セミナー情報・事業詳細

大会・フォーラム/シンポジウム

第9回知識構造化シンポジウム レポート
  • 開催レポート

未然防止力を高めるSSM知識の体系化と設計への活用

 

*SSM (Stress-Strength Model)について詳しく知りたい方は、以下のウェブサイトをご参照ください。

(株)構造化知識研究所

1. はじめに

第9回知識構造化シンポジウムが、2017年9月8日(金)に東京証券会館(東京・日本橋)にて開催された。SSMに関心をもつ幅広い業種から約200名の参加者が集まり、大盛況であった。今年のシンポジウムは、SSM知識をFMEAなどの手法と組み合わせて不具合防止に取組むSSM実践各社の知識運用の工夫や取組みについて講演や議論がなされた。

注)
SSM(Stress Strength Model)とは、トラブルに関する経験やノウハウを活用しトラブル未然防止ができるように、知識を構造的に整理・表現する手法である。
時間 内容/講演者(敬称略)
13:30~13:40 オリエンテーション
13:40~15:25 事例講演1
「SSM活用によるインテグラル型(擦り合わせ型)製品開発の課題解決
吉田 健((株)リコー オフィスプリンティング開発本部 EP開発センター)
松代 博之((株)リコー オフィスプリンティング開発本部 EP開発センター)

事例講演2
「水まわり機器におけるSSMを活用した設計不具合未然防止活動の推進
中山 圭太(TOTO(株) 機器水栓事業部 水栓商品統括部)
清水 正夫(TOTO(株) 機器水栓事業部 水栓商品統括部)

事例講演3
「部門を横断した組織的なSSM活動の実践と今後の展開
吉田 晶((株)ノーリツ 品質保証推進本部 品質保証部 品質企画グループ QMSチームリーダー)
15:25~15:40 休憩
15:40~16:10 特別解説
「構造化知識マネジメント導入のポイントと実践各社の様々な知識活用
長谷川 充 ((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)
16:10~16:50 総合討論
 全講演者
 コーディネータ: 田村 泰彦 ((株)構造化知識研究所 代表取締役)
16:50~17:00 まとめ

 

3. 講演要旨

〔事例講演1〕SSM活用によるインテグラル型(擦り合わせ型)製品開発の課題解決

吉田 健氏((株)リコー オフィスプリンティング開発本部 EP 開発センター)
松代 博之氏((株)リコー オフィスプリンティング開発本部 EP 開発センター)

 

同社が開発を行っている複写機・プリンターの画像形成部では、高機能化したモジュールの組み合わせで発生する不具合を試作前に抽出し解決しておくことが重要である。本講演では、SSM を活用してこのような課題を解決する仕組みについて紹介された。

同社では、モジュール(機能部品)単位での開発を行うことで流用設計を増やし試作数を減らすことで開発期間の短縮を図っている。モジュール単位で開発した高機能モジュールがシステムに組み込まれた際、部品・機能間の交互作用が大きく、予期しない不具合の原因となることがある。そのため、開発の上流工程で不具合予測を行う際には、ある部品や機能の交互作用を踏まえて、発生する可能性のある不具合を過去の再発防止事例から効率よく漏れなく絞りこむシステム構築が必要となり、SSMの導入に至った。

活動にあたり、SSM活動全体の企画や推進を行うSSM推進部会および不足知識の抽出や知識作成を担うSSMワーキンググループを編成した。さらに、SSM推進部会およびSSMワーキンググループからメンバーが参加し、新規・既存SSM知識の確認・見直しやSSM運用面の改善を検討する場としてSSM委員会を設け、関係者が連携して活動を進める体制を構築した。

知識の活用面では、設計アイテムの変更により検討すべき不具合の知識を、不具合検討箇所と設計変更部位によるAND検索や、条件・環境によるAND検索での絞込みにより、容易に抽出できるようにした。また、SSMの因果連鎖を利用して、部品・機能間の交互作用を踏まえて検討すべき影響メカニズムを的確に抽出できるようにした。

さらに、現場の設計者がFMEAを効率的に実施できるように、重要度を影響度、頻度、回避難易度から適切に評価する仕組みを用意した。また、着目アイテムに関する知識を起点にSSMの因果連鎖を利用した不具合の影響メカニズムを出力帳票上に表示することで、予め断つべき因果の連鎖を容易に確認できるよう工夫した。

次に、新規機種テーマにおいてFMEAを実施し、活動の有効性を評価した。その結果、機種テーマで未対応だった知識が抽出された。作成した知識およびその活用の仕組みが、部品・機能間の交互作用を踏まえて、効率よく抜け漏れのないFMEAを実施するために有効であることが明らかとなった。

以上のような取組みにより、開発の上流からSSMを活用することで、FMEAを有効に実施・運用できるようになっている。今後も機種テーマでの活用例を増やしながら、更なる設計品質の改善に努めていく。

 

 

 

〔事例講演2〕水まわり機器におけるSSMを活用した設計不具合未然防止活動の推進

中山 圭太氏(TOTO(株) 機器水栓事業部 水栓商品統括部)
清水 正夫氏(TOTO(株) 機器水栓事業部 水栓商品統括部)

同社は、水栓金具および水まわり周辺機器の製品開発においてSSMを活用している。本講演では、SSMによる再発防止活動の運用・推進における様々な取組みや、未然防止活動へレベルアップするための仕組みづくりについて紹介された。

同社では、各事業部で保有している市場クレーム情報・不具合情報や全社共有の設計ノウハウ情報を活用し、再発防止を進める仕組みがある一方、それらの情報の活用が十分ではないという課題があった。この課題を解決し、再発防止力を強化するとともに、技術者へ設計ノウハウを継承する仕組みとして、SSMの導入を決定した。

活動当初は、事業部内の水栓商品群に対象を絞り、若手技術者とベテラン技術者の合同チームで、SSMシステムを早期に立ち上げた。さらに、事業部内の各商品群においてキーマン(SSM知識管理者)を設定し、教育を行いながら事業部において水平展開を進めた。

知識運用上の工夫としては、技術者の業務目的に応じて、新商品開発向け、改良設計向けの検索の入口を用意した。また、技術要素や材料に関する検索の入口を共通化し、ある商品群で発生した不具合の情報も、事業部内の他商品群で再利用できる仕組みを構築した。さらに、市場不具合だけでなく、開発プロセスの中で得た設計ノウハウ(試作時の不具合、新規設計における知見など)についてもSSM知識として登録し、次の開発テーマで有効活用する仕組みを構築・ルール化した。このような取組みの結果、利用者の経験年数に関わらず新たな気付きを得られ、再発防止や手戻り削減に資することが分かった。また、知識運用の工夫により、従来手法よりも設計ノウハウを確認する負荷が50%~75%程度軽減されて、スムーズにノウハウ伝承を支援できるようになった。

知識運用を通じて技術者教育も進めている。SSM知識の元情報となる「設計ノウハウ情報」のフォームを事業部で統一し、部門毎に管理されていた情報を整理するとともに、SSMの因果連鎖を意識して不具合発生メカニズムを整理する欄を用意し、技術者の論理的スキルの向上を図っている。さらに技術者は、キーマンと定期的にSSM知識を作成することでSSMの考え方だけでなく、不具合事例を通じてメカニズムの深掘りや、本来行うべき歯止め(再発防止)を学んでいる。

今後は、SSMで整理した設計知識のうち、必ず遵守すべき内容については規格・基準として整備し、再発防止活動の強化を進める。また、FMEAの実施結果をSSM知識として登録し、次の開発テーマで有効活用する仕組みづくりを進めており、未然防止活動へのレベルアップを目指している。

このような活動も含め、継続的な知識蓄積と開発プロセスの中での知識活用を通じて、さらなる再発防止・未然防止活動の強化を進めてゆく。

 

〔事例講演3〕部門を横断した組織的なSSM活動の実践と今後の展開

吉田 晶氏((株)ノーリツ 品質保証推進本部 品質保証部 品質企画グループ QMSチームリーダー)

 

同社は、給湯器等の温水空調分野やシステムバス等の住設システム分野など、様々な分野において、設計・製造を行っている。本講演では、SSMの再発防止・未然防止への活用、組織的な推進の取組み、導入による効果などについて紹介された。
 
SSM導入は、温水空調分野の製品設計から始め、その後、他の分野に拡大して取組んでいる。対象分野が広がる中、同社では「固有コア技術の深掘り」と「製品固有知識の一般化による共有知識化」という2つの異なるアプローチで知識を作成している。「固有コア技術の深掘り」では、原因追及を徹底して技術知識を強化し、また、「製品固有知識の一般化による共有知識化」では、知識の一般化を進め、製品分野を超えての再利用を図っている。
 
こうした活動拡大の過程において、グループ会社(厨房分野)もSSMを導入し、グループ会社間で知識を共有、活用している。グループ会社同士では、それぞれの推進リーダーが定期的にミーティングを持ち、各会社の過去トラブル知識・再発防止知識のうち、一般化されているものをもう一方の会社が取り込み、未然防止知識として活用している。
 
これまでに、過去トラブルによる再発防止知識の構築はほぼ完了し、加えて一般知識・未然防止知識が整備されている。これらは、製品固有知識、固有コア技術知識、およびそれらの共有知識に分類される。新製品開発にあたっては、こうした知識を特に効果の出しやすい構想設計と基本設計の段階に重点を置き、FMEAやDRBFMで活用している。
 
SSMの導入後は、設計変更数と外部失敗コストが共に顕著に低減するという効果を挙げている。具体的に、SSMの適用前後で新製品開発プロジェクトを比較・分析すると、組立性の問題や設計ミス等は大きく減っている。特に、知識を活用したが防げなかったものや、知識があるが検索されなかったために発生したものはなく、再発問題を減らすことができた。
 
一方、知識がないために不具合が発生するケースが残っており、今後は発生した問題(トラブル事例)を知識化するだけでなく、経験のあるノウハウ事例についてノウハウ事例報告書を作成し知識化することで、「手戻ゼロ」を目指していく。
 
継続的な知識の整理や業務への活用徹底のため、推進体制も強化している。推進メンバーのスキル向上に応じて役割を明確にし、活用・定着をサポートする体制を組んでいる。
 
これまでの取組みの結果、質の高い知識の共有と活用により、開発初期で課題を明確にできるようになり、また、知識の活用を通じて技術者の論理的思考が強化された。
 
今後は、FTAによる製品安全への取組みや、工程FMEAへの活用を図っていく。

 

〔特別解説〕構造化知識マネジメント導入のポイントと実践各社の様々な知識活用

長谷川 充氏((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)

 

SSMを導入している企業は、自動車・自動車部品や電機・電子部品、精密機器等の業種はもとより、産業機械、住宅設備、素材等、様々な分野に広がっている。技術分野では機械や電気の他、ソフトウェアや生産技術などの領域でも取組みが進められている。
 
スムーズなSSM導入・定着に向けたポイントとして、適切なチームの人選をすること、現行業務の課題をふまえて事例の選定や知識の作成を行うこと、実際にトライアルを行い課題解決につながっているか評価し適宜改善を試みること、導入目的や利用方法を理解してもらうための社内説明の実施、継続的な知識運用のための知識管理体制づくりなどが挙げられる。また、知識作成の担当者のみが活動を進めるのではなく、設計者やマネジメント層も含んだ組織的な推進と各層間の連携が非常に重要となる。
 
SSM導入各社は、業務ニーズに応じて知識活用のための様々な工夫を施している。設計変更点からの不具合の気づき、使用条件・環境の変化点から影響を受けるアイテムと不具合の気づき、あるアイテムで不具合事象が発生した時に類似アイテムで経験した不具合発生メカニズムを容易に抽出する仕組みなど、様々な知識検索の仕掛けを施している。また、製品設計と生産技術などの複数部署間で知識活用するための工夫、過去の類似機種に関する設計対策内容を次の類似機種開発時に活用し設計の質を向上させる仕組み、トラブルが起きた現場でのトラブルシューティングに役立てる仕組みなど、さまざまな知識活用の工夫を進めている。
 
今後SSM導入を検討される方々には、紹介された内容をぜひ活用して頂きたい。

 

4. 総合討論

(株)構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏がコーディネータとなり、講演者とシンポジウム参加者との間で総合討論が行われた。講演各社のSSM導入・展開に当たっての工夫、文書として残されていないノウハウの知識化やソフトウェアの知識整理・活用などについて、終了時間まで盛んな議論が行われた。

 

5. おわりに

今回のシンポジウムも会場は活気にあふれ、SSMへの関心の高さが伺えた。プログラム終了後も、大勢の参加者が講演者と活発な議論を交わしていた。
 
今回の講演では、開発期間の短縮や手戻り防止を目的として不具合知識の共有・活用に向けた各社の多彩な工夫や取組みが紹介された。未然防止、再発防止活動で苦労されている方々や、SSMの導入を検討している方々にとって、本シンポジウムはとても参考になったであろう。

 

 

(文責:西村 悠)

関連セミナーのご案内

本シンポジウムの主題である『知識の構造化』『SSM(Stress-Strength Model:ストレス・ストレングス・モデル)』を深くご理解いただくセミナーとして、「設計開発における不具合未然防止のための知識活用セミナー」を2018年2月8日(木)~9日(金)の2日間で開催いたします。本セミナーでは、"知識の整理方法・効果的な活用方法"を、演習やケーススタディを通じて習得できます。未然防止活動を進める上で、技術者の能力向上の一環として、本セミナーの活用をおすすめします!

「設計開発における不具合未然防止のための知識活用セミナー」

セミナーの詳細、お申込はこちらから

関連リンク

セミナーサイトユーザーログイン

ID
パスワード

次回から自動的にログインする

パスワードを忘れた方はこちら

新規会員登録はこちら

QCサークル大会

セミナー検索

  • 各種メールマガジン登録
  • ISO審査登録センター
  • 大阪事務所ホームページ
  • デミング賞
  • 日本品質奨励賞
  • 企業の品質経営度調査
  • 品質経営懇話会
  • QCサークル
  • 教育/セミナー総合ガイド
  • 品質管理シンポジウム(QCS)
  • クオリティフォーラム 2017
  • ソフトウェア品質委員会
  • マネジメント監査員検定
  • QCサークル本部登録
  • 品質月間
  • 人間石川馨と品質管理
  • StatWorks
  • メールニュースアーカイブ
  • 日経テクノロジーONLINE 『品質の明日』コラム掲載中