事業詳細

優秀報文賞・奨励報文賞・技術貢献賞

第48回(2018年度) 信頼性・保全性シンポジウム 優秀報文賞・奨励報文賞・技術貢献賞の紹介

 

2018年7月19日~20日に開催された第48回信頼性・保全性シンポジウムにおける優秀報文賞(推奨報文賞を改称)・奨励報文賞・技術貢献賞※(特別賞を改称)が、2018年9月26日の信頼性・保全性シンポジウム組織委員会で決定されましたのでご報告いたします。

※特別賞の改称に当たり、発表の内容によって次の2つの賞のいずれかを授与することにいたしました。
 学術賞:発表の内容が学術的また労力的見地から見て表彰に値すると判断されるもの。
 技術貢献賞:発表内容が啓蒙的で参加者にとって大いに有益であると判断されるもの。


田中 健次 電気通信大学大学院 教授
第48回信頼性・保全性シンポジウム報文小委員会委員長

優秀報文制度の目的と選考方法

本表彰制度は、研究発表者のインセンティブを喚起するとともに、一般参加者には優秀報文の推薦を通して本シンポジウムへ積極的に参画していただくことをねらいとしています。

本シンポジウムは、企業の第一線で活躍されている研究者や技術者の方々が現実的に重要な信頼性、保全性さらにヒューマンエラー防止など安全性にかかわる問題を解決していくための知見を共有する場であり、発表者と参加者との討論により問題点を整理し、得られた知見をより体系化して知識の共有化を図ることを目的としています。

このようなねらいと背景から、参加者全ての方々に幅広く優秀報文の推薦をお願いし、これに基づいて選考を行っています。本年も、参加者の皆様の多様な視点から、164件の投票をいただきました。本委員会にて慎重に審議し、下記に示す受賞報文を選定いたしました。
 

優秀報文賞・奨励報文賞・技術貢献賞の選考結果

優秀報文賞は、理論・方法などに従来試みられなかった新しい知見を有する内容、あるいは信頼性業務の遂行上裨益をもたらす内容を有する、優れた発表に与えられるものであり、今年度は下記に示す報文3件を「優秀報文賞」として選考いたしました。

*発表番号、所属は発表時のものです(Session番号順、敬称略、○は発表者)。
 
【優秀報文賞】

1)Session 2-4
報文名:X線透視によるメモリ素子の特性悪化と回避策
著 者:○勅使河原 寛、大込 絢治、清水端 治、岡澤 宏、堀 陽子、山岡 慎也、中村 雅俊、加藤 史也
所 属:富士通クオリティ・ラボ(株)

2)Session 4-3
報文名:単位空間の最適化によるプラント異常診断の精度向上
著 者:○茂木 悠佑、袖子田 志保、河野 幸弘
所 属:(株) IHI

3)Session 5-3
報文名:プリンタ複合機(MFP)の給紙性能に及ぼす紙粉の影響とその評価法の開発
著 者:○月山 陽介、新田 勇
所 属:新潟大学


一般投票では選出されにくい専門分野や理論的な研究について、今後の信頼性・保全性の研究や発展を期待して奨励報文制度も設けています。
今年度は下記に示す報文1件を「奨励報文賞」として選考いたしました。

【奨励報文賞】

1)Session 3-1
報文名:畳み込みニューラルネットワークを用いたシステムの特性劣化の特徴量抽出と 運用条件検討への応用
著 者:○遠藤 駿、横澤 成望、川上 紗野花、國井 喬介、横川 慎二
所 属:電気通信大学


技術貢献賞は、発表内容が啓蒙的であって参加者にとって大いに有益と判断された発表を対象にしています。
今年度は下記に示す報文1件を「技術貢献賞」として選考いたしました。

【技術貢献賞】

1)Session 9-3 
報文名:故障解析の留意点と信頼性設計の必要性に関する一考察
著 者:○田辺 一彦、戸島 寛
所 属:NECプラットフォームズ(株) 

 
 

優秀報文賞・奨励報文賞・技術貢献賞の選定理由

以下に、優秀報文賞・奨励報文賞・技術貢献賞の選定理由を記します。

*発表番号、所属は発表時のものです(Session番号順、敬称略、○は発表者)。


【優秀報文賞】

1)Session 2-4
報文名:X線透視によるメモリ素子の特性悪化と回避策
著 者:○勅使河原 寛、大込 絢治、清水端 治、岡澤 宏、堀 陽子、山岡 慎也、中村 雅俊、加藤 史也
所 属:富士通クオリティ・ラボ(株)

プリント基板でのBGA(Ball Grid Array)パッケージ等の半導体デバイスの実装状態の確認には、X線透過装置を用いた検査が有効であり、これまでX線照射によるメモリ素子のデータ保持特性等への影響が論文等で報告されています。
本報告では、半導体デバイスの基板実装後のX線照射検査におけるメモリ素子の特性劣化現象を検証し、その回避策と劣化メカニズムの考察結果が報告されました。特性劣化検証では、DRAMとFLASHメモリを用い各種パラメータを振って網羅的に検証されています。
また、故障メカニズムとその回避策についての考察は貴重な報告内容であり、優秀報文賞に値すると判断しました。

2)Session 4-3
報文名:単位空間の最適化によるプラント異常診断の精度向上 
著 者:○茂木 悠佑、袖子田 志保、河野 幸弘
所 属:(株) IHI

異常診断で用いられるMT法では、正常状態の下で運用された設備のデータから構築した1個の単位空間を利用して異常診断を行います。しかし、気温等運用環境の変化を伴う場合は正常を異常と判断する誤検知が発生しやすくなります。これを回避するために、複数の単位空間を構築する方法がありますが、この方法では新たな誤検知を引き起こす等さらに対応が難しくなることがあります。
本報文ではこのような問題に対して動的単位空間という概念を導入したMT法を提案し、様々な視点で提案手法の評価を行っています。取り上げている問題の重要性、解決方法における著者らの着眼点やアイディア、得られた結果の有効性を高く評価し、優秀報文賞に値すると判断いたしました。
 

3)Session 5-3
報文名:プリンタ複合機(MFP)の給紙性能に及ぼす紙粉の影響とその評価法の開発
著 者:○月山 陽介、新田 勇
所 属:新潟大学

本発表は、プリンタや複合機(MFP)の信頼性課題の一つである紙詰まりに着目し、それへの影響が大きい給紙機構におけるゴムローラの摩擦力低減メカニズム及び用紙の紙粉の影響を解明した興味深い報告事例でした。ゴムローラ表面の真実接触面積を広視野レーザー顕微鏡で観察するアプローチや、評価対象の用紙の紙粉発生具合をローラで100mmこすった時の摩擦低下で測る簡便な手法を提案されています。その内容は、今後の品質向上に向けた極めて有益な具体的提案であると高く評価できるものであり、優秀報文賞に値するものと判断しました。
 
【奨励報文賞】

1)Session 3-1
報文名:畳み込みニューラルネットワークを用いたシステムの特性劣化の特徴量抽出と 運用条件検討への応用
著 者:○遠藤 駿、横澤 成望、川上 紗野花、國井 喬介、横川 慎二
所 属:電気通信大学

本報告での特徴は、複雑なシステムの劣化度の予測において、複数のオンラインモニタリングデータをグラフ化した画像データを用い、畳み込みニューラルネットワークを用いて、システム劣化の特徴量を抽出したことです。従来の重回帰分析に比べ良好な正答率が得られることを示すとともに、劣化を抑制する運用条件についても考察しています。本研究は、故障診断・故障解析分野でのAI・深層学習の適用を試みたチャレンジブルな報告であり、発表者の継続的研究を期待すると共に、この分野への今後のさらなる貢献に期待して、奨励報文に選考いたしました。


【技術貢献賞】

1)Session 9-3 
報文名:故障解析の留意点と信頼性設計の必要性に関する一考察
著 者:○田辺 一彦、戸島 寛
所 属:NECプラットフォームズ(株)

電子機器の軽薄短小化が進むなか、電子部品に印加される様々なストレスを事前に予想し、故障発生を未然防止することは非常に重要な作業となります。
本報告では、電子部品の故障状態とその発生原因について多くの事例が紹介され、故障解析を進めるうえで考慮すべき留意点などの理解を深めることができる報告でした。中でも、故障発生の未然防止には製造技術は元より”信頼性設計”が重要で、製品設計の初期段階から設計情報を関係する全部門で共有することが指摘され、特に品質担当部門が過去トラブルを元に設計改善させるとの提案は、品質担当者への助成となる報告であり、本報文は技術貢献賞に値するものと判断いたしました。

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