信頼性技法実践講座FMEA・FTA

セミナー概要

2012年10月15日(月)~16日(火)に東京・日科技連・東高円寺ビルで「信頼性技法実践講座 FMEA・FTA」を開催しました(主催:一般財団法人 日本科学技術連盟)。
FMEA・FTAは、製品の信頼性・安全性を確実に高めるために極めて有効な解析手法で、日科技連では1976年にセミナーをスタートして以来、内容の改良と開催実績を重ねています。参加実績3万人を誇る大人気講座です。

受講レポート

レポート執筆者:

横河電機株式会社 盛田 琢也様

生産制御システムの回路設計、評価を担当。30才。

1.参加動機

FMEA・FTAの考え方、解析手順を基礎から学習するために本セミナーに参加しました。普段から業務でFMEA・FTAは使用していましたが、自身のレベルアップのため一度専門家による講義を聞いてみたいと常々思っていました。そこへ今回のセミナーの参加案内が届いたため、参加することを決心しました。短期間で実力養成、経験豊富な講師により指導いただけるといった、本セミナーの特色にも参加意欲を掻き立てられました。

2.セミナー参加を通して

セミナーは私が想像していた以上の内容で、FMEA・FTAの考え方、解析手順を深く幅広く学ぶことができました。2日間という限られた期間でしたが、分かり易い講義とグループワークによる演習により、多くの知見を得ることができました。日頃の業務では手順を学ぶことはあってもその奥にある考え方の深い所を学ぶことは少なかったのですが、本セミナーではその点についても知ることができました。
発見の中ではディスカッションの重要性が最も印象に残りました。社内では今まではどちらかと言うと個人や少人数作業でFMEA・FTAをやってきました。セミナーには演習として様々なバックグラウンドを持つ参加者が一緒になってグループワークを行う時間があったのですが、そこでは自分が考えも付かないアイディアがメンバーから数多く出て、FMEAのワークシート、FT図の内容が充実していくことで、ディスカッションの重要性を実感しました。
これまで私には業務上あまり関わりのなかった工程FMEAについても学ぶことができ、視野が広がりました。この様になかなか普段の業務では知ることのできない事項について知ることができた点でも本セミナーは有意義でした。 FMEA・FTAに加えて新しい考え方であるDRBFM (Design Review Based on Failure Modes)についても実施手順や特徴を知ることができ、大変参考になりました。社内に活かしていきたいと感じました。

3.セミナー内容の詳細

時間 講義内容 講師・所属(敬称略)
10月15日(月) 9:15~9:30 事務連絡
9:30~12:30
13:30~18:00
信頼性解析の概要およびFMEAの実施法
FMEA演習
奈良敢也 日産自動車株式会社
10月16日(火) 9:00~12:00
13:00~17:00
FTAの実施法
FTA演習
奈良敢也 (上掲)

1日目

信頼性の解析

▲さまざまな業種の企業から50名が参加されました。 みな熱心に講義を聴講しています。 室内は静かな環境で、セミナーにしっかり集中できました。 室内は広くて快適でした。

1日目のセミナーの最初のセッションでは、信頼性の定義から始まり、設計・開発におけるFMEA・FTA手法の位置づけと役割を学びました。信頼性とは「アイテムが与えられた条件の下で、与えられた期間、要求機能を遂行できる能力」と規定されています。業務で最近は部品の信頼性について議論や問題になることも多く、このセッションで改めてその定義や重要性を学びました。
また、FMEAは設計時(事前解析)、FTAは故障解析(事後解析)で有効であるというイメージを持っていたのですが、トップダウン、ボトムアップという大きな違いはありますがどちらも製品企画・構想設計時から使用可能であり事故の未然防止に有効な手段だということを学びました。
解析で潜在的故障要因を見つけるためには、解析対象に対する固有技術の理解と故障発生に至った過程である故障メカニズムに対する理解が必要であることも学びました。

FMEA

R-
▲日科技連オリジナルのテキスト、資料に沿って進行しました。

このセッションではFMEAの考え方、実施手順、信頼性ブロック図、故障モード、ワークシートなど多くの事項について学びました。ここではFMEAでキーワードである「FMEAの効果をあげる3つのD」、すなわち「Deploy」,「 Discussion」,「 Design Review」が登場しました。Deploy: 製品を眺めるのではなく構成要素へ展開する、Discussion: ブレーンストーミングの効用を使う、Design Review: 有識者の知見を活用する、の3点です。このうち、DeployとDiscussionについては午後のグループワークでその効果を実感することとなりました。
信頼性ブロック図の有効性についても説明がありました。機能ブロック図を書いて製品設計をすることが多く、FMEAも機能ブロック図で展開して考えがちでしたが、説明を聞くことでFMEAの実施には信頼性ブロック図で考えた方が有効であることを理解しました。冗長系が機能ブロック図では判別できないことがその理由ですが、確かにテキストに記載の図で一目瞭然でした。
故障モード発想時の留意点ではポイントが何点かありましたが特に、「新規設計部分、インターフェイス等を重点的に実施すること」が最も感じる点でした。注意していたつもりですが、これまでにも何回かこの点には痛い目に逢わされてきているので、より一層の注意を払おうと強く思いました。
解析チームのメンバー構成では、設計担当者だけでなく、上位技術者、専門技術者、品質技術者、生産技術、工程設計技術者などの様々なメンバーで構成されるべきだと学びました。どうしても設計担当者とその周辺のメンバーだけで解析を行いがちな面が今まであったので、FMEAの効果を高めるためには改善が必要だろうと感じました。
FMEAを成功させるポイントとして何点かありましたが、特にワークシートへの記載には単語表現は避けるという点が印象に残りました。これは解析メンバーに正確な理解をしてもらうためです。私はついつい簡潔な表現を意識しすぎる余りに単語になってしまいがちなので、今後は誤解を招かない簡潔な文章表現になるよう気を付けようと思いました。

グループワーク

R-
▲今回の講師は奈良講師(日産自動車)。 実務家による指導でさまざまな質問にも丁寧に、熱心に回答いただきました。

午後からのグループワークでは、7人ごとのグループに分かれて、FMEAを行いました。FMEAの対象は、ポップアップエンジンフードシステムと呼ばれる歩行者が車両に接触した際に火薬式のアクチュエータでフードを跳ね上げ、エンジンルームの空間を拡大することで歩行者の頭部衝撃を緩和するシステムの、跳ね上げ機構付きフードヒンジの跳ね上げ機構部でした。
システム全体から見るとほんの一部、衝突時にアクチュエータに押し出される部分だけを対象としてFMEAを行いました。私は自動車業界に関わっていないので、このような機構を見るだけでも新鮮でこのようなシステムが実用化されていることに感心しました。実機が各グループに1台ずつ渡されるので、私のような専門外の人でも問題なく進めることができました。
グループワークではリーダーと書記を決めて、ISO/TS 16949推奨のFMEAワークシートに従ってFMEAを行いました。対象となる部位はたった4つの部品に限定されていたのですが、それぞれの潜在的故障モードに対して潜在的故障原因や故障メカニズムを考える場面では、メンバーから設計要因から製造要因まで幅広く驚くほどのアイディアが出ました。この量は私一人では到底考え付きません。グループでディスカッションする効果を実感しました。
何回か講師のアドバイスをいただきましたが、最終的には私達のグループは時間通りにほぼ模範解答に近い形のFMEAワークシートを完成することができ、安堵感と大きな達成感を味わうことができました。講義で習ったことをすぐに実践できたことも良かったと思える点でした。

工程FMEA

工程FMEAの時間では、設計FMEAの時間と同様にプロセスの定義、工程FMEAの目的や方法、実施手順などを学びました。設計FMEAのディスカッションに製造部署の人を呼ぶことが設計FMEAの質の向上に有効であるのと同様に、工程FMEAにおいてもその製品の設計担当のディスカッションへの参加が工程FMEAの成果を上げると学びました。これは設計者が最もその製品に詳しく、工程FMEAにも貢献できるからです。

【FMEA実施上の注意点】
1日目の最後のセッションであり、ここではFMEA実施上の留意点、変更点に着目したFMEA事例としてDRBFMについて学びました。FMEAは新規性の高い製品の解析に向くこと、変更点、変化点に着目したFMEAとしてDRBFMがあることを学びました。このセッションでは「信頼性の基本は変えないこと」、という言葉が印象に残りました。FMEAのセッションで出た、「新規設計部分、インターフェイス等を重点的に実施すること」に通じる言葉でした。

2日目

2日目はFTAについて読める、描ける、活用できる、の3段階で学びました。

FTAの基本

最初にFTAの定義、位置づけや特徴、目的と効果について学びました。FTAの効果をあげる3つのM, すなわちMechanism, MECE, Methodologyが重要であることも学びました。中でもMechanism: 故障メカニズムに対する理解が最も重要です。
FTAの欠点についても説明があり、それぞれの補完方法も示されました。中でも、特定の構成品の故障の影響を解析できない点について、FMEAを併用することで補完できることは大事な点でした。

FT図の作成法

こではFT図の作成について事象を理解し、記号について学びました。FT図のトップ事象の3条件として下記が挙げられました。
(1)明確に定義でき、できれば測定できること。
(2)下位の事象を包含すること。
(3)設計で対処できる事項。
論理記号の解説では、普段見慣れたORゲートやANDゲートなど一通りの解説があり、簡単な演習でFT図を作成しました。また、留意点として事象の説明は具体的に分かりやすく、「~不良」といった記載は避ける点を学びました。「~不良」という言葉は非常に書く側には便利なのでついつい使いがちですが、読み手には一意に伝わらないため、という理由です。
また、定性的解析と改善策の絞り込みの解説では、事前解析と事後解析のアプローチの違いについて学びました。この点はあまり今まで意識してこなかった点だったので、私にとっては発見でした。

ここでは定量的解析に必要な確率計算の基礎、最小カット集合などについて学習しました。確率計算はブール代数の公式、法則を講義と簡単な演習で学びました。
ソフトウェアについてはOpenFTAというFTAプログラムの紹介がありました。無料の上、図を書くだけでなく、最小カット集合、故障生起確率、確率重要度の計算もでき、操作画面を見るとシンプルで使い易い印象ですので、一度試してみたいと思いました。
事例紹介ではテキストに載っているFTA事例の紹介がありました。数多くの事例がテキストには載っています。事例には具体的な条件の数値などが省略されていますが、他社の解析事例を見られるのは非常に有益でした。

グループワーク

▲今回の演習題材は自動車部品でした。 講義で学んだことを「グループディスカッション」で理解が深められました。 外部セミナーは業種を超えたみなさんと交流ができるのも良い点ですね。

午後は1日目と同様に、グループでFT図の作成を行いました。
FTAの対象となるものも1日目と同じ、跳ね上げ機構付きフードヒンジの跳ね上げ機構部でした。「クローのパイプ部が回転しない」をトップ事象に置いたFT図を完成させることを2時間かけて行い、その後順番に全グループの代表者が前で簡単な説明を行いました。
FT図は大きな紙を机に広げ、そこに事象や論理記号を書いたポストイットを貼って作成しました。様々なアイディアを出した結果、私たちのグループは与えられた紙からはみ出すほどになりました。また、図のどこかに1か所でも制約条件を使いたいという話になり、あれこれ知恵を振り絞りました。グループワークも2日目ともなるとリラックスした状態で議論が進み、途中議論が盛り上がりすぎて発散しかけましたが、リーダーの方が議論をまとめて下さり、時間内にFT図を完成させることができました。何が環境条件に起因しているか、固着する要因は何であるかなどを真剣に話し合うことを、セミナーであることや業務の一環で参加していることを忘れて私は非常に楽しく感じました。

Q&A クロージング

最後に2日間のまとめとして、FMEAの3つのD、FTAの3つのMなどの振り返りがあり、セミナーは終了しました。 今はセミナーで習ったことをすぐに実践したい気持ちでいっぱいです。また、配付された資料には演習問題が豊富にあり、別冊の回答例とヒントもいただきましたので、更に学習を行って自己のレベルアップを図っていきたいと思っています。