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SQC(統計とビッグデータ)
SQC

管理図<2018年04月13日>

 製品・サービスの品質は、常にある程度ばらつきます。しかし、そのばらつきの要因となるものは、重要ないくつかのもの(vital few)と多くのこまごまとしたもの(trivial many)に分けられることが多いです。重要な要因が影響して大きくばらつくことのないように管理し、多くのささいな要因によってのみばらつくようにできれば、ばらつきを押さえることができます。このような状態を統計的管理状態と呼びます。管理図を用いることで、統計的管理状態にあるかどうかを判定することができます。

管理図とは
 管理図は、時系列グラフの一種です。折れ線グラフといってもよいかもしれません。時系列のグラフに対していつもと同じ状態であるか、いつもとは違う何かが起きているかを判定するための基準を定めます。JIS Z 8101-2:2015では、「連続したサンプルの統計量の値を特定の順序で打点し、その値によってプロセスの管理を進め、変動を維持管理及び低減するための図。」と定義しています。ここでは、最もよく用いられる管理図に基づいて説明します。
 管理図では、折れ線グラフを2つ縦に並べます。上のグラフは、平均値をプロットしたグラフで、下のグラフは範囲をプロットしたグラフです。折れ線グラフの上下(場合によっては下の線が省略されることもあります)に線をひき、ラインを越えたら、何かいつもと違うことが起きていると判定するのです。この線のことを管理限界線と呼びます。この線は、平均値の上下に3シグマを取るように計算されます。こうすることによって、普段と同じ状態が続いているにもかかわらず、何か起きたと誤って判断してしまう確率を0.3%程度に抑えることができます。
 ところで、いつもと同じ状態とはどういう状態のことを表すのでしょうか。全く同じ値が続くことはない一方で、予想もできないほどに大きくばらつくこともありません。ある程度の大きさのばらつきのなかで、データが変動している状態というのが、いつもと同じ状態なのではないでしょうか。その範囲を超えて大きく変化するなど、重要な変化が起きたときには気付けるように、また、普段と同程度の変化であればそのまま経過観察をすればよいと判定することを可能にするのが、管理図のありがたみです。

偶然原因と見逃せない原因
 コラムの冒頭には、ばらつきの要因となるものは、重要ないくつかのもの(vital few)と多くのこまごまとしたもの(trivial many)があると述べました。別の言い方をすると、それぞれ見逃せない原因と偶然原因と呼ぶこともできます。すなわち、偶然原因によってのみ変動している限りは、いつもと同じと判断することができます。
 では、それらをどのようにグラフで表現することができるのでしょうか。ヒストグラムでは、時系列の情報はすべてまとめて表現をしていました。ここでは、データをいくつかのグループに分けて表現することを考えます。管理図では、群という考え方に従って、データを分けます。たとえば、1日を群として、その中であれば、偶然原因によってのみしかデータがばらつかず、日にちが変わったときに変動があるとすれば、見逃せない原因によるものであるなどと考えることができます。すなわち、群の中であれば、できるだけ均一の状態が保たれているように分け方をすることによって、偶然原因と見逃せない原因の2つに分けることができるのです。
 管理図では、群分けしたデータの平均値と範囲Rを計算し、群ごとの推移をグラフ化します。偶然原因によってデータの変動が起きた場合には、群の中の範囲Rとして評価することができます。すなわち、Rが時系列で変化したときには、偶然原因による変動が時系列で変わってきたのではないかと考えることができます。このことを、群の中での変動という意味で、群内変動と呼ぶことができます。一方で、平均値の時系列変化は、群の間の変化ですから、群間変動と呼ぶことができます。

異常判定のルール
 偶然原因によってのみデータが変動している状態をいつもと同じ状態であると呼ぶとすれば、見逃せない原因が発生してデータが変動することを異常が発生したと呼ぶことができます。異常が起きたかどうかを判定するルールについては、先ほど述べたような管理限界線を越えるかどうか以外にも、さまざまなルールがあります。とくに、ばらつきを低減したいと考えているときには、その候補となる要因を多く上げたいと考えているでしょうから、ルールにこだわりすぎるのはよくありません。このような目的で用いる管理図を解析用管理図と呼ぶことがありますが、何かおかしい、いつもと違うかもしれないと、候補となるものをできるだけ多く抽出したうえで、詳細な検討をするのがよいでしょう。これまでの実績をもとにして、いつもと同じことができているかを確認したい、異常が発生したらアラームとして知らせてほしいときもあります。この用途で用いる管理図を管理用管理図と呼びます。この目的では、誤報(何かあったと思って調べてみても結局何も見つからない)が多すぎると、管理図を使いたがらなくなってしまいます。イソップ童話の狼少年のように、狼が来た(異常が発生した)と嘘を言い続けるうちに、本当に狼が来たときに叫んだとしても誰も信じてくれなくなってしまいます。

管理図の種類
 管理図には、以下のものがあります。どの管理図を使うかによって、管理限界線の計算方法等が異なりますが、ここでは省略します。













さいごに
 管理限界線は、あくまでも群内変動に基づいて統計的に計算した値をもとに判断をする道具ですので、工程が顧客の要求するレベルにあるかどうかはわかりません。したがって、ヒストグラムを作成し規格を満たす程度を検討することが重要です。その際、工程が統計的管理状態にあるときには、工程能力指数を計算することができます。なお、管理図だけですませようと、管理限界のかわりに規格の値を用いてはいけません。

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Profile

       佐野 雅隆 氏
    (さの まさたか)
2009年 早稲田大学創造理工学研究科経営システム工学専攻(博士課程)。
2010年 早稲田大学助手、博士(工学)取得を経て2012年東京理科大学助教。
2016年より、千葉工業大学。

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