信頼性技法実践講座「故障解析」Report

セミナー概要
2012年10月22日(月)~23日(火)に東京・日科技連・東高円寺ビルで「信頼性技法実践講座「故障解析」」を開催しました(主催:一般財団法人 日本科学技術連盟)。

信頼性技法実践講座「故障解析」は、故障解析の手順やポイント(故障の再現など)や各分野の解析事例について、経験豊富な専門技術者が解説し、各社共通の悩みや問題の解決をサポートする講座です。

受講レポート

レポート執筆者:

GEヘルスケア・ジャパン株式会社 吉田大様

1.参加動機

弊社では開発担当エンジニアが担当部品サプライヤ、信頼性担当エンジニアと共に信頼性試験を行いますが、壊れた部品の解析は限られたリソースの中で開発担当エンジニアが主導して行う必要があります。再現できさえすれば自分が設計したものである故に故障メカニズムの仮説を立てるのは比較的容易にできるのですが、どのような分析、解析方法がこの場合に選択できて、どれが有用なのかがわからないのが問題点でした。
また部品サプライヤ国内、海外に存在し、そのレベルもいろいろありますので担当者が的確な解析指示を出さないと故障サンプルを無駄にすることがあります。これらの点を改善させたく参加させていただきました。

2.セミナー構成

2日間コースです。このコースでは1日目に故障解析の総論、進め方について学び、2日目に電子系と機械系に分かれてより専門的な解析について学びました。

3.セミナー内容の詳細

  時間 講義内容 講師・所属(敬称略)
10月22日(月) 共通講座 9:20~9:30 事務連絡
9:30~12:30 故障解析総論 井原 惇行 楠本化成(株)
13:30~17:00 故障解析の進め方
(基本的な手順、解析の原理、故障の再現)
藤本 直伸 三菱電機(株)
17:00~17:30 クロストーキング(情報交換会) 井原 惇行
藤本 直伸
上掲
10月23日(火) 電子系 9:30~11:45 電子部品の故障解析 山 悟 富士ゼロックス(株)
12:45~14:45 実装の信頼性と故障解析 河野 英一 (株)河野エムイー研究所
15:00~17:15 LSIの故障解析 二川 清 大阪大学大学院
機械系 9:30~11:45 自動車における機械系の故障解析 新開 健司 日産自動車(株)
12:45~14:45 材料の故障解析のための物理解析技術 榎本 哲 JFEテクノリサーチ(株)
15:00~17:15 機械部品の故障解析 岡田 孝雄 宇宙航空研究開発機構

1日目

講義:故障解析総論

▲井原惇行講師 講義風景

この講義では企業を取り巻く環境の変化から、より製品の信頼性に対して目が向けられていること、海外調達品が増えて信頼性・品質問題が顕在化してきたことなどから故障解析の全容を解説していただきました。この講師からは動画を多く使って普段見ることができないような部品の動き(部品と半田ペースト融解時の動き、ヒューズ溶断時のX線動体観察、X線透視高速度カメラによる落下試験時の内部基板の動き)を見せていただきました。いかにVisualでの示すことが多くの情報を与えているかを実感できたのと、なかなか見られないような貴重な映像が多かったので参考になりました。

講義:故障解析の進め方

▲藤本直伸講師 講義風景

故障解析に携わったことがあればわかっていること、言葉の定義についての導入的な話が多かったのですが、解析ステップごとの知識や理解を整理し、知らない点を確認しながら基本に立ち返るという点では非常に重要な講義でした。それだけでなく講義の中では広く使われる解析手法を多くの事例を取り上げながら紹介されていました。講義の中でも強調されていましたが、故障解析は原因を解明することだけでなく、原因を直すために他人に説明し、理解してもらい、改善させるために説得する事、つまり表現力も重要であると言われていました。前の講義と併せて目に見えてわかることが重要であるかというのが再認識できました。
また、取り上げられていた多くの事例の中で何件かは実際に私が担当している事例に類似したケースもありました。他には樹脂のカタログ値と実際の使用条件下では値が大きく変わる点、つまりカタログにありがちな一点でのデータだけではなく、温度を変えたときのプロットが重要という点は非常に参考になりました。

グループ討論:クロストーキング(情報交流会)

▲クロストーキング(情報交流会)
グループに分かれて、日頃考えている問題や悩んでいる問題を話し合い、活発な意見交換と異業種交流もできました。

一日目の終わりにクロストーキングと呼ぶ時間をとって、参加者を三つのグループに分け、お互いが抱えている故障解析や問題点についての意見交換を行いました。今回はセミナーの参加者の約半数が設計開発部門から、残りの半数が品質や返却品の解析を行う部門からからの参加でした。
後者の参加者からの切実な声として客先からの返却品で再現性が無いものが多いのと、ICメーカに解析を頼んでもEOS(Electrical Overstress)と回答があり、なぜEOSで壊れたのがわからないという声が共通点として多く、前者の開発系の方々からは海外メーカの部品の品質が良くないものが多いとのが非常に多かったです。
一日目の講師陣もこのクロストーキングには参加されていましたのでこれらについてアドバイスを受けました。このセミナで非常に良かった点は取りまとめの講師が二日目の講師陣へこれらの声についてちゃんと引き継ぎをしていただいている点で、二日目の講師陣からも講義の中で私たちが上げた質問や困っている点についてアドバイスをいただくことができました。

2日目

二日目の講義で機械系と電気系が分かれて、私はより専門的な「電子部品の故障解析」、「実装の故障解析」そして「LSIの故障解析」について学びました。

電子部品の故障解析

電子部品の故障解析では故障を起こす原因で分類されそれぞれについて起こり得る故障パターンを示していただきました。私にとっては日ごろ半田やワイヤボンディングの金属間化合物についてどのように解析し、データを見ればよいのかが課題だったのでこれらの内容は非常に役に立ちます。
また日ごろ弊社の製品では気にしている腐食、マイグレーションについても講義中多くの時間を使い、テキストもかなりのページを使ってまとめられているので理解が深まりました。

実装の故障解析

主に半田による実装での故障解析の講義でした。接合部の微小化などの技術の推移に伴う故障リスクが高まっている背景の理解から半田実装における解析手段とその実例を各種データと共に見ることで定性的な見方だけでなく定量的な理解も得られることができました。
内容的には実装での不良で使用する解析手法から故障原因で分けた実例を見ることで実装時での故障解析の基本は一通り学べたとおもいます。

LSIの故障解析

LSIの解析は通常LSIのメーカに調査を依頼して解析方法には深く踏み込んできませんでしたが、今回とられる手法、装置、加工方法をまとめて知ることができたので、今後よりメーカ側と深い議論ができると思います。講師はIR-OBIRCHの開発者ということで原理から検出例を交えての講義でした。直接ここまで解析を行うことはないものの、過去にこの装置を使っての解析結果をメーカから報告されたことがあり理解が深まりました。装置の動作原理にも踏み込んだ内容で技術的にも非常に面白い内容でした。
共通して言えるのが企業で実務を長年やっていらした方や分析装置の開発者であり、非常に豊富な事例でどのような解析を行い、どのように原因の結論を導き出したかの話が的確で参考になりました。このような多数の事例や解析方法を知ることはすぐに私の業務に直結することは少ないのかもしれませんが、故障解析は電気的な知識のみならず、機械的、物理的、化学的な知識が必要なことが多く、講義の内容だけでなく、これらの事例が多数記載されたテキストは解析の良い導入口となります。
このコースに参加することで当初の参加目的を達成することができたと思います。弊社でもこれから故障解析を始めるような技術者にはこのセミナーへの参加を薦めたいです。