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第8回知識構造化シンポジウム レポート
  • 開催レポート

不具合知識の価値を高めるSSM実践各社の多彩な取組み

 

*SSM (Stress-Strength Model)について詳しく知りたい方は、以下のウェブサイトをご参照ください。

(株)構造化知識研究所

1. はじめに

第8回知識構造化シンポジウムが、2016年9月9日(金)に東京証券会館(東京・日本橋)にて開催された。SSMに関心をもつ幅広い業種から約190名の参加者が集まり、大盛況であった。今年のシンポジウムでは、SSMにより価値を高めた知識を様々な部門や技術分野で有効に活用しているSSM実践各社の工夫や取組みについて講演や議論がなされた。

注)
SSM(Stress Strength Model)とは、トラブルに関する経験やノウハウを活用しトラブル未然防止ができるように、知識を構造的に整理・表現する手法である。
時間 内容/講演者(敬称略)
13:30~13:40 オリエンテーション
13:40~15:40 事例講演1
「不具合未然防止のためのSSMを用いた車一台分の知識活用環境構築」
菊島 勲夫((株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター TAC)
小日山 信人((株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター TAC)

事例講演2
「変化するワーク物性に対応する包装機械におけるSSMを活用した設計DRと技術者育成」
有門 一雄((株)京都製作所 技術開発本部 課長)

事例講演3
「技術分野を横断した知識共有による少人数開発プロジェクトにおける再発防止力の向上」
小野 圭(理研計器(株) 開発生産本部 技術部 上級主任技師)
15:40~16:10 特別解説
「SSM導入企業の最新動向と効果的な知識運用の取り組み」
長谷川 充 ((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)
16:10~16:50 総合討論
 全講演者
 コーディネータ: 田村 泰彦 ((株)構造化知識研究所 代表取締役)
16:50~17:00 まとめ

 

3. 講演要旨

〔事例講演1〕不具合未然防止のためのSSMを用いた車一台分の知識活用環境構築

菊島 勲夫氏((株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター TAC)
小日山信人氏((株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター TAC)

 

本講演では、不具合未然防止を促すための知識蓄積の仕組み、知識を活用し易くするための工夫、海外拠点との知識共有などのSSM活動が紹介された。
これまで過去の不具合に関する設計知識はノウハウ集やチェックリストなどの形で大量に存在する一方、主に自部門のみで整理・活用され、他部門・他領域での活用は限られていた。他部門・他領域での知識を有効活用するために車一台分の情報を体系的に分類できるシステム構築が必要となり、SSMの導入に至った。
 
活動当初は、品質企画部門が担当して知識を作成してきたが、継続してノウハウを蓄積する仕組みを作るため、その後、開発室が知識を作成し、TAC(市場品質不具合の原因調査・解析・対策を推進し、その結果を開発部門/生産部門にフィードバックする部門)が知識のチェックを行う体制を構築した。TACによる知識のチェック後は、知識確認会(知識の再利用性を確認する)、知識語句関連付け整合会(知識を自分の室、他室で活用できるように知識検索支援辞書を更新する)を進めている。また、開発室の知識作成者が初心者であってもスムーズに取り組めるように、SSM講座やSSM知識作成説明会を開催し、またSSMmasterの操作説明会も行っている。

さらに、知識ベースを現場の設計者が使いやすくするために、様々な工夫を行った。まず、事象と部品名によるAND条件での絞り込み検索である。不具合事象から、それに関係する部品の知識を提示し、当該部品の事象発生メカニズムを解析できるようにした。次に、変化点検証支援(DRBFM)では、部品や技術要素の変更点、使用条件等の変化点からの知識検索を行う仕組みを構築した。また、重要機能欠陥解析支援(FTA)における工夫を進めた。「走る」「曲がる」「止まる」など、自動車の重要機能のトップ事象に至るメカニズムを解析する仕組みを設けることで、重要機能欠陥を防ぐために押さえておくべき部品仕様を容易に抽出できるようにした。

さらに、SSM知識を国内での活用に留めず、海外拠点でも共有するため、既存の日本語の知識ベースと同様の構成で、英訳版の知識ベースを構築した。知識IDは日本語・英語の対比が容易に把握できるよう、番号を同一にし、英語ユーザ向けの解析入口も作成した。知識の英語化における課題として、多人数での英訳による語句の揺らぎがあったが、定義属性で使用する語句の統一を実施することで対応を行った。

以上のような取組みにより、開発の様々な状況で自部門、他部門のSSM知識を活用し、設計品質向上に繋げている。

今後も定期的な啓発活動を実施し、開発室に知識管理者と呼ばれるような人材を育成し、知識蓄積数を増やしながら、更なる設計品質の向上に努めていく。

 

 

〔事例講演2〕変化するワーク物性に対応する包装機械におけるSSMを活用した設計DRと技術者育成

有門 一雄氏((株)京都製作所 技術開発本部 課長)

同社は、食品・医薬品など、顧客の製品を包装梱包する機械を主に受注生産している。本講演では、特定機種や設計者個人での再利用に留まっていたトラブル知識をSSMで一般化し、扱う製品(ワーク)の物性をリスク発見の検索キーにして設計DRで活用する取組みが紹介された。また、SSMの取組みを活用して進めている設計者の論理的スキル向上のための教育活動も報告された。

これまでトラブル報告書の蓄積を実施してきたが、真の要因が明確になっていないものもあり、知識としての再利用が十分でなかった。膨大な量のトラブル報告書が宝の山として眠っており、これらの文書を有効活用するためSSMの導入に至った。

SSMによる知識化を始める前に、まずは過去のトラブル報告書をBA(Before After)チャートでまとめる作業を行った。この際、トラブルのメカニズムをSSMの三組構造の因果連鎖を活用して整理し、真の技術要因を明確に記述した。加えて、図解により直感的にメカニズムを理解しやすいようにした。このように整備されたBAチャートをベースにすることで、質の高いSSM知識をスムーズに作成することができた。一方で、トラブル報告書も新しいフォームを用意して、因果連鎖を明確に記述することを徹底し、対策を急ぐ対処療法的対策と再発防止の可能な抜本対策を区別して記述するようにした。

知識の活用面では、扱う製品(ワーク)の物性をストレス要因として取り上げ、設計アイテム(定義属性)とストレスのAND条件で絞り込む検索の仕組みを用意し、ワーク物性に関わるリスク抽出ができるようにした。また、DR議事録フォームへあらかじめ知識を反映し、DRで検討する仕組みを用意し、熟練者からの指摘のみならず、設計者によるセルフDRの強化を行った。これらの工夫を実施してDRでの知識活用を進め、DRによる効果指標として、DR遵守率や予算遵守率などの調査を行い、SSMを活用したDRの効果が確認された。

DRでSSMをうまく活用するために、マニュアルの作成や勉強会の実施を進めている。また設計者向けに座学や演習によるSSMの教育を継続的に行っている。本教育を通じて、技術的なメカニズムを論理的に説明する能力、文章を正しく丁寧に書く能力を設計者に身に付けさせている。
今後もSSMを用いた設計完成度向上活動を通じ、メカニズムを正しく整理できるエンジニアの育成を進め、“品質向上”のみならず“人質向上”を目指していく。

 

 

〔事例講演3〕技術分野を横断した知識共有による少人数開発プロジェクトにおける再発防止力の向上

小野 圭氏(理研計器(株) 開発生産本部 技術部 上級主任技師)

 

同社は、産業用のガス検知警報器を開発している。本講演では、機構・電気・ソフト・生産技術の各部門が一体となってSSMを導入し、不具合防止に取り組んだ活動内容が紹介された。

これまで、不具合事例集を基に不具合防止活動を進めてきたが、事例の蓄積が進むにつれて、必要な知識の検索や活用が難しくなってきた。また、少人数開発プロジェクトにおいて、経験の少ない若手設計者が部門の代表となることや、部門間で調整すべき問題点を共有できず部門間の壁を感じる事が課題としてあった。そこで、これらの課題に対する解決策としてSSMの導入を進めた。

活動当初は、開発生産本部の技術部における機構設計・電気設計の2部門で知識の作成を開始した。その後、生産技術・ソフト設計部門も加わり、技術部全体で活動を行うことになった。活動メンバの選定について、幅広い世代で活用できる知識を作成するため、各部門から若手・中堅・ベテランの3名を選出した。知識を作成する際は、必ず全部門のメンバで集まって議論を行い、他部門の事例であっても、自部門に関係する知識を残せるかどうかチェックするようにした。

また知識活用の工夫として、特筆すべき3つのポイントが紹介された。まず、「知識活用したい技術部門」の定義属性を知識に漏れなく記述している点である。これにより、ある特定の部門で作成した知識であっても、他部門の設計者が検索・活用できるようになった。次に、知識分節に「型式」のキーワードを埋め込む点である。この工夫により、過去機種や類似機種の知識分節をまとめて検索が可能であり、若手設計者が中堅やベテラン設計者に過去の型式で起きた不具合についてヒアリングする工数を省略することができるようになった。最後に、防爆設計に役立つ知識に「防爆設計」に関係するキーワードを埋め込んでいる点である。防爆設計は、設計の難易度も非常に高いため、防爆の観点でスムーズに知識を検索、活用できるようにすることで、質の高い防爆設計をサポートできるにようにした。

知識の作成、活用の仕組みを準備した後、知識の有効性の確認を行った。直近の開発プロジェクト担当者が、自身の設計対象、及び関連する型式情報に関する知識をSSMmasterから設計チェックリストとして出力し、各知識が役に立ったかどうかを評価した。その結果、若手からベテランまで、チェックリストとして有効であると判断した知識がほとんどであり、新しい気付きとなった知識や不具合メカニズムの理解に大いに役立つ知識が多くあった。これは知識を丁寧に整理した効果といえる。また、自部門で有効であると判断した知識のうち、3割以上が他部門の知識であり、部門の壁を超えるためのきっかけになることも確認できた。

今後は更なる定着に向け技術部全体で推進し、また技術部以外の研究部や品証部へ展開し、全社的な活動へと広げていく。

 

 

〔特別解説〕SSM導入企業の最新動向と効果的な知識運用の取組み

長谷川 充氏((株)構造化知識研究所 シニアコンサルタント)

 

SSMを導入している企業は、自動車・自動車部品、電機・電子部品、精密機器等の業種のほか、産業機械、住宅設備、素材など様々な分野で導入が盛んである。技術分野では機械や電気の他、ソフトウエアや生産技術などの領域でも取組みが進められている。

スムーズなSSM導入・定着に向けたポイントとして、適切なチームの人選をすること、現行業務の課題をふまえて事例の選定や知識の作成を行うこと、実際にトライアルを行い課題解決につながっているかを確認し、必要に応じて改善を実施すること、目的を理解してもらうための社内説明を行うことなどが挙げられる。また、知識作成の担当者だけでなく、設計者やマネジメント層も含んだ組織的な推進と各層間の連携が非常に重要となる。

SSM導入各社は、知識活用について様々な工夫を施している。設計変更点からの不具合の気づき、使用条件・環境の変化点から影響を受けるアイテムと不具合の気づき、不具合事象を基点にしてそれが生じるアイテムの原因解析を行う仕組みなど、具体的な知識活用の目的に応じて様々な知識検索の仕掛けを施している。また、製品設計と生産技術などの複数部署間で知識活用するための工夫、過去機種に関する設計対策内容を次機種開発の設計検討時に活用するための知識循環サイクル構築、過去のFMEA実施結果と不具合情報等から得た知識を合わせてFMEAに活用する仕組みなど取組みは多様である。

今後SSM導入を検討される方々は、紹介された内容を是非活用して頂きたい。

 

 

4. 総合討論

(株)構造化知識研究所代表取締役の田村泰彦氏がコーディネータとなり、講演者とシンポジウム参加者との間で総合討論が行われた。講演各社のSSM活動の詳細、SSMの海外展開、フィールド・サービス部門での知識活用、知識作成時のポイントや注意点などについて、終了時間まで盛んな議論が行われた。

 

5. おわりに

 

プログラム終了後も、大勢の参加者が講演者と活発な議論を交わしていた。今回のシンポジウムも会場は活気にあふれ、SSMへの関心の高さが伺えた。
今回の講演では、不具合知識の価値を高め、知識の共有・活用を行うための各社の多彩な取組みが紹介された。未然防止、再発防止活動で苦労されている方々や、SSMの導入を検討している方々にとって、多くのヒントが得られるシンポジウムとなったであろう。

 

 

(文責:今西 大貴)

関連セミナーのご案内

本シンポジウムの主題である『知識の構造化』『SSM(Stress-Strength Model:ストレス・ストレングス・モデル)』を深くご理解いただくセミナーとして、「設計開発における不具合未然防止のための知識活用セミナー」を2017年2月2日(木)~3日(金)の2日間で開催いたします。本セミナーでは、"知識の整理方法・効果的な活用方法"を、演習やケーススタディを通じて習得できます。未然防止活動を進める上で、技術者の能力向上の一環として、本セミナーの活用をおすすめします!

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