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TQM(品質・改善・とマネジメント)
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TQMによる営業プロセスの構造改革 トヨタホーム 後藤裕司常務に聞く(後編)<2017年10月20日>

(前編はコチラ)

――TQM活動を進めていく「バイブル」とされるTSSの要点はなんですか。
後藤:簡単にいえば、商談プロセスの標準モデルです。これさえあれば、若手の営業スタッフも自信を持ってお客様と商談できるレベルを目指しました。作成にあたっては販売店を中心とする現場の声に耳を傾け、実践的に取り組みました。
 その主要コンテンツは建てるときの安心(品質力)、建てたあとも安心(保証力)、支える安心(企業力)という3つの安心=3つの強みです。加えて、お客様との商談時に必ず聞かれる項目を盛り込みました。

――商談時に必ず聞かれる項目とは?
後藤:暮らし方(プラン提案・立地)、お金(資金計画)、入居されるまでのスケジュールです。これらに当社の強みを加えた4項目について、お客様にお伝えしたり、伺ったりするフェーズを「初回接客から商談開始まで」と「本格的な商談」の2段階に分けました。
 例えば、当社の「3つの安心」について、初回接客から商談開始の段階では、まずその説明を聞いてもらうことに努めます。その上で、本格商談の段階では「3つの安心」でトヨタホームを一番気に入ってもらうことに心を砕く。同様に、暮らし方ではまず、現状の住まいへの不満や新しい暮らしのイメージを話して頂き、それを踏まえて、期待を上回るプランを作成して、優れた説明力と資料で提案します。

■20%から57%に上がった商談決定率

――TSSの具体的な手法をまとめたマニュアルはA4判350ページの堂々たるものです。これをすべてのスタッフが携えているのですか。
後藤:基本的に、全従業員がもっています。現在使っているのは第4版。2014年から取り入れているので、マイナーチェンジとはいえ、毎年版を改めていることになります。この業界のことを何も知らない1年生には格好のテキストになると思います。
 彼らはどのタイミングで、どんな話をお客様にするべきかということすら分からない。だから、入店されたお客様に何を話し、何を聞くか。どんな身だしなみをし、どんなふうにお盆を持つかといったことまで事細かに書き込まれています。研修ではこれを使って徹底的にロールプレイングする。文字通り、テキストがボロボロになるまで教え込みます。

――確かに、真っ白な状態の人たちはどんどん吸収していくでしょうが、自分のスタイルがあるベテランスタッフは戸惑いませんか。
後藤:おっしゃるように、売れる営業マンほど、その人なりの型を持っているので、一律に導入するのは得策ではありません。そこで、まずは抵抗感の少ない3年生までの若手を対象としました。その結果、1年生でもある程度成果を出せることが分かりました。
 例えば、2014年当時、思うような結果が出せず大苦戦していた販売店に半年間、張り付いて研修してみました。すると、TSS導入前に20%だった商談決定率が57%に上がりました。スタッフの受注効率も一人当たり年間3戸から7.7戸に高まりました。これは全国平均を大きく上回る成果です。最近はマネージャー層向けの研修にも取り組んでいます。

■品質チェックシートの活用と競合対策

――TSSの導入効果は商談決定率や受注効率で明白ですが、マネジメント面ではどのように取り組まれていますか。
後藤:TSSに基づくマネジメント手法としてTSS-Mの構築と浸透に力を入れています。TSSはスタッフを対象とする商談プロセスの標準モデルです。これに対して、TSS-Mはマネージャーが各営業スタッフの商談管理を実施できるようにした仕組みです。そのためのツールとして、お客様と個々の営業スタッフの商談状況を「見える化」する「クオリティチェックシート」を用意しました。
 このシートは商談の品質を上げるのが第一の目的。マネージャーが商談に関わることでスタッフの人材育成と歩留まりの向上を図るのが第二の目的です。導入によって「当月、次月以降のお客様に対する指示が出しやすくなった」「基本情報や競合の状況について、どこまでヒアリングできているか確認できるようになった」「商談実施後のお客様の合意度に対してマネージャーとスタッフが一緒に対策を立てられるようになった」といった効果が認められています。

――シートの導入効果にもある「競合対策」についてはどんな手を打たれていますか。
後藤:一般的に、お客様は商談を通じて複数の住宅メーカーから1社を決める。当然、競合他社は自社の強みや当社の弱みをお客様にインプットします。その対策として、私たちは各販売店の営業スタッフがお客様に説明できる「競合対策本」を2016年9月につくりました。これを使った勉強会が好評だったので、今後も継続したいと考えています。

■販売店との共通言語となったTSS
 
――これまでの活動を振り返って、当初計画に対する到達度をどう評価しますか。
後藤:山登りに例えれば6合目あたりでしょうか。ただ、個々に見れば、若手研修の強化とTSS導入で、2013年当時2.5戸だった若手の一人当たりの受注効率が2016年には3.5戸と大きく改善しています。また、若手の離職理由の中で「売れないから」という理由が減っています。
 一方、無形の効果では、お客様にトヨタホームを理解していただけやすくなりました。今日までの活動でTSSがメーカーと販売店の共通言語となったことも確かです。特に「商談品質の標準化」という、互いに目指すべき方向性が明確になったことが大きかったと思います。

――ズバリ、残された課題はなんですか。
後藤:端的に言えば、TSSとTSS-Mの実践度、商談歩留まりの定期把握と継続改善ですね。思うような成果を出せないでいる販売店対策にも力を注ぎたい。これらについては2019年を最終年度とする中期計画の中で実のある結果を導きたいと考えています。

■TQMの手法や考え方を現場まで

――これまでの3カ年に及ぶTQM活動を総括してください。

後藤:さまざまな取り組みを通じて「顧客価値」を考える文化や風土が根づきつつあるのではないかと思っています。従来から「販売」は気合いとカンコツの世界と言われてきたし、私自身、そんなものだろうと漠然と思ってきました。それに「科学する」というスタンスで臨んだのがTQM活動ではないか。
 科学的な分析を踏まえたプロセスごとの活動指標を導入し、PDCAを回す。その成果は徐々に現れています。製販共に決めた目標に対して最後まで諦めずに取り組むという意識改革が図れたことも大きいですね。

――気合とカンコツから「科学する」営業に軸足を置かれる。その真意は。
後藤:私はトヨタ自動車に入社以来、調達畑が長かったので、営業は素人同然でした。3人の先輩に教えを請うと1人目は「運を味方につけろ」、2人目は「販売店の話に耳を傾けよ。だから、毎日誰と飯を食べるか考えろ」、3人目は「営業には必ず原因とその結果がある。だから、営業を科学しろ」。
 それぞれ一理あると思いますが、やはりTQMの考え方になじむのは「科学する」ことでしょう。住宅業界を取り巻く環境は今後も厳しく不透明です。それだけに、販売店の現場までTQMの手法や考え方を浸透させ、永続的に定着できるようにしたい。それを推し進めるのは「科学する」心です。

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Profile

後藤 裕司(ごとう ゆうじ)
トヨタホーム 常務取締役営業センター長。
1983年にトヨタ自動車に入社。鋼材などの調達業務や海外事業体の調達活動支援など調達部門に16年間従事した。
その後、住宅部門に異動し2009年住宅企画部長として、トヨタ自動車からの分社化、ミサワホームとの提携強化などを担当。2010年トヨタホーム経営管理部長となり、同時にミサワホーム取締役歴任。
2012年トヨタホーム取締役、2015年トヨタホームインドネシア取締役を兼務。2016年から現職。

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