく試験スペックの検討が行えるようになった。その他にも、市場や試験で発生する音振動事象の原因分析を効率よく行う仕組みも用意した。このように、過去不具合情報のSSM知識への置き換えと合わせて、試験部門における品質チェックの効率化を実現した。 

さらに、試験部門で作成した知識を設計部門でも活用するため、設計検討時の推奨事項など設計検討時に役立つ情報を追記した。その他にも、CAE等による解析で得た知見を知識化し、解析で可視化した物理現象をイメージ図で参照できるようにして、設計者が理解しやすいようにした。このように、試験部門での知識活用に留まらず、設計部門でも設計検討時に効率的に知識活用できる仕組みを構築し、組織全体の未然防止力を強化した。
今後も技術者の論理的思考力の向上を目指し、若手技術者のSSM知識のスキル習得と、設計部門での知識活用強化を進め、再発防止・未然防止活動を組織に根付かせていく。

 

〔事例講演2〕ワークに優しい包装機技術のSSMによる伝承と社員育成

有門 一雄((株)京都製作所 技術開発本部 課長)

同社は、食品・洗剤・化粧品・医薬品・電子部品などの顧客の製品を包装梱包する機械を主に受注生産している。本講演では、第8回シンポジウム(2016年)での報告の続報として、SSMのDRでの活用や、SSMの技術者教育ならびに製造・サービス部門を対象としたSSM知識運用
に向けた取り組みについて紹介された。

同社では、短期間で設計・製造する生産体制に対して、いかに新規図面を減らして流用設計するか、流用図面とワーク(顧客の製品)の組合せによる問題点をいかに設計時に盛り込めるか等の課題があった。これらの課題に対して、発生したトラブルをまとめたトラブル対応報告書をSSM知識化し、再発防止活動を強化している。

トラブル対応報告書は、SSMの構造による整理方法を踏まえた形式でトラブルのメカニズムを記述する。そのため、トラブルの真の要因が明確となり、「すぐできる対策」と「再発防止策」をそれぞれ検討できる。また図を併用し、内容を一目で容易に理解できるよう工夫している。また技術者がトラブル対応報告書を論理的に作成し、「論理的に考える技術者」になるように、SSMの教育を継続的に行っている。さらに同社では、SSMを活用してDRで検討すべき内容を自動的に出力し、設計者が事前検討した上でDRにおいて議論を進める仕組みを構築し、DRの質向上と議事録作成の工数削減を実現している。これらのSSMの教育やDRでの活用の成果もあって、2015年度(SSMリリース年)と比較して2018年度の予算順守率(どれだけ受注時の予算を守れたかを示す指標)は20%程度向上した。

同社では、このような設計者のためのSSMとして取り組みを進めてきたが、更に発展させ、顧客と直接関わる製造・サービス部門への展開に取り組んでいる。市場トラブルの中で、ワーク起因のトラブルは顧客現場でないと再現できず、トラブルを把握するのが困難な場合が多い。またこのようなトラブルは顧客製品の生産と品質に重大な影響を与えるため、リアルタイムな情報による間違いのない対策が必要となる。そこで現在は、未然防止のためのSSMによる製造チェックリストだけでなく、現場のリアルなトラブル情報を登録・収集してスムーズにSSM知識化し、顧客現場トラブル発生時の診断に役立てる「トラブル報告・診断機能」の仕組みづくりを行っている。

このような仕組みをSSMで実現することで、トラブル発生からトラブル報告書作成、再利用性の高い知識整理を通じ、トラブル発生時の診断の質を向上させるとともに、適切な設計改善、再発防止設計ルール化まで確立することができる。今後も同社では、SSMを使った設計完成度向上活動を通じ、メカニズムを正しく分節化できるエンジニアの育成を進め、「品質向上」「人質向上」を目指していく。

 

〔事例講演3〕SSMによる知識データベースを活用した音振動の原因調査・未然防止の取り組み

水野 浩樹(日本精工(株) ステアリング&アクチュエータ技術センター
      ステアリングR&Dセンター音振動技術室 室長)
中島 泰裕(日本精工(株) ステアリング&アクチュエータ技術センター
      ステアリングR&Dセンター音振動技術室 副主務)

 

同社は、産業機械等で使用されるベアリングや自動車部品であるステアリングの設計・製造を行っている。
本講演では、ステアリングシステムで発生する音振動問題に対して、SSMによる迅速な対応を行うための調査の効率化および設計段階での未然防止活動の取り組みについて紹介された。

昨今、自動車のさらなる静粛化への要求に応じて、車両の音振動評価が厳格化されてきている。ステアリングシステムに対しても過酷な振動入力に対して高いレベルの静粛性が要求され、その結果、多岐に渡る音振動問題が顕在化してきている。
同社では、この音振動問題に対して、発生時から効率的な調査と迅速な対応を実現すること、および設計段階での未然防止の実現を目的とし、過去トラブル情報から得られた知識を有効活用するためにSSMの導入に至った。
同社では音振動技術室がSSM知識構築を担当している。過去トラブル情報からSSM知識を作成する際、専門知識等は設計部署などからヒアリングし、メカニズムを明らかにして知識化を進めている。また、音振動問題の現象や原因が多岐に渡るため、戦略的な知識化の枠組みと検索の仕組みを構築する必要があった。
そこで発生状況と現象の特徴で分類すると、主要な事象が全体の7割であることが判明したため、それらを優先的に知識化し、効果的なデータベースの早期構築を目指した。また、具体的な進め方として、因果関係が紐づいた音振動事象のメカニズムを明らかにするため、まず音振動の基本メカニズムを表す具体的なSSM知識構造を構築した。この構造に沿って音振動の各事象の発生メカニズムを具体的に整理し、構造化知識ベースを整備した。
同社では、このSSM知識をFT図へ展開し音振動問題発生時の調査に活用している。調査時には、音振動の発生状況や現象等から、発生した問題に対する要因候補の絞り込みを可能としている。また、各要因に対する検証方法が帳票上でそれぞれ明示されており、担当者がすぐに検証できる仕組みを実現している。さらに、過去に実施したFTAからのSSM知識化も行い、未経験の想定メカニズムの要因を含むように網羅性を高めている。
また、未然防止の実現に向けて、「設計変更部位」と「技術要素」の検索入口を用意し、その部位の設計要因により、発生し得る音振動問題や設計上の留意点を確認する仕組みを用意した。設計検討段階で、このような知識を活用し未然防止の実現を図っていく。

今後は、新たに発生した音振動問題に対して、構築したデータベースを利用して原因調査し、新たな情報を知識化し、更にデータベースを拡充して原因調査に利用するというサイクルを定着させ、継続的な知識拡充を実現させていく。
また海外事業所へ展開し、グローバルなSSM知識活用を進める。

 

〔特別解説〕SSM導入・定着の進め方と知識マネジメントの最新動向

長谷川 充氏((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)

 

SSMは、電機・電子部品、自動車・輸送用機器、精密機器、産業機械・プラント設備、住宅設備、素材等々、様々な分野への拡大が見られる。
技術分野では機構・電気のほか、ソフトウエア、生産技術、メンテナンスなどの領域でも取組みが進められている。
SSM活動の導入・継続におけるポイントとして、適切なチームの人選をすること、品質、安全性に対する現行業務の課題と知識マネジメントとの関連性を整理し、活動の目標を明確にすること、現行業務の課題をふまえた事例選定や知識作成を進めること、はじめは部署や技術分野をある程度絞ってトライアル評価を行うこと、導入目的や利用方法を伝える社内説明を実施すること、継続的な知識運用のための知識管理体制の構築および組織全体が連携した取組みとすることなどが挙げられる。
SSM 導入各社は、業務ニーズに応じて知識運用のための様々な工夫を施している。設計変更点からの不具合の気づき、使用条件・環境の変化点から影響を受けるアイテムと不具合の気づき、不具合事象発生時に類似アイテムの過去事象とメカニズムを容易に抽出する仕組みなど、様々な知識検索の仕掛けを施している。また、製品設計と生産技術などの複数部署間で知識活用するための工夫、FMEA実施結果を不具合情報とともに次回FMEA実施時に活用する仕組み、トラブル原因分析時の教訓整理を円滑に行うための仕組みなども進められている。SSMはトラブル対応から未然防止・再発防止の徹底まで様々な活動を支援することができるように日々発展している。

今後SSM導入を検討される方々には、紹介された内容をぜひご活用して頂きたい。

 

4. 総合討論

(株)構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏がコーディネータとなり、講演者とシンポジウム参加者との間で総合討論が行われた。講演各社の SSM 導入・展開における施策の工夫や効果指標の設定、知識作成のスキル取得や維持のため取り組み、現行業務へSSMシステムを組み込む方法など、終了時間まで盛んな議論が行われた。

 

 

5. おわりに

今回のシンポジウムも会場は活気にあふれ、SSM への関心の高さが伺えた。プログラム終了後も、大勢の参加者が講演者と活発な議論を交わしていた。 
今回の講演では、SSMを活用した設計での再発防止・未然防止活動のほか、試験業務やトラブルシューティングでのSSM知識活用や、SSM導入・定着のための工夫,SSMによる技術者教育など様々なテーマが紹介された。未然防止、再発防止活動で苦労されている方々や、SSM の導入、今後の発展を検討している方々にとって、本シンポジウムはとても参考になったであろう。

 

(文責:内田 一寛)

 

関連セミナーのご案内

本シンポジウムの主題である『知識の構造化』『SSM(Stress-Strength Model:ストレス・ストレングス・モデル)』を深くご理解いただくセミナーとして、「設計開発における不具合未然防止のための知識活用セミナー」を2020年2月6日(木)~7日(金)の2日間で開催いたします。本セミナーでは、"知識の整理方法・効果的な活用方法"を、演習やケーススタディを通じて習得できます。未然防止活動を進める上で、技術者の能力向上の一環として、本セミナーの活用をおすすめします!

「設計開発における不具合未然防止のための知識活用セミナー」

セミナーの詳細、お申込はこちらから

関連リンク

セミナーサイトユーザーログイン

ID
パスワード

次回から自動的にログインする

ID、パスワードを忘れた方はこちら

新規会員登録はこちら

QCサークル大会

セミナー検索

  • 各種メールマガジン登録
  • ISO審査登録センター
  • 大阪事務所ホームページ
  • JUSE-エグゼクティブセミナー
  • デミング賞
  • 日本品質奨励賞
  • 企業の品質経営度調査
  • 品質経営懇話会
  • QCサークル
  • QCサークル
  • 品質管理シンポジウム(QCS)
  • クオリティフォーラム 2017
  • ソフトウェア品質委員会
  • マネジメント監査員検定
  • QCサークル本部登録
  • 品質月間
  • 人間石川馨と品質管理
  • StatWorks
  • メールニュースアーカイブ
  • 日経テクノロジーONLINE 『品質の明日』コラム掲載中